第180話 グラビティバレット
午後から授業に出た春近だが、午前中の授業をサボったことで周囲から色々ツッコまれてしまう。
クラスメイトの皆も、どうせハーレム王のことだから校内でエッチなコトでもしていたんだろという認識だ。
もう全てその通りなので反論もできないのだが。
少しだけ反論をするのなら、蒸し暑いロッカーの中で汗やら何やらでビチョビチョになってしまい、そのまま教室に戻れなかったという理由もある。
春近はルリに説教されていた。
「まったくハルったら、もうっ! 目を離すとすぐエッチなコトしちゃうんだから。ダメだよ」
「ルリ……すぐエッチなことをするのはルリな気がするけど、今回の件は何も反論できないぜ……」
最近は特に容姿や雰囲気が益々エッチで色っぽくなったルリに密着され、深い仲になっている春近でさえドギマギしている。
元からサキュバスのような容姿をしていたルリだったが、心もカラダも満たされてからは更に妖艶で色気を増し、街を歩けばすれ違う男たちが皆前屈みになってしまう程だ。
今も、クラスの男子がルリの色香に刺激され、もう何か色々とヤバい感じにされてしまっていた。
性欲旺盛な年頃の男子には、ルリはエロ過ぎて目の毒なのだ。
『くうぅぅ~っ! 酒吞さん……くっそエロい! もうあれが爆発しちまいそうだぜっ!』
『ダメだっ! 酒吞さんがエッロ過ぎて我慢できねぇ! くそっ! 土御門のヤツめ! 羨ましい!』
『酒吞さんって、前は雰囲気が怖くて近寄りがたかったのに、最近はエロエロ過ぎてもう怖いのとかどうでもいい。はあっ……少しで良いからおっぱい触りてぇ……』
『小さなアリスちゃんが好みのボクでも、酒吞さんを見ていると変な気分になっちゃうんだな……。やっぱりおっぱいは小さいのも大きいのも平等なんだな』
今も知らず知らずの内にクラスの男子共に妄想エロネタを提供してしまい、今夜のおかずにされてしまっているのだが、勿論ルリも春近もそんなことは知らなかった。
クラスの男子たちに大好きな彼女がエロい目で見られてオカズにされているなんて春近が知ったら、ブチギレるのは間違いないだろう。ただ、こればかりは見ない訳にも妄想を禁止する訳にもいかずどうしようもなかった。
「ハルぅ~なんだかエッチな気分になっちゃった。エッチしよっ! エッチ!」
「ルリ、さっきと言ってることが正反対だよ……今日は疲れてるからエッチ禁止だよ」
「えええーっ!」
ルリが動く度に、くびれたウエストから丸くパツパツに膨らんだ桃のような尻が揺れ、短いスカートが捲れ上がり白く肉感的で美味しそうな太ももが露出する。今にもパンツが見えそうだ。
男子たちが更に催淫され限界に近くなってしまっていた。
『ぐううっ……エロ過ぎる……もう限界だ……』
『誰か……もう止めてくれ……こんなの拷問だぜ……』
『あああっ、教室内で暴発しちまいそうだぁぁ……』
『もう、推しをアリスちゃんからルリちゃんに変えちゃうんだな……』
相変わらず尻をフリフリしているルリに、咲が気付いて大きなケツを平手で叩いた。
バチンッ!
