第257話二人の願い事
「・・・・・・」
しまった、何も考えてなかったから咄嗟に思ってたことを願ってしまった。まあいいか、どうせこんなの叶うわけがない。暫くして俺と初音は顔を上げ、4段の段差を降りた。もう何も言わないでおこう。
「そーくんは何を願ったの?」
「えっ、えーっと・・・」
い、言えない!道中何も考えてなくて初音の嫉妬心を消してほしいと思ったなんて言えない。ど、どうしよう。
「そ、そういう初音は何をお願いしたんだ?」
願うってことは今ないもの、もしくはほしいものってことになる。初音が何を願ったのかは普通に気になる。
「ん?ちょっとだけしかしてないよ?そーくんといち早く結婚できますように、そーくんの浮気癖が治りますように、そーくんの周りから女が消えますように、そーくんの周りから虫が消えますように、そーくんがもっと積極的になってくれますように、そーくんにもっと性欲が湧きますように、そーくんが悲しくなりませんように、そーくんがいつまでも元気でいてくれますように、ぐらいかな、もうちょっと時間があったらよかったんだけど、まあ他にも並んでる人いるしね」
「そ、そうか・・・」
まさかこんなに願い事があって全部俺関連とは・・・しかも何がちょっとだけだ、あんな短時間になんでそんなに一気に願えたんだ、っていうか途中変な願い事が混ざってるし。
「で、そーくんは何を願ったの?」
「お、俺はー、そのー・・・は、初音と普通に恋愛がしたいなーって」
嘘はついてない。初音から嫉妬心さえ消えれば普通に恋愛ができ、俺はそれを願ったんだ、そうだ、嘘は着いてない。
「あはは、何それー、もうできてるよ❤︎」
なかなかできてないから願ったんだけど・・・
「でもちょっと安心した、やっぱりそーくんは私のことがちゃんと好きなんだよね?」
「ま、まあ・・・」
改めて言われると恥ずかしいけど、確かにその通りだ。好きじゃなかったらこんなに大変ならとっくに別れている。
「えへへ❤︎」
初音はこれ以上ないくらいに笑った。その瞬間に木々が喜ぶように揺れた。
「・・・・・・」
うん、かわいいな。最近は初音がちゃんと笑っているところを見たことがなかったけど、改めて見ると初音はやっぱり可愛い。
「ん?どうしたの?そーくん、もしかして見惚れちゃった?」
「う、うるさい」
「もう、照れなくてもいいよー♪私なんてずっとそーくんに見惚れてるから❤︎」
そんなやりとりを繰り返しながら俺と初音は長い神社の階段を降りて、帰路に着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます