第308話メイド服の女の子
初音と一緒に学校から帰っていたとある日、俺たちは少しだけ街に寄り道して帰ることにした。何か用があるってわけじゃないけど、なんとなく寄り道することになった。街っていうだけあってかなり人がいる。
そんな中で、近くで大きな声が上がった。
「あ、あ、あ、あのっ!そこの男の人!」
「・・・・・・」
どうやら女性が男性に何かを言いたいようだ。
「あなたです、あなた!」
俺は左腕を掴まれた。
「・・・え?あ、俺ですか?」
「はいっ♪」
誰だこの女の人・・・全然知らない人だ。派手なしゅしゅでツインテールをしていて、しかもなんかメイド服を着ている。っていうかなんでメイドのコスプレなんてしてるんだ?ハロウィンはまだ先だ。・・・ハロウィンにメイドのコスプレするのも変だけど。
「な、何の用ですか?」
「えーっと、こ、これですっ!」
そう言って差し出してきたのはどこかのお店のパンフレットだった。よく内容を読んでみるとそこには『メイド喫茶』と書かれていた。
「・・・・・・」
なるほど、これは趣味でメイド服を着てたんじゃなくて仕事か、ちょっと安心したな。もし本当にそういう危ない人だったら警察に行かないといけないところだった。
「ねえ、そーくん、これは浮気だよね?見せつけてるの?私の隣で話して腕組んで何か紙貰って・・・ラブレター?そういうことなの?よくこんな堂々と浮気なんてできたねそーくん、へえ、そう、もう私なんてどうとでもできるからってこと?そーくんがそういう考えなら私にも考えが───」
「いやいやいや!今の流れ見てただろ!話しかけたのは俺からじゃないし腕だって組んでたんじゃなくて勝手に掴まれただけで紙だってパンフレットだ!」
そう言って俺はそのパンフレットを初音にも見せる。そうだった、警察なんかよりも恐ろしいのが今俺の隣にいる彼女だったってことをすっかり忘れてた・・・
「・・・メイド喫茶?何そーくん、こんな所に行きたいの?」
「いや、俺だって今いきなり渡されただけで────」
「言い訳なんて聞きたくないんだけど」
どうする、この状況を打開する方法は・・・
「わ、悪いけどメイド喫茶には行けな───」
「だめ、ですか・・・?」
「うっ・・・」
そんな涙目の上目遣いは反則だろ・・・と思ったけど、初音の恐怖には勝てない。だいぶ可愛いと思ってしまったけど初音には勝てない。
「だ、だめだ、じゃあそういうことだから、ごめん」
そして俺と初音はそのメイド服を着た女の子から離れた。
「・・・私の誘いを断るなんて・・・」
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