第379話朝の結愛とあゆの取引
俺は眠りから目を醒ました。この文章だけ見ればかなりかっこいいだけど、ただ寝て起きただけだ。だが、俺は不用意に体を動かしたりしない。いい加減朝不用意に体を動かして、誰かの胸に当たる、なんていう展開はごめんだし、それを初音意外、霧響なら妹だから初音もまだ針千本飲ませるぐらいで許してくれるかもしれないけど、それを他でもない結愛とあゆにしたらどうなることか・・・
だから俺はちょっと様子を窺うために薄く目を開いたが、隣には誰もいなかった。
「・・・あれ」
てっきり誰かいるのかと思ったけど・・・まあ今まで寝て起きた時に隣にいたのは初音と霧響だけだったし、この2人はそんなことはしないってことか。
`ガキンッ`
「・・・ん?」
変だな、工事なんてやってなかったはずなのに金属のぶつかる音が聞こえる。
「このっ!このっ!せっかくそーちゃんが起きる前に布団の中に侵入できそうだったのに邪魔なんてして・・・!」
「抜け駆けはいいんですけど〜、ちょっと行き過ぎたことはやめてもらってもいいですかぁ〜?」
じょ、状況が全く見えてこない。何をやってるんだこの2人は・・・もうちょっと寝たふりを続けた方が良さそうだ。
「うるさい!大体あなたなんなの?誰?全く知らないんだけど」
「私は〜、最王子先輩の中学時代の後輩ですね〜」
「そーちゃんの中学時代の、後輩・・・?」
そう言って結愛がずっと投げつけていたハサミを投げるのをやめた。あゆもそれに気づいたのか、避けるための構えをやめた。
「・・・ブツは持ってるの?」
「もちろんここにあります」
そう言ってあゆはあゆは懐から紙を取り出した。・・・なんだ、ブツって。
「・・・じゃあそれをくれたら私の胸触らせからのイチャイチャ作戦を邪魔したことは許してあげる、貸して」
「はいはい、わかりましたよ〜」
そう言って、結愛にその紙を渡した。・・・イチャイチャ作戦・・・?
「っ・・・!こ、これが!中学時代の、そーちゃん!?」
結愛はしばらく黙り込んだ。・・・中学時代のそーちゃん・・・?何を言ってるんだ結愛は。
「はぁ、今の方がカッコよくて可愛いけど、この時はまだ成長しきってなくて今とは違う可愛さがあるな〜」
「・・・ん?」
この時とか今とか、何を言って───はっ!
「結愛!!!!!!!」
「わっ、そ、そーちゃん、起きたの?この女に対する殺意とこの写真のせいで全然気づかなかったよ・・・」
「私は気づいてましたけどね♪」
写真・・・やっぱりそういうことか。
「結愛!その写真を返せ!」
「嫌だ!っていうかそーちゃんのじゃないもん!」
「そんなのずるい言い訳だ!早く返せ!」
「せんぱ〜い、それは私が結愛先輩にあげたんですから、大人気ないですよ?」
小学生の時に別れた幼馴染に俺の中学生の時の写真を見られることがどれだけ俺にとって羞恥プレイになってるのかわかってないのか!・・・きっとわかった上でやってるんだろうな・・・
「いいから!早く返せ!」
俺は結愛の方に飛びかかろうとするが・・・
「ああああああぁぁぁ!!」
「そ、そーちゃん!?何してるの!?」
忘れてた、足を怪我してたんだった・・・やっぱり数日足不自由生活しただけじゃ、そうそう簡単に十年以上の感覚は抜けないな・・・
「先輩って、なんていうか・・・そういうところバカですよね〜」
「うるさい!」
「あぁ、そーちゃん、大丈夫?」
結愛は俺の写真を大事そうに懐にしまうと、俺の方に駆け寄ってきてくれた。うん、駆け寄ってきてくれるのは優しくて素敵だと思うけどその懐に大事そうにしまった写真を大人しく渡してくれたらもっと完璧なんだけどな。
俺は心の中で棒読みな感じで言った。
「・・・あ」
結愛は駆け寄ってきて、俺の顔と自分の顔が近くなると、俺の唇を見て頬を赤た。おそらく昨日のことを思い出してるんだろうけど・・・え?なんだその反応、そんなに不意打ちに弱かったのか・・・?
今更普通の女の子みたいな反応されても、俺はどうすればいいんだ・・・
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