第213話 禁止よりも凄い事

 ベッドの中には、ルリ、忍、あい、天音、黒百合、遥の六人が入ってきた。

 くじ引きで決まった初日の添い寝メンバーの六人だ。

 因みに明日は、咲、杏子、渚、アリス、和沙、一二三、栞子に七人が決定しているらしい。

 こんなムラムラしまくっているエッチ女子が何人もいて、何も起きない方が不思議なくらいだろう。


 春近も春近で、浴室で爆発してしまったにも関わらず、すでに完全回復して心身共に漲ってしまっていた。




 つい先ほど――――


「ううっ、こんな強烈な添い寝はキツ過ぎるだろ……助けて~アリス右衛門えもん

「ハルチカ……これもハーレム男の務めです。耐えるのです。エッチは禁止なのだから耐えるのみです!」

「それが余計にキツいんだってぇええええ!」


 そして春近は寝室に連行され、ベッドを二つ並べて連結させた上に寝かされる。

 飢えたエッチ女子六人が見つめる中で、気分は薄い本に出てくる敵に捕まった女騎士のようだ。

 そう、今から楽しい『くっころ』的でエッチな拷問タイムが始まってしまうのである。


 そしてこの後……春近は、自分でエッチ禁止にしたことを後悔するのだった――――




 逸早くベッドに入り込んできたルリが春近の右隣を確保し、同じく天音が左隣に素早く入り陣取ってしまう。


「ハル、朝までずっと一緒だねっ♡ 今夜はギュッてしたまま話さないよぉ♡」

「ハル君♡ ハル君♡ あ、朝まで一緒だなんて……も、もう、お姉さん……興奮し過ぎておかしくなっちゃいそう♡」


 ルリはいつも通りエッチだが、天音は興奮し過ぎなのか壊れ気味になっている。


 あいと黒百合が上に乗ってくる。


「はるっち~♡ 一緒に寝れるなんてちょーうれしぃ♡」

「ぐへへ~春近、年貢の納め時やで~」


 あいは満面の笑みで春近の胸板に乗り、黒百合はいつも通りぐへぐへ言っている。


 忍は一瞬何処に入ろうか迷ったが、春近の枕を外して代わりに自分の尻を入れるという、とても斬新な尻枕を実現してしまった。


「春近くん、寝心地はどうですか?」

「えっと、ちょっと高いかな」


 忍さんのお尻がボリュームあり過ぎて……

 というか、尻枕って……何だこの尻フェチが泣いて喜びそうなシチュエーションは?


 結局、尻が高すぎるので、春近の体の下に布団を入れ嵩上かさあげし、丁度良い高さに調整された。

 嵩上げされたことで、ルリ、天音、あい、黒百合の四人に四方から狙われるという凄い体制になってしまう。

 四人が生唾を飲み込む音まで聞こえてきて、もう完全に美味しいエサを前にした肉食獣のように見えて仕方がない。


「ちょっと、本当にエッチ禁止だから。大人しく寝るだけだよ」


 身の危険を感じた春近は、念には念を押す。


「分かってるよぉハルぅ♡ 安心してっ♡」

「ルリ……本当に安心して良いものか……ってか、一人足りないような?」


 今更ながら、遥が見当たらないことに気付く。


「ちょっ、誰だ! オレのパンツ下げてるやつは!? 遥でしょ!」


 遥は春近の足元に寝て、何故かパンツを降ろしていた。


「やだなあ、春近君。パンツ降ろさないとよく見えないじゃん」

「ちょーっと! 待て待て待て待て! 何で下すんだ!?」

「気にしないでよ。私の好奇心だから」

「きき、気になるわぁああ!」


 うううううーっ!

 遥……普段は凄くマトモな人なのに……

 何でアソコのことになると超アグレッシブなんだーっ!


「ふふっ、春近君……凄い……」

「うわああっ、息が当たってくすぐったいって!」

「春近君、何もしてないんだから大人しくしてね」

「そ、そんな、むしろ何もしないのがキツい……」


 春近は、この時になって気付いた。

 こんな魅力的な女子たちに密着されて、何もせず朝まで生殺し状態のままの方がキツいのだと。



「ハルぅぅ♡ ちゅっ♡ むちゅ♡ んっ……ちゅぱっ♡」


 ルリが激しいキスをしてきた。


「ちょっと、んんっ、ちゅ……ルリ」

「キスはエッチじゃなくて挨拶だって渚ちゃんが言ってたよ」


 先程の渚とのやり取りを盗み聞きしていたらしい。

 まさか、あの話がここに繋がるとは春近も全く予想していなかった。


「ハル君、こっちも!」


 クイッ!

 ルリとの熱いキスを見た天音が、春近を自分の方に向かせて濃厚なキスをしてきた。

 まるでルリに対抗意識を燃やすように。


「はむっ♡ ちゅっ♡ んんっ、ちゅぱっ♡ ちゅうっ……ちゅちゅっ♡」

「んんっ、うぐっ、ちゅっ、んんっーん! あ、天音さん……激しい……」

「ハル君っ♡ 悪い子にはお仕置きだよっ! ふふっ♡」


 天音は、細く長い指を使って、春近へフェザータッチで触り始めた。

 それは触れるか触れないかの微妙で繊細なタッチで、長い指を活かした超絶テクニックで攻め立ててくる。

 そんな技に春近が耐えられるわけもなく、一瞬で天音の虜にされ皆に乗られて動けないまま攻め続けられることになってしまう。


「はぐうううっ……あ、天音さん、触ってるでしょ!」

「ええーっ、気のせいだよぉ♡ ハル君、かわいいっ♡」

「うぐっ~っ!」


 天音の、好きな人に気持ち良くなって欲しいお姉さんモードが炸裂した。


 はあっ♡ はあっ♡ ハル君! もうたまんないよっ♡

 そんな良い表情するなんて♡

 もう、止まらなくなっちゃう♡

 でも、お風呂の時みたいにやり過ぎちゃうとマズいから、今度は絶対にイカせないけどねっ♡

 覚悟してねっ!


