第237話詰め寄る初音

「はー・・・」


 やっぱりちょっと雨に濡れた後のお風呂は格別にスッキリするな。運動とかする人なら汗を流すのが気持ちいいとか言うんだろうけど俺は運動とかしないからそんなことは言えない。それ故にちょっと雨に濡れたぐらいでもこれだけ爽快な気分になれる。


「そーくんっ!」


 お風呂の前から初音の明らかな怒声が聞こえてきた。


「な、なんだ・・・?今お風呂に入ってるから後じゃダメなのか?」


「・・・わかった、じゃあすぐに上がってね」


 冷たい声で初音が言った。な、なんだ、いつもの初音ならお風呂に入ってきそうだけど今は怒ってるからか俺に言うことだけ言ってどこかに行ってしまった。


「・・・上がりたくないな」


 いっそのことこのままできるだけいつもより長くお風呂に入って時が経つのを待とうかな・・・どんなことでも時間が解決してくれるってどっかで聞いたことあるし・・・うん、そうしよう。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 だめだ、何を言われるのか気になりすぎてゆっくりお風呂に入ってるどころじゃない、せめて何を言われるかだけ考えてから上がろう。


「今日俺は何かしたか?」


 何もしていないはずだ。学校でも特に何もなかったし下校に関しては初音と別々だからそもそも何か起きても初音にはわからないはずだ。仮にわかっていたとしても特に何も起きてない。

 強いて言うなら相合傘をしたぐらいだけど相手男性だし、初音はそんなことじゃ怒らないだろう・・・多分。


「・・・・・・」


 初音なら十分性別が男でも怒りそうな気がしてきた・・・どうしよう。


「そーくんっ!いつもより遅くない!?いっそ入っちゃってもいいんだけど!?それとも何かやましいことがあるから出てこられないのかなあっ!」


「ひっ・・・」


 本当に怒ってるな、落ち着け、相手が男性であったことをちゃんと言えばわかってくれるはずだ。きっと初音はたまたま俺と誰かが相合傘をしているのを見てしまってその相手が女性だったと勘違いしてるんだ。そうだ、それなら全然誤解を解けば大丈夫なはずだ。


「い、今から出る!」


「・・・うん」


 そして初音はまたお風呂場の前から去った。そして俺はお風呂場から出て着替えてから初音がいるであろう俺の部屋に戻った。


「・・・あれ、そういえば霧響がいないな」


 帰った時も昨日は出迎えてくれたりしたのに今日はしてなかった。・・・まあ昨日はフィギュアに関して詰問されたんだけど・・・


「へえ、この状況下で他の女のことを考えられるぐらい余裕があるんだねー」


「うっ・・・」


 霧響のことも他の女扱いか・・・本当に怒ってるな、これは。

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