第384話動き出すあゆ

「地下って何、っていうかなんでそーちゃんのことを虫が管理するわけ?」


「私はそーくんの彼女なんだから当然でしょ?」


「彼女なら彼氏のことをそんな無碍に扱わないと思うけど?」


「は?彼女だからこそ────」


 またしても初音と結愛は混走争状態に入ってしまった。これはまたしばらく待たないといけないかもな・・・


「先輩、せぇんぱい!」


 あゆがこっそりと俺の方に駆け寄ってきて小声で話しかけてきた。


「なんだ?」


「大変ですね〜」


「誰のせいだと思ってるんだ!」


「え?先輩のせいですよね〜?」


 ・・・あゆの相手をするだけ無駄だと思い、俺はそれを流した。


「今まで先輩がうやむやにしてきたからこんなことになってるんですよ?」


「うっ・・・」


 それを言われてしまうとなんとも言えない。でも俺としてはうやむやにはしてないつもりだ。一応初めの段階で初音と結愛でちゃんと初音を選んだし、初音と霧響で言うと正直霧響は恋愛対象として見るのは難しいから消去法で初音だし、初音とあゆなんかは絶対に初音を選ぶ。


「そ、そんなことはない」


「・・・先輩、ちょっとお外でお話ししません?あの2人長くなりそうですし」


 確かに長くなりそうだけどあゆと2人きりになんてなったら何をされるかわからない。


「断る」


「なんでですかぁ〜?」


「あゆは俺の中で危険人物だからだ」


「あっ!それって私のこと意識してくれてるってことですかぁ〜?」


「悪い意味でだ」


「わぁ〜、嫌いの裏返しは好きですからね〜、ありがとうです〜!」


「・・・・・・」


 何を言ってもポジティブに捉えてくるのが本当に厄介なんてレベルじゃないな。あゆに対する攻撃手段が俺の貞操を失うって言うのも一番ダメージがあるのは俺だしな・・・簡単にできることじゃない。


「あっ、そういえば先輩が白雪先輩に黙って電子書籍で本読んでたのスマホで撮影しちゃったんですけど〜、まっ、危険人物な私がそんな写真持ってても関係ないですよね〜、私ちょっと用事あるのでこれで〜」


 そう言ってあゆは玄関の方に向かって行き、ドアが閉まる音が聞こえた。外に出たんだろう。・・・って!ダメに決まってるだろ!

 俺はすぐにあゆのスマホからその写真を削除すべく、玄関に向かって段差に苦しめられつつも家の外に出────


「お疲れ様です、先輩❤︎」


「えっ・・・」


 俺の首元に一瞬チクッとした痛みが走った。これは・・・注射器か?


「・・・・・・」


 刺されただけでそれがなんの道具なのか一瞬でわかるって、もうなんか自分が自分で可哀想になってきた・・・もう可哀想すぎるぐらい可哀想だけど。

 っていうか、なんか流れ込んできて────ドクンッ。

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