「あんっ♡ んんっ♡ ちゅっ♡」


 天音はキスをしながらも手は春近を攻め続ける。

 触っているのか触っていないのか微妙なラインを攻める技術で。

 しかも、春近が昂ってくると手を弱め、静まってくると刺激を上げるという、絶対に絶頂さないテクで延々と無間地獄のような恐ろしい技を使っていた。

 一応エッチ禁止は守っているのだろうか。


 元々天音はSっ気は少なかったはずだが、春近と付き合ってからはドンドンSっ気に目覚めてしまい、特に一夜を共にして自分の下で絶技により快感にのた打ち回る春近を見てからは、完全にSに目覚めて振り切ってしまったようだ。

 ここに、渚と並び立つほどの最強ドS女子が誕生してしまったのである!


「ああ~っ! ズルい♡ うちもぉ♡ ちゅ~っ♡」


 二人の熱々ぶりに嫉妬したあいが、春近のくちびるを奪って嵐のようなキスの連打をしてくる。


「ちゅ♡ ちゅちゅ♡ ちゅ♡ ちゅ~っ♡ はるっち~大好きぃ♡」

「んんんっ~んんんっ~あ、あいちゃ~ん」


 あいのムチムチの胸を押し付けられながらキスの連打を受け、更に下の方は天音の攻撃が止むことなく続き、春近は快感にビクビクとカラダを痙攣させる。


「春近、私も♡」


 黒百合も負けじとキスをせがむ。


「ちゅーっ♡ ちゅっ♡ ちゅ♡」


 四人がキスをしまくっているのを、忍が羨ましそうに見ていた。


「ああっ、良いなぁ……私も後で……。い、いっぱいキスしたいです♡」


 ――――――

 ――――




 あれから何時間経ったのだろうか――――

 窓の外は少しだけ白んできた。

 夜明けが近いのかもしれない。


 ルリたちは疲れて寝てしまったが、天音の超絶テクニックによる攻撃は続いたままである。

 そう、天音は明るく優しい性格にみえるが、実は少しだけ腹黒で超執念深くてしつこい性格だったのだ。

 普通の人ならすぐ飽きるようなことでも、天音なら長時間続けられることが可能だ。

 そのしつこさと真面目で努力を惜しまない性格から、天音流絶技四十八手を開発したり、寝る間も惜しんで春近の好みの歴史ネタを勉強したりしている。


 そして、その五時間以上にも及ぶ常軌を逸した長時間愛撫により、春近は身も心も天音に屈服してしまう。


「も、もう……許して……」

「えへへっ♡ どうしよっかな~♡」

「お、お願い……何でもするから……」

「ん? 今、何でもするって言った?」

「言っ……た……」

「やったぁ♡ 前に『何でもする券』を貰ってるから、これで二回もしてもらえるよ。ハル君っ♡」

「ううう……もう、ダメだぁぁぁ……」


 天音が手を止めたことで、やっと春近は開放された。

 限界はとうに過ぎていたが、鬼神王となり体力が大幅に向上していたのが役に立ったのかもしれない。

 まさか、強くなったことがエチエチ攻撃の耐性に使われるとは本人も思わなかっただろう。

 春近が屈服して眠りに入ったことで、天音も春近に身を絡めるようにして眠った。


 ――――――――




 チュン、チュン、チュン――――


「はっ! 朝だ! って……ちょ、凄い体勢に……」


 春近が目覚めると、忍のムッチリとした肉感的な太ももが蛇のように絡みついている凄い体勢になっていた。

 すぐ近くに忍の際どいところがあり、体温が直に伝わってきてドキドキしてしまう。


「ちょっと、忍さん、皆! 朝だよ! 起きてーっ!」


 ――――――――




「ううっ……眠い……」


 起きたのは良いが、朝方少しだけしか寝ておらず、睡眠不足の上に体が重く感じて疲れていた。


「ハル君! 大丈夫?」

 ビックーーーーーーン!


 突然天音に抱きつかれ、春近はビクッと反応してしまう。

 何故だかよく覚えていないが、天音には逆らえない体にされてしまった気がする。


「だ、大丈夫だよ……」

「ふふっ♡ これから楽しみだねっ♡」

「えっと……」

「覚悟してよね♡」


 天音の笑顔がちょっと怖い。


「あっ、渚ちゅわ~ん♡ おはよっ!」

「抱きつくな! 暑苦しい!」


 天音が渚を見つけると、ついでに彼女にも抱きつきウザ絡みを始める。


「渚ちゃん、これで一緒だねっ」

「は?」


 渚には何のことだか分からなかった。ただ、天音は春近を屈服させている渚のことが羨ましかったのだ。

 天音としては、渚のことはけっこう好きなのだが、自分も同じ立ち位置に揃ったと感じていた。


 これで女王様が二人になってしまったような気がするが、春近がダブル女王様で二人に調教される日も近いのかもしれない――――

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