第356話彩音による救済
俺たちはいつものようにエントランスからエレベーターに乗って自分たちの家の部屋番号の前まで来た。
「そーくん、もしかしたら危険なやつかもしれないから、私の後ろに隠れてて」
「あ、ああ・・・」
「・・・どうしよう、もし、そーくんの下着とか盗まれてたら、私・・・」
その心配は絶対にないだろう。最悪盗まれるとしても俺のなんてことは絶対にない。仮に不法侵入者が女性だとしても、俺の下着を盗むなんて悪趣味なことはしないだろう。
それにしても・・・どうやって入ったんだ?窓から割って入ったとか︎?でもそれなら家の前に誰か集まってないとおかしい。なら不法侵入者は正面から入ってきたのか?この何重もあるロックを抜けて・・・?
「そんなことができるのか・・・?」
どう考えても不可能だ。
「じゃあそーくん、開けるよ、万が一中のやつがそーくんに攻撃してきたら殺すから、監視カメラもあるから正当防衛で通るでしょ」
「せ、せめて気絶させるだけにしてくれ・・・」
殺したりしたら過剰防衛になるかもしれない。
初音は家のロックを全て解除して、とうとう家の中に入った。
「「・・・は?」」
俺と初音は2人して同時に驚いた。中にいたのは紛うことなき初音の妹であり、俺の師匠である、`彩音`だったからだ。
「あ、お姉ちゃんおかえり」
「・・・あんた何勝手に入ってんの?」
いやいや、違うだろ、まずはどうやって入ったかだろ。そこには驚かないのか? どうやら他人の家に入れる技術ぐらいは取得してて当たり前っていうのがこの2人の共通認識らしい。
「別に兄弟なんだしいいでしょ〜?」
「だめに決まってるでしょ、早く出てって」
「は〜い」
師匠は何も抵抗せずに、家から出ようとしたが、俺とすれ違い際に師匠が俺の耳元で囁いた。
「もし私が行動しなかったら子種が出るどころか今頃子供作ってたかもね、これは`貸し`だよ?あと、流されるままにやるなんて絶対ダメだからね」
そう言って玄関から家の外に出て行った。・・・ちょっと複雑な気分だな。俺もこんな早い時期に子供なんて作りたくないから師匠に助けられたっていうのは事実なんだけど・・・なんかなぁ。
まあ、忠告はありがたく受け取ろう。確かに理性がどうのとか言い訳する前に、流されてやるのは最低の行為だ。
「あー!せっかくそーくんといい雰囲気だったのに、これじゃもう台無しだよ」
「ふ、雰囲気は気にするのか・・・?」
俺は地雷を踏んでしまわないように、遠慮がちに聞いた。
「うん、さっきので雰囲気があればその雰囲気に流されてそーくんには感情が伴うっていうのがわかったし」
「・・・・・・」
ひ、否定できない。でも俺だってあんな直前で止められてしまうとどうしても理性よりも優先になってしまうのは仕方がない。これは本能によるものだ。
「まあ、でも今日で私たちはまた一歩仲が深まったよね、で・・・近いうちに私たちは子作りをする、確信できちゃった」
近いうちに子作りをするかどうかはわからないけど、一歩仲が深まったというのは事実だろう。俺も思ってたことだ。
「だから、これからは焦らないことにするよ」
「・・・え?」
初音から衝撃の言葉が出た。それはつまり、段階を踏んで順序よくしてくれる、ということなのか?そうなのであれば俺としても大歓迎だ。
「今までは焦ってたからそーくんと子作りできなかったの・・・今だってもし私が変にそーくんと子作りすることに焦ってなくて冷静だったらこんなタワーマンションのセキュリティで、しかも20階にある私たちの特定の部屋に入ってくる理由がありそうなやつと入ってこれる技量があるやつで絞り込めば簡単にわかったのにね・・・そのせいであとちょっとだった子作りも遠ざかっちゃったし」
子作りはともかくとして、とにかく俺は本当にあの時どうかしてたと思う。本当にあと一歩で俺は飢えた獣のようになっていたかもしれない。
「そーくんも、ごめんね・・・?多分あの感じだとあとちょっと、だったんだよね?」
「な、なんのことだ?全然そんなことない」
「大丈夫だよ、2分しか耐えられなくても初めてなんだから仕方ないよ、むしろそーくんが他の女と浮気してこんなことしてないって確信が今日のそーくんの反応と体の反応からわかったから、よかったよ」
疑いを晴らせたのはよかったけどなんかだいぶ恥ずかしいな・・・それにしてもとうとうちょっとだけだけど初音と性的な関係になってしまったな。これからはより一層おかしなことをしてきそうだ・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます