第393話あゆの涙と公認カップル誕生
「え?いや、でも・・・」
「二股がばれそうだから嘘ついてるだけだろ」
やっぱりそう聞こえるか・・・でもやっぱり芯だけは貫かないとだめだ。
「・・・先輩、とことん私に歯向かうつもりらしいですね」
「も、もちろっん!?」
俺がそう返すと、あゆは俺の車椅子を反転させ俺が仰向きで地面に倒れ込むと、俺の上に来て俺の制服の胸元を両の手の平でつかむ、というよりお願いすると言った表現の方が正しそうな感じで握った。
「いい加減気づいてくださいよ!先輩はあんな人と一緒にいるべき人じゃないんですって!!さっきの状況でだって表面よりも中身を優先できる人なんて世界にも数えるぐらいしか絶対にいないです!!」
そう言いながらあゆは俺の頬にぽたぽたと涙を流していて、あゆの声も震えいていた。
「あ、あんな人って、初音は良い────」
「どこがいいんですか!見た目だけじゃないですか!性格は独占欲が強くて先輩のことなんてなりふり構わずで自分主義で独裁思想も持っていて、たまに先輩に優しい一面を見せるのが良いんですか!?」
「そ、それは・・・初音のそういうところも俺に対する優しさから来てるものだと、俺は思ってるから受け入れられることだ」
「そんなのただ先輩が人の悪いところを見るのが怖くて都合よくしてる拡大解釈ですよ!それで傷つけられてる人が周りにいるのに・・・!」
そう言ってあゆは俺の胸元に自分の頭を当てた。
「先輩と付き合ってるのが結愛先輩なら私だって素直に応援できたのに・・・先輩は見る目なさすぎです、私のどこが白雪先輩に劣ってますか?過ごしている時間ですか?それとも出会いが印象深いかどうかですか?」
「え、いや、それは────」
「誤魔化さずに答えてください」
・・・正直俺は今非常に困惑していた。まさかあゆがここまで感情を暴走させるとは思わなかったからだ。そしてそれは俺があゆに対して挑発とも取れる態度と反抗を見せたからだ。自分の年上としてみたいなくだらない理由であゆの地雷を踏んでしまった・・・本当に情けない。
そして、この質問の答えも、俺には見出せないでいる。あゆのどこが初音に劣っているのかと言われれば、別にどこも劣ってはいない。
じゃあ、なぜ俺は初音と付き合っているんだろう。
「な、なんでだ・・・?」
俺はなんで初音と付き合ってるんだ、やばい、本当にわからなくなってきた。初音を好きなことは確実だ、でもその理由がわからない。
「・・・先輩、私から一つ提案なんですが・・・」
「てい、あん?」
「学校の中だけでも私と付き合ってるフリをしましょう」
「な、なんでそんなこと───」
「私が本当の恋愛を先輩に教えてあげます」
そう言ってあゆは泣いたままの顔で立ち上がり、周りに告げた。
「ごめんさ〜い!先輩に告白したんですけど今は彼女がいるからって断られてちょっと動揺しちゃって先輩のこと押し倒しちゃいました〜!でも私は二股でも絶対に白雪先輩に勝てる自信はあるので二股もおっけーして付き合うことにしました!公認の二股なので、皆さんもぜひ応援よろしくお願いしま〜す!!」
「・・・はあ!?」
俺は何を言ってるんだあゆはと思いながら、周りの反応を見た。すると────
「おおー!いいぞいいぞー!」
・・・は?
「今の涙の告白!それで最王子も一度雰囲気に流されて振ったんだな!すげーよ!」
「そんな芯があるなら二股してもいいな〜!」
「うんうん、でも最後はちゃんと1人に決めないとね〜」
「え、え・・・?」
どうやらさっきのあゆとの会話は周りには聞こえてなかったらしく、あゆの言葉も相まってか愛の告白に見えたらしい。
そして、あゆは泣いていてしかも二股でもおっけーと本人が言っている。こんな状況で雰囲気を壊すなんてことはそうそうできることじゃない。
「公認カップルの誕生だあああああああああ!!!!!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」
「・・・・・・」
「と!いうことで、先輩、今日からは`恋人`として、よろしくお願いしますね〜!」
「ま、まさか、この空気を作り上げるために泣いてみせたのか・・・?」
「いえ、あれは私の本心です、でもだからこそ、まずは白雪先輩と同じ土俵に上がらないといけないと思い、頭を切り替えただけです」
つまりさっきの涙とか言ってたことは感情によるもの・・・その後で即座に理性に切り替えて初音のいない間に一瞬で公認の恋人にまで登り詰めた・・・あゆはやっぱり天才だな。
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