第318話天銀の謎の探究心
林間学校の地に向かっているバスの中、俺は悶え苦しんでいた。
理由は単純で車酔いだ。バスは酔わないつもりだったんだけど、こんなにも長い時間バスにいるとやっぱり酔ってくる。
今もうすでに3時間ぐらいこのバスに乗っている。
「最王子君、大丈夫ですか?」
隣の席の天銀がそう声をかけてくれた。
バスからすでに男女別だからここには初音の姿もなければ結愛の姿もない。
そんな俺を気遣ってかどうか、天銀が話を振ってくれた。
「そういえば、この前は災難でしたね」
「・・・災難?」
俺がなんのことかと聞くと天銀はこう答えた。
「はい、街中で洋式のメイド服を着た女性に話しかけられていたじゃないですか」
「あー、あの時は本当に大変だった───見てたのか!?」
「はい、もちろんです」
そんなことをそんな鋭い目で言えることに軽く恐怖を覚えそうだ。
それにしても天銀も見てたのか・・・あの時は初音も俺の背後を尾行してる形だったから二重尾行みたいな感じなのか。
初音からはそれらしきことを聞いてなかったから初音にバレずに尾行したのか、すごいな。まあ流石の初音も街中であんなに人数がいると尾行に気づくことなんてできないか。
「ところで、その・・・最王子君は・・・あ、ああいう洋式のメイド服が好きなんですか・・・?」
「・・・は?」
天銀はいきなり何を言ってるんだ。
「い、いえ、別に気になるということではないですよ?ただちょっと興味本位があるというか、好奇心というか・・・」
その後も天銀は色々と続けた。要は気になるわけでは無いけど単なる探究心だと言うことだった。それが気になるってことじゃないのかと俺は思ってしまったけど口には出さなかった。
そして俺は回答した。
「す、好きかどうかと言われると悩むけど・・・嫌いではない・・・」
むしろ現男子高校生でメイド服が好きじゃないにしても嫌いな人なんているのかどうか疑問だ。
「なるほど・・・」
天銀は事情聴取の時に使うようなメモ帳に何かを記していた。
「な、何をしてるんだ?」
「いえ、ちょっとメモを・・・」
今の話でメモをするようなところがあったのかは甚だ疑問だけど、まあいいか。
その会話が終わったとほぼ同時にバスが林間学校の地に着いた。
「ほっ・・・」
どうやら嘔吐せずに済んだみたいだ。小学生の時は俺だけが嘔吐してしまうというどうにも慶応し難いことがあったから本当に良かった。
「天銀、ありがとう、だいぶ気が紛れた」
俺は天銀にお礼を言った。
「べ、別に、お礼を言われるようなことでは、ない、です・・・」
天銀は途切れ途切れにそう言った。
とうとうこれから林間学校が始まってしまうのか。
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