第206話霧響の申告

 俺と初音がそのままリビングに向かうと霧響が真剣な眼差しで椅子に座っていた。


「ど、どうしたんだ?」


 俺がそんな霧響に話しかけたら霧響は言った。


「明日にはまたあっちに戻るんですよね」


「え、ま、まあ・・・」


 これはもしかして俺と離れるのが寂しい的なちょっと可愛い感じの一面を見せてくれるのかもしれない。こんなことを思うなんてかなり気持ち悪い兄だけどこのゴールデンウィークのことを考えたらちょっとは妹の可愛い部分も見たくなる。


「・・・私・・なの・・・です」


「え?」


「お兄様が私以外の管理生活を受けるなんてそんなの嫌です!」


 ええ、全然思ってたのと違うんだけど・・・


「お兄様は私だけの管理を受けていればそれだけでよかったのに・・・!」


「き、霧響・・・?」


「ですからっ!私考えたんですけど・・・私もお兄様についていきます」


「・・・は?」


 霧響は何を言ってるんだ?


「実はなんですけど私の中学校って4月は親睦を深めるために学校に登校して5月はひたすら課題を家でやらされるんです」


 霧響と俺は違う中学校で霧響は受験を受けていた、っていうより受けさせられてたんだけど・・・だから霧響の中学校のことはあまり知らない。とはいえ──


「さすがにそれは嘘だろ、そんな義務教育学校あるわけがな───」


「あるんですよっ!それが本当ならお兄様と同じ中学校に行くはずだった私が違う中学校に行ってまで得た権利なんですっ!」


「うっ・・・」


 そんな力強く言われたら信じ込んでしまいそうだ。


「証拠は?」


 初音が霧響に証拠を詰めていた。おそらく初音もついてきてほしくはないんだろう。初音と考えが一致したのは久しぶりな気がする。


「これです」


 そう言いながら霧響は一枚のプリントを見せてきた。


「最王子霧響さん、あなたも知っての通りあなたが在学している中学校は実力さえあれば卒業できるので正直あなたは中学過程で学ぶべき過程を全て終えているので登校しなくてもいいのですが、一応規律としてやらなければならない課題だけはやってもらいます・・・?」


 さっき聞いてた話とはだいぶ違うけどこれは霧響だけってことなのか。っていうか霧響はどんな中学校に行ってるんだ?俺が聞いても「詮索はしないでください」とか兄弟間では絶対に使われないであろう言葉で返してくるし。


「そういうことなので、正直ずっといてもいいんですけど、さすがにそれは交友関係に響くかなあって思って・・・まあお兄様以外の人間関係なんてどうでもいいんですけど、一応保っておかないと・・・」


「・・・・・・・」


 そんなこんなで特に咎めることもできず霧響もついてくることになった。


「あっ、そうそう霧響ちゃん、ご両親に電話できる?」


「えっ・・・」


 これまた波乱の予感がする・・・

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