第206話 妄想を具現化?

 輝く陽射しに水飛沫が舞う。

 海に入り水を掛け合うという、青春っぽいことをやってしまっているのだ。

 何だかんだと理由を付けて海の家から出たがらなかった春近たちインドア派の面々も、結局海に入ると楽しくなってきてはしゃいでしまっていた。



「行け! 春近!」


 黒百合が春近の背中に乗って遊んでいる。

 水着で密着しているので、色々と大事な所が当たりまくっているのだが。


「ううっ、黒百合ブラックリリー、そんなにグリグリ押し付けると」

「ぐふふ……春近のエッチ♡」


 水面上では楽しく遊んでいるように見える黒百合だが、水面下では春近に乗りながら足を前に交差し、ある部分をグリグリと刺激していた。

 実は手も足も器用で、精密な動きでアソコへの焦らしも追い込みも自由自在なのだ。


「まさか……海中でさえ俊敏で精密な動き……水陸両用バトルアーマーか!」


 春近が人気ロボットアニメっぽいセリフを言う。


「さすが春近、ノリが良い」

「いや、その前にグリグリ止めてよ」

「これはやめられない。くせになる」

「もう、ベッドの中ではよわよわなくせに」

「むうーっ! それを言うな」


 この黒百合、普段はエッチな発言が多く、春近のアソコをイタズラばかりしているのだが、いざ本番になると急によわよわになって大人しくなるのだ。

 普段は大人しいけどエッチの時だけ凄く激しい忍とは逆のタイプだった。


「もう春近は許さん!」

「こら、暴れるなって」

「わわわっ、落ちる」

「わぁーっ!」


 黒百合がジタバタと暴れ、春近が後ろに転覆する。黒百合は自爆した形だ。

 その時、春近の足が前に上がり、ちょうどそこに居た和沙の股間に命中した。


「ひゃん♡」


 和沙が変な声を上げる。


「は、は、ハルちゃん! い、今のはわざとなのか? こんな公衆の面前で私の股間を刺激してくるとは……はっ、まさか! これは、公衆の面前で私を辱めようとする野外羞恥プレイなのでは?」


 ※誤解です


『ほらほら、周りの人が見てるぜ。そんな顔してるとバレちゃうぞ』

『くうう~っ、らめぇぇーっ!』

『ふふっ、ダメとか言いながらもカラダは正直だな。ここはこんなになってるぜ!』

『ああーっ、ダメなのにーっ! カラダがハルちゃんを欲しがっちゃうぅぅぅぅっ!』


 ※これも和沙の妄想です


「くっ……ハルちゃん……海の中だからといって、こんな破廉恥なことをするなんて……とんでもないドスケベ魔人だな……」


 和沙の妄想が止まらない。


「よし、ハルちゃんがそこまで言うなら仕方がない。さあ、存分に野外羞恥プレイをするが良い!」

「あの……和沙ちゃん……何言ってるの?」

「くうううっ……おあずけか……放置プレイとは高等テクニックを……」

「???」


 春近は、無意識のうちに彼女たちの情欲に火をつけてしまっていた。

 ただでさえ最強エッチ女子に狙われているのに、他の女子までエッチな気分にしてしまうとは、もうとんでもないラッキースケベ誘発男である。



 ボヨンっ!

「あれ?」


 和沙から後ずさった春近だが、後頭部が柔らかくて包み込むような感触に包まれた。


「この包まれるような安心感……そして、柔らかくありががらも、所々しなやかで張りのある感じ……」


 ぽよんぽよんと柔らかな感触に浸りながら春近が口を開く。


「忍さん」

「えっ、こっち見なくても分かるんですか?」

「忍さんのことは何でも分かりますよ。ココとか……ココとか……」


 春近が忍のカラダをムニムニと触り始める。


 この腕――――

 スベスベとした張りのある肌触りでありながら、つい触りたくなる上腕二頭筋じょうわんにとうきんの辺りのムッチリ具合。まさに『ナイスバルク!』最高だぜっ!


「ひゃ、くすぐったいです」


 そして、この脚――――

 最初に言っておこう。女性に逞しいとか言ったら失礼かもしれないけど、この場合は誉め言葉のなので許して欲しい。逞しい大腿筋だいたいきんに薄っすら脂肪が乗り、絶妙なムチムチ感を醸し出す最高の太もも。

 格闘技漫画の女性主人公や格ゲーの女性キャラにありそうな、蹴りで全てを破壊しそうな素晴らしく伸びやかな脚。

 逞しさがありながらも女性の柔らかさも兼ね備えた完璧さだ!