「ルリ、パンツ見えそうだぞ!」
「痛っ!」
いきなりスパンキングされて、ルリは尻を引っ込める。
「ただでさえルリのケツがエロいのに、そんなにケツ振ったらクラスの男子がガン見すんだろ」
「えっ……」
ルリが後ろを振り向くと、男子数人が
自分のパンチラを見ようとしていた男子に向け、ルリが少し怒ったような口調で呟いた。
「エッチ!」
「「「「ぐっはぁぁぁーっ!」」」」
もう何が何やら分からないが、ルリの一言で男子数人は限界突破してトイレまで駆けて行った。
パンチラを見ようとしていたのは悪いことなのだが、無意識で呪力も使わずに催淫しまくっているルリにも原因があるので少し可哀想でもある。
「あ、あいつら……ご愁傷様……。しかし、オレの彼女なのに……ルリ、エロ過ぎるぜ……」
春近が呟く。
彼女をエロい目で見られるのは嫌なのだが、誰が見てもエロいのはエロいのだから仕方ない気もするが。
「しかし……本当に……」
春近の視線が咲にバレた。
「ああーっ! ハルもルリをガン見してんじゃねーか!」
「ぐわっ、速攻でバレてしまった」
「もうっ、ルリばっかじゃなく、アタシも見ろよ……」
「咲、そういうのは、また今度エッチの時に……」
「そっ、それは……ダメっ……見んなよ……」
「どっちなの?」
「どっちもだ!」
女心は複雑だった。
「ハルぅ~私のは見ても良いよ~」
ルリが、おっぱいを強調して密着する。
「やっぱり今日はエッチ禁止なので」
「「えええええぇーーっ!!」」
エッチ禁止でルリと咲がしょんぼりしてしまう。
毎日ラブラブエチエチしたいのだが、春近の彼女が多くて、少し……いやかなり欲求不満気味だ。
次のエッチの時が怖い気もする。
放課後――――
春近は、一人こっそりと駅前に買い物に来ていた。
色々と買い物もあるのだが、実はアレが切れそうなので補充するのが目的だ。
春近としては、まだ学生なので相手のことも真面目に考えて、無責任な行為はできないと思っている。
駅前のドラッグストアに入り、ゴム製品の棚の前でキョロキョロと周囲を見て、誰も知り合いがいないのを確認してから0.02ミリを買い物カゴに入れる。
ふうっ、誰にも見られていないな。
こんなの買ってるの誰かに見られたら、更に噂が広まってしまいそうだからな……
「お盛ん……?」
「うわああああぁぁっ!」
誰も居ないと思ってたのに、後ろから声を掛けられて春近は飛び跳ねる。
周囲を何度も確認したはずだが、瞬時に背後を取られてしまったのだ。
「……春近、驚き過ぎ……」
「えっ、あれっ? 一二三さん」
振り向くと、そこには一二三がちょこんと立っていた。
不思議そうな顔をして買い物カゴを覗き込んでくる。
「……エッチ」
「うわっ、こ、これは……」
マズい……
一二三さんに見られてしまうなんて……
エッチしまくってるとか思われているのだろうか……
グイグイグイグイグイ――――
一二三が体をグイグイ押し付けて密着してくる。
「あれ? 一二三さん?」
「……私も、愛して欲しい……」
「うん、でも今日はちょっと……」
「何故……?」
「えっと……もうやっちゃっているというか何というか……」
「……授業中に? エッチ、スケベ、ヘンタイ、サイテー」
「ううっ……ごめんさない」
いつも無表情なはずの一二三の目がジト目になっている。
春近にだけは表情豊かなのだ。
「うわっ、いつも大人しい一二三さんが怒っていらっしゃるように見える。これは弁解のしようもない……」
買い物が終わり、帰り道を二人で手を繋いで帰る。
一二三は少し不満そうな顔をしながらも、春近にベッタリくっついていた。
「一二三さん、機嫌直してよ」
「……ダメ……」
機嫌が良いのか悪いのかよく分からない感じに歩いているところに、突然スピードを出して走って来たトラックの急ブレーキの音が鳴り響いた。
キイィィィィィィイイイイイイイイィ!!
「一二三さん、危ない!」
自分たちの所へ向かって突っ込んで来るトラックに、春近は瞬時に一二三を守るように覆いかぶさり横に飛んだ。
まるでスローモーションのように動く時間の中で、一二三はトラックが急ハンドルを切って向きを変え反対側の歩道に突っ込みそうになるのを確認する。
大天狗の能力を持つ一二三には、恐るべき身体能力が有り瞬時に様々な判断が可能なのだ。
このままでは反対側にいる歩行者が轢かれてしまう。
「大天狗
春近に抱きしめられ横に飛ばされながら、一二三が腕をトラックに向けて突き出す。するとトラックの正面付近に黒い球体が一瞬だけ現れ、『ズドンッ!』という音と共に急停車し道路とトラック下部が壊れて止まった。
それは、ほんの一瞬の出来事で、周囲の誰もが何が起きたのかさえ分からなかった。
トラック前部が壊れたが、歩行者もドライバーも無事で事故も防げたのだから、危険な運転をしたドライバーには感謝してもらっても良いくらいだろう。
ズザァァァー
「痛い……」
春近が一二三を守ろうと突き飛ばしたのだが、結果的にトラックがコチラに来なかったので、突き飛ばされた一二三が肘を擦りむいてしまっただけだった。
「ああっ、ごめん! そんなつもりじゃなかったのに」
「……分かってる。私を守ろうとした……嬉しい」
「う、うん……でも、怪我しちゃってる」
「…………なら、春近の部屋で手当てして欲しい……」
制服の汚れを払い落としながら立ち上がり、二人は学園へと向かって商店街を歩いて行く。
少しの期待と緊張を抱えながら。
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