第286話それぞれの体育の価値観

「一限目は体育だから、男の子も女の子もそれぞれ更衣室だよー」


「「「「「はーい」」」」」


 クラス一同が返事をした。俺の最も嫌いな教科だ・・・なんでクラスの人たちはこんなにやる気なんだ。


「はあ、私体育嫌いなんだよね・・・」


 は!?初音は何を言ってるんだ。そんな天性の運動神経を持ち合わせておいて何を言ってるんだ。


「私も・・・」


 結愛も!?どっちも抜群の運動神経のくせに何が嫌なんだ。聞いてみよう。


「2人とも運動神経いいのになんで体育嫌いなんだ?」


 俺がそう聞くと、2人は一寸違わず同時に答えた。


「そーくんと離れるから」

「そーちゃんと離れるから」


「・・・・・・」


 まさかそんな理由だったとは・・・学校も授業だし嫌うまでの理由になるのか・・・?


「いっそのこと男装でもしよっかなあって思ったけど、そうなると休み時間とか手入れとかでそーくんと話せなくなっちゃうし・・・」


「男装って・・・」


 そんなこと体育でするやつがいたら異常だろ。っていうかそもそも学校で男装なんてする方が異常───


「まあ、少しの間ですし、我慢してみてはどうですか?」


「ん〜、はあ・・・」


「・・・・・・」


 ちょっと待て!!!!!天銀は今の話の話題でなんでこんなに落ち着いてるんだ!?天銀は思いっきり男装中じゃないか。男子用の制服まで着て・・・


「では、最王子君、僕たち更衣室に向かいましょうか」


 僕たち!?っていうことは天銀はまさか男子の体育に参加するつもりなのか!?これは俺と交わした取引とは違って立派な犯罪だ!俺たちは廊下に出て誰も周りにいないことを確認したら会話を始めた。


「天銀!どうするんだ!?」


「どどどどど、どうしましょうか・・・」


 全然落ち着いてなかった!


「まさか高校生にもなって体育なんてあるとは思っていませんでした・・・」


 いや、逆に体育がない高校の方が珍しいだろ。


「大体なんで男として転校してきたんだ?」


「その方が楽だからですよ、それに、僕は犯罪を犯しているわけではありません」


 どっからどう考えても犯罪だと思うけどな・・・


「そもそも僕が最王子君と同じ学校に転入するなんて、何か理由がないとおかしいと思いませんか?」


「た、確かに・・・」


 じゃあやっぱり何か理由があるのか。


「実は、とある人に最王子君を学校の中だけでいいので男友達として接して欲しいと依頼されました」


「い、依頼!?そ、そのとある人っていうのは・・・?」


「それは言えない約束です」


 そういうところはしっかり守るんだな・・・それにしも俺と男友達として接するようになんて依頼する人なんているのか・・・?


「なので、さいあく僕が女であるとバレてしまっても、罪を問われるようなことにはなりません」


「そ、そうなのか・・・」


 依頼者の名前は出さない割に依頼内容はさらっと話したな。まあ、友達だからってことか・・・?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る