第309話初音の護身語伝授

「そーくん!」


「はい・・・」


 あれから家に帰って直後、俺は初音に怒られていた。


「これからはああいうのは全部無視して!」


 そんなこと言われてもな・・・あんな押し売りみたいなことされてしまったらどうしようもない。


「さっきのを見ただろ?あれは防ぎようが無い・・・」


「そんなの「触らないでくれる?』とかって言ったら良いだけじゃん!」


 俺はそんな喧嘩腰な感じで対応したくない。


「そ、そんな喧嘩腰じゃなくても良いんじゃないか・・・?」


「喧嘩腰じゃなくて!悪い女から自分の身を守るための言葉だよ!」


 守る言葉がそんな攻撃的な感じでいいのか?これが攻撃が最大の防御と言われる所以なのか?


「はあ、本当に不安になってきた・・・もしあの場に私がいなかったらそーくんはあの女に押し切られてメイド喫茶に行ってたんじゃない?」


「そ、そんなわけ・・・」


「どうかな〜?もしあの女に「あ、あのあのあのっ・・・!嫌だったら別に良いんですけどっ!よかったら・・・来てくれませんか?」とか上目遣い言われたら、そーくんちゃんと断れる?」


「そ、それはもちろん・・・こ、断れるに決まってる」


 今初音の声のトーンが二段回ぐらい高くなったと思ったらまたすぐに怖いほど低い声に戻った。できるのであればずっと高い声で話してほしい。


「本当?じゃあなんて言って断るの?」


「えーっと、僕には彼女がいるから無理です、とか・・・?」


「僕って何?」


「い、一応知らない人だし俺って言ったら威圧的かと思って・・・」


「他の女にそんな気遣いしなくていいの!俺でいいからね!むしろ僕だったらそういうののターゲットにされる可能性高くなっちゃうよ?」


「うっ・・・」


 まさか一人称一つでそこまで言われるとは思ってなかったな・・・


「はあ、これだから放っとけなんだよね・・・私がいないと何もできないんだから♪」


 嬉しそうに言うようなことじゃない。


「と、に、か、く!これからはああいう悪女が話しかけてきても無視するんだよ?」


「あ、悪女・・・わ、わかった、やってみる」


「やってみるじゃなくて!やるの!わかった?」


「・・・はい」


 こうしてその後、明日俺が本当に女の子が寄ってきても払い落とせるかどうかをテストするために俺は街中を1人で帰ることになった。

 もちろん初音が監視している。・・・監視しているのをもちろんとか言うのはどうかと思うけど、とにかく初音に監視されていて、もし女の子のことを跳ね除けられなかった場合、即座に俺のところまでダッシュで来て説教するということになった。

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