「あんっ♡ ダメですよ、春近くん」

「も、もうちょっとモミモミさせて」

「もぉ、春近くんエッチです♡」


 春近のフェチが全開になってしまい、もうベタベタ触りまくりだ。

 いくら付き合っているとはいえ、いきなりこんなベタベタ触りまくりなのはマズいと思うところだが、このカップルに至ってはドチラもエッチなことばかり考えている似た者同士なので問題無い。もうお互いノリノリになってしまっていた。


「ファアァァー! 忍さん、何て素晴らしいんだ!」

「もうっ、春近くんのエッチぃ♡ そ、そんなにしたら、もうどうなっても知りませんよ」

「忍さんが魅力的過ぎるのがいけないんだよ」

「あふぁ♡ 春近くんっ♡ そんな嬉しいこと言ってくれるのは春近くんだけです。ぎゅーっ!」


 忍のハートに火をつけてしまい、自らピンチになる春近だ。

 しかも、二人でイチャイチャしているところをルリに見つかってしまう。


「ああーっ! ハル見つけた! こんなことろでエッチなコトしてる!」


 さっそくルリは両手をニギニギしながら戦闘態勢に入る。

 一応周囲をキョロキョロと見回し、アリスが居ないのを確認してから迫ってきた。


「ハルぅ、もう逃げられないよ。私も渚ちゃんを見習ってお仕置きしないと」

「おい、ちょっと待てルリ、話し合おう」

「だめ、ハル有罪! 判決! おっぱいサンドの刑!」


 忍の胸の中に納まっている春近に、ルリが両手を広げて迫って行きサンドイッチにしようとしている。

 もう、こうなってしまっては春近には逃げ場が無い。為すすべなくおっぱいサンドされる未来しか残っていないだろう。


「ふっふっふぅ♡ 覚悟してよねっ、ハル」


 春近の眼前にルリの巨乳が迫る。


「うわぁーっ! やめろぉぉぉ……ふがっ、んんっ、もがっ……」


 春近の顔がルリの巨乳に埋まり、柔らかそうな胸の中にめり込んでしまう。

 忍までノリノリになって体を押し付け、春近のカラダは完全に二人の肉の海にプレスされてしまった。

 傍から見ていると凄くバカっぽい光景なのだが、プレスされている春近は、まさに天にも昇る気分だ。


「ああっ、これが天国なのか……。もう……窒息して昇天してしまいそうだよ……。おっぱいに挟まれて昇天するのなら……本望かもしれない……いや、ダメだろ!」


 巨乳に挟まれて昇天しそうな春近のところに、控え目な胸に大胆なビキニを着た天使が降臨した。


「おい! ハルが死んじゃうからヤメろよ!」


 控え目な胸の天使……咲が二人を止めて春近を引っ張って救出した。


「あっ、ハル、ごめんっ」

「春近くん、やりすぎちゃいました」


 実際は遊んでいるだけなのだが、二人の巨乳女子が本気になると鬼神王さえ窒息させるのだ。

 恐るべし巨乳!



 そんな二人を残して、咲がドンドン春近を引っ張って行く。


「ありがとう咲、助かったよ」

「ふんっ、おっぱいに挟まれて楽しそうに見えたけどな」

「また胸のこと言ってる」

「ハルが巨乳にデレデレしてるの見ると言いたくなるんだよ」

「小さい方が水泳で有利なのに……」

「アタシは競泳選手じゃねーよ! って、あれ?」


 咲が困った顔をしてキョロキョロしている。


「どうしたの?」

「あれ? 無いっ! ヤバい! 水着流されちゃったみたい」

「ははっ、そんな、オヤクソク展開にしなくても」

「冗談じぇねえって! マジだから」


 咲が胸を両手で隠して真っ赤な顔をしている。

 困り顔がとても可愛い。


「えっと、すぐに水着を探さないと!」

「ま、待て。アタシを置いてくな」

「でも、すぐ探さないと流されちゃうかも」

「一緒に探すよ。ハルは見えないようにくっついてて」


 そう言うと、咲は春近の背中にくっついた。


「ちょっと……このままでいさせて……」

「か、可愛い……」

「ううっ、急にそういうこと言うな。テレるだろ♡」

「やっぱり可愛い」

「ばかっ♡」


 咲は春近の背中に顔を埋めた。


「よし、咲の裸は誰にも見せないぜっ! すぐ見つけてやるから待ってろよ」


 恥ずかしがる咲に、良いところを見せようと意気込む春近。

 水着を買いに行った時に妄想した通りの展開になってしまうのだが、まるで妄想を具現化する能力スキルでも持っているのかと言いたくなるほどだ。

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