第179話総明の血

「おいしかったねー」


「ああ、こういうところってメイド喫茶みたいな感じで料理はあんまり美味しくないのかと思ってたけど全然美味しいな」


 猫もあんまり食事中は寄ってなかったし・・・そういうふうに訓練された猫なのかもしれない。


「・・・メイド喫茶行ったことあるの?」


「え?いや、行ったことあるかわかんないけどなんかほら、よく言うだろ?」


「・・・そうだけど、なんか怪しいね」


「いやいや、俺には結愛っていう彼女がいるんだろ?ならそんなところに行かないだろ」


「えっ?あっ、そっ、そうだね///」


 と、結愛は頬を桜色に染めた。


「ん?何をそんなに照れてるんだ?」


「照れてないよっ!ばかっ!」


 俺はバカらしい。


「ねえねえ、この猫に触ってみない?」


 と、結愛は俺の方に悪魔・・・もとい子猫を連れてきた。


「ああ、いや、遠慮しとくよ」


「まあ、まあ、そう言わずにー♪」


 結愛が強引に俺の方に猫を持ってきたので俺は軽く手を払った。その手がたまたま猫に当たってしまい・・・


`ニ”ャッ!`


「いっ・・・」


 猫が軽く俺の手を引っ掻いた。引っ掻いたと言っても合計で1cmぐらいだ。子猫でよかった・・・


「あっ、大丈夫っ!?そーちゃんっ!」


 すぐに結愛がこっちに駆け寄ってきた。


「平気だって、血もこんだけだし」


 俺は結愛に血が出ている手の甲を見せた。


「出血量0.15U、つまり大体15ml──」


 その後も小学生が走ってこけたよりも少ない出血量について結愛は延々と語った。そしてようやく・・・


「うん、多分命には関わらないと思うから安心して」


 いや、こんなに長々と語っといて言う事それなのか?そんなのあんなに語らなくても一目でわかる。


「でも今日は一応もう帰って安静にしててね」


 これだけの出血量で帰るのか・・・


「はいっ!」


 結愛は俺の手の甲に女の子らしい可愛い絆創膏を貼ってくれた。


「ありがとう」


「うんっ!・・・さてと──」


 すると結愛は俺のことを引っ掻いた猫の元に向かった。


`ニャ?`


 猫は「なんの用?」的な感じの顔で結愛のことを見ている。


「ニ”ャ」


 結愛は怖い声と顔でそう言った。そしてそれを見た猫は逃げていった。おかしいな、言語は通じてないはずなのに・・・弱肉強食的な勘で結愛はやばいと察したのかもしれない。


「はあ・・・そーちゃんに怪我を負わせるなんて・・・」


「いやいや、まあこんだけの出血だしそんなに気にすることじゃ──」


「気にするよっ!そーちゃんの血なんて世界でも1番レアなのに・・・あっ、ちなみにさっきの血は厳重に採取させてもらったけど、それは許してね?」


 血を採取って・・・この何年かで何があったんだ、そんなことするやつ多分この世界のどこを探しても他にはいな────


`そーくんの髪の毛と爪とか血とかは大事だから厳重に管理してるんだあ`


「・・・っ!」

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