第375話総明の血料理
俺たちはあゆが待つリビングに、作った料理をお皿に乗せて持っていった。
「あっ!せぇんぱ〜い、やっとできたんですかぁ〜?わぁ、これ先輩1人で作ったんですかぁ〜?」
「うっ・・・」
俺が答えづらいという空気を出していると、結愛がそれに答えた。
「ううん、私とそーちゃんの共同作業だよ❤︎ねー?そーちゃん」
「いや、その・・・はい」
俺が認めると、あゆがここぞとばかりに攻めてきた。
「私にあんなに大口叩いてたのに先輩も1人じゃお料理できないんですかぁ〜?」
「そ、それは・・・」
ひ、否定はできない。本当に今まで料理なんてしたことがなかった。このままじゃ自立なんて言ってる場合じゃない、まずは料理を覚えないといけない。
最悪お金さえ稼げるようになればコンビニ弁当とかもありなのか・・・?いや、でも体に良いとか悪いとか色々聞くしな・・・
「え、まさかこの料理の素晴らしさが匂いでわからないの?」
そう言って結愛があゆに質問を投げかけた。に、匂い?別にどこにでもある野菜炒めとあんまり変わらないと思うけど・・・
「匂い・・・?・・・はっ!」
あゆは鼻腔に意識を集中させた瞬間にはっ、と何かに気づいたようだった。
「こ、この匂いは・・・!」
え、匂い?本当に別に何か特殊なものを入れたような記憶はない。
「先輩の血!?」
「・・・は?」
「そう!そーちゃんの貴重な血が入ってるの!これは世界で一番貴重な料理だよ?」
え・・・いや、え?血って・・・本当にちょっとしか入ってないのになんでわかるんだ?犬でも油の匂いが強すぎて一雫の血の匂いなんて多分嗅ぎ分けられない。
「ご、ごくり・・・」
あゆが露骨に喉を鳴らした。・・・仮に血が入ってたとしても別に喉を鳴らすようなことじゃないと思うんだけどな・・・むしろ俺だったら食べたくないし。まあ自分の血でしかも一雫分ぐらいならあんまり気にしなくてもいいか。
「じゃあ食べよっか」
結愛がそういうと全員でいただきますを言ってとうとう俺たちは料理を口に運んだ。・・・美味しい!本当に俺が作った料理なのか・・・?いや、後半は結愛がほとんどやってくれてたけど・・・それでも自分が作った料理を食べるっていうのはなんとも新鮮だ。
`バタン`
「え、いや、は!?」
あゆが料理を口にした瞬間になんというか・・・こういうのをエクスタシーというのか、よくわからないけどそんな感じの表情で涎を垂らしながら地面に倒れた。
「ちょっ、そんなにまずかったのか?」
「違うよそーちゃん・・・」
俺は結愛の方に向き直った。すると────
「そーちゃんの血をそーちゃんの隣で食べてると思うと興奮してぇぇ、卒倒しちゃうんだよぉぉ・・・あと美味しいし・・・はぁぁぁ」
結愛も気絶こそしてないがだいぶ危ない感じの顔になっていた。
「・・・・・・」
待てよ!今なら初音を家に入れることができるんじゃないか!?こんな警戒されてない環境なんて滅多にない!・・・いや、でもこの状況で初音を家に入れたとして、2人の表情を見られたら何をしてたんだって話になってしまう。
「・・・・・・」
俺は危ない2人を一旦放置しておいて、黙々とご飯を食べ進めた。
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