第332話霧響からの連絡と理性寸前

`プルルルルルル`


「は、はい」


 車椅子だと充電器に刺してるスマホに出るだけでも一苦労だな・・・まだ操縦に慣れない。初音がいるときはほとんど初音が押してくれてるからいいけどいざ時自分で車輪を動かすとなるとだいぶ怖い。因みに初音は今部屋に篭っている。


『あ、お兄様!』


「き、霧響・・・?」


 約3週間ぶりぐらいに聞く霧響の声だ。・・・この発言は気持ち悪いからやめよう。


『お兄様!元気でしたか?私がいなくて寂しくなったりしてませんか?体に異常などはありませんか?』


 初音が押し問答してくる。元気でしたかと言われれば元気で、霧響がいなくて寂しいかと言われればまあ半々ぐらいで、体に異常は大いにあった。両足を負傷した。


「あ、ああ、特に異常なく元気だ」


 変に心配もさせたくないしこうやって収めておこう。


『良かったです、もしかしたら白雪さんか桃雫さんがそろそろ何かしでかすんじゃないかと思っていたので・・・』


 先見の目がありすぎて怖い。


「そ、そんなわけないだろ?」


『・・・そうですね、それで、あと1週間ぐらいでそちらに戻りますね」


「1週間・・・?ちょうど7月1日に帰ってくるのか?」


 大体夏休みといえば7月中旬の後半か下旬からだと思うんだけど・・・


「な、なんでそんなに休みが早いんだ?」


『前に言ったじゃないですか、実力がある生徒は色々と特権があってその一つです』


 本当にどんな中学校に通ってるんだ・・・霧響の身が心配になってきた。


『お兄様今悩み事とかありませんか?私でよければ聞きますよ?』


 悩み事か・・・ありすぎる!正直悩み事だけで脳の回路全て使えるぐらいには悩み事がある。


「ああ、ちょっと悩みご───」


「そーくん誰と話してるの?」


 俺はすぐに通話を切った。この緊急回避力だけで言えば俺は世界を狙えると思う。


「いや、独りご───」


「なんてね、霧響ちゃんもう帰ってくるんだね」


「・・・そ、そうらしい」


 え、電話の中身まで傍受されてるのか?嘘だろ?それは完全に予想外だった。チャットの履歴とか、最悪の場合でも誰と電話したかぐらいしかわからないと思ってたのに・・・電話の音声もそのまま初音の方に行くのか、これは迂闊なことはたとえ通話でもできないな・・・


「ん〜、困ったなぁ、霧響ちゃんがいない間にあの段階まではいかなくもそーくんのをちょっと触るぐらいの段階までは行きたかったんだけど・・・」


 俺のをちょっと触るって・・・嫌に決まってるだろ!ちょっととかつけても結局やることが一緒なら絶対に拒否する。


「・・・でもさ?正直今なら何しようとそーくん抵抗はできないもんね?」


「・・・え?」


「気持ち的にはちょっと罪悪感あるかもだけど、ここまで何もしてこないそーくんにも責任あるってことで、責任とってくれるよね?」


「ま、待て・・・そ、そうだ!前に言ってたあれ!18歳だ!18歳になったら責任取るからそれまでは徐々に仲を深めていこう!」


「・・・なんで女は16歳から結婚できるのに男の子は18歳からなんだろうね」


 と、いきなりここでよくわからないことを言い出した。


「そんなに少子化問題で困ってるんだったらもっと性教育進めるべきだと思わない?そんなだからそーくんみたいなヘタレが出ちゃうんだよ」


「へ、ヘタレって・・・」


「何?ムカついた?でもどうせ何にもできないんでしょ?」


 初音はそう言って下着と胸をチラッと見せた。


「・・・・・・」


「ほーら口だけじゃん、ちょっとぐらい私の事を襲うぐらいの気概見せてみたら?」


「・・・・・・」


 もう限界だ、ここまで挑発をされてしまってあんな誘惑ポーズまでされたらそろそろ理性が負けてしまう。というより俺の男の本能がそろそろわからせてやるべきだと訴えかけている。


「初音えぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


「きゃあああああああ❤︎」


 俺は初音のことを多少強引にでもいっそのことちょっとだけ襲ってしまおうと挑発に乗り、初音の方にジャンプ───


「いったああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 そうだった・・・感情に身を委ねて忘れてたけど俺は怪我人なんだった・・・それにしても危なかった、本当にあと少しで理性が飛ぶところだった。今はこの痛みに感謝しよう・・・


「・・・あーあ、本当にあとちょっとだったのになぁ」


 本当に危なかった・・・でも俺は頑張ってる方だと思う。

 こんなにもずっと誘惑してくるしかも見た目も可愛い彼女がいるのにも関わらずまだそんな関係になるには早いと言い聞かせて自制しているんだ。

 これはもっと褒められてもいいことだろう。他の人ならもうとっくに自制なんてできていなかったかもしれない。


「ま、そういう意地なところも好きだよ❤︎」

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