第50話ツンヤンデレは怖い

 おいおい、いきなり何を言い出すんだ、この女の子は・・・まあ、昔は仲が良かったのかもしれないけどもう何年も前だ。そんな昔のことより今の方が大切なはずだ。




「そーくん?」




「いやいや!しないって!俺は‘浮気‘なんて絶対にしないから!」




 と、俺が言った瞬間、その女の子は気落ちした様子で言う。




「え、浮気って・・・そーちゃんはこのメスーー女の子と付き合ってるの?」




「いや、まあ、ついさっき告白の返事をして、まあ、うん」




「うそ、うそだよね、そーちゃん」




 と、ものすごく焦ったように女の子は言う。いや、なんか浮気した最低なやつみたいな気分になるからやめてほしい。




「そっか、このメスに毒されたんだね?」




「メスって・・・」




 まあ、メスの部分はよくわからないけど毒されたの部分は割と正解なのかもしれない・・・おそらく常人が俺のことをどこかからか見ているのであれば「お前も十分毒されてるぞ」なんていう答えが返ってくるんだろう・・・でも仕方ない。人間は良くも悪くも適応力が高いんだ・・・




「そういうことね、全てはその隣にいるメスのせいなんだね?脅されてたりするの?」




「いや、そういうわけじゃーー」




「いやいや!脅されてるわけじゃなーー」




「そーちゃん!わかってるから!安心して!私が助けてあげるから!だからもし助けれたらちゃんと私とのお約束守ってーー守らなくてもいいけど、お礼はしてね」




 ・・・思い込みの強い子だな。っていうかさっきから思ってたけどたまに入るツンデレみたいなやつは何なんだ?いや、別にツンデレが嫌いなわけじゃないんだけど、やるならもっと「あなたのこと好きなわけじゃないんだからね!勘違いしないでよね!」的なことを言ってほしい。まあ、これはテンプレすぎるけど。




「だから、別に脅されてるわけじゃないんだって」




「うんうん、弱み握られてるからそういうしかないんでしょ?」




「・・・・・・」




 ま、まあ、弱みを握られてるっていうのは見事に的中してるから特に反論する術がない・・・




「あっ!その反応・・・昔から変わらないね!そーちゃんは嘘をつくとき引き攣った顔で笑うんだよねー」




 え、そうなの!?いや、まあ、嘘をついたわけじゃないけど、弱みを握られてるのは本当だしなあ・・・っていうかちゃんと付き合ったんだしもう信頼してという意味を込めて俺の黒歴史をすべて消してもらいたいな。帰ったら頼み込んでみよう。




「まあ、そういうことなら、うん、そのメスから助けてあげるから、ね?そーちゃん」




「いや、ね?って言われても・・・っていうか君と俺って本当に知り合いなの?確かにアルバムに似たような女の子がいた気がするけどさすがにそんな昔のこと覚えてないだろうし・・・」




「え?覚えてるよ?」




「えっ・・・」




 今一瞬初音が喋ったのかと思った。この当たり前でしょ?みたいな雰囲気がそう思わせたのか?




「いや、でももう何年も前のことーー」




「覚えてるよ?」




 ・・・なんなんだこの子。ラノベにいたら天然ツンデレ系かと思ってたけど、初音みたいな感じでもあるのか?なんか・・・初音より怖いのかもしれない。




「そーくん、どういうこと?」




 ・・・訂正しよう。初音より怖いなんて事は絶対にない。なぜなら、今横でナイフを俺に差し向けている初音の方が何倍も怖いから・・・


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