第112話私の全てを肯定できる?

「・・・・・・」




 1週間か、まあできないこともないけど短いというには長い期間だな。でもここで反論しても意味が無いし別にできないこともないなら疑われない努力ぐらいはしないといけない。




「わかった、じゃあ‘1週間‘だな」




「うん」




「で、今日はどうするんだ?学校とか──」




「行かないって言ったよね?明日はわからないけど少なくともあんな浮気現場を見ちゃったんじゃ少なくとも今日はあの女がいる空間になんて連れて行けないよ・・・」




「浮気現場・・・?」




 もしかして俺があの女店員さんに頭を下げた時のことか?あれだけで浮気になるのか?




「・・・・・・」




 前までの初音は頭を下げるだけじゃ浮気なんて疑わなかったのに・・・もしかして結愛の存在で警戒心が上がってたりするのかもしれない。




「しらばっくれる気?あんなにどうどうと私よりもあの女店員を優先して頭を下げるなんて・・・」




 と、初音は本気で落ち込んだ様子で言い放った。・・・いや、




「浮気なんてしてないって、あれはお店にちょっと迷惑かなあって思っただけで──」




「迷惑?私がそーくんのためにしてあげたことが迷惑なの?やっぱり浮気してるから?実はまだあの女に‘依存‘したくて中途半端になってるとか?」




「いや、そんなんじゃないけど・・・」




「じゃあ私の全てを肯定できる?」




「全てを肯定・・・?」




 全てを肯定って・・・それはさすがにできない。っていうか人間なんだし欠点ぐらいはあって当然のはずだ。・・・そういうつもりで言ったんだけどどうやら初音には伝わらなかったらしい。




「いや、全てを肯定なんてできない、人間なんだし欠点の1つや2つは──」




「何それ」




「えっ・・・」




「人間なんだしって何?もしかしてそーくんにとって私はそこらの他の奴らと同じ存在なの?っていうか欠点って何?もし本当に好きなら肯定できるはずだよね?私はそーくんの全てを肯定できるよ?顔から身長とか正確とか精神面とか脳の造りとか浮気癖とか──」




「・・・・・・」




 と、初音は饒舌だった口をいきなり止めると考えを改めたように言う。




「ごめん、そうだね、好きな相手でもすべては肯定できないね、浮気癖なんて特に・・・」




 と、深々と謝って来た。・・・いや、浮気なんてしてないんだけど、ここはどうなんだ?もしここで頷いたら浮気しているということになってしまうのか?それともここで首を横に振ったら「じゃあそーくんに欠点なんてないから私のこともすべて肯定できるよね?」とか言ってくるのか?




「・・・・・・」




 俺は結局言葉を失いその場に茫然としたまま初音のことを見ていた。


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