第172話 予期せぬくっころ
外は雨が降り続き時折風が窓をガタガタと揺らし、部屋の中では春近と杏子の二人だけの時間が流れている。
鈴鹿杏子――――
緑がかった髪を後ろで纏めメガネをかけている。
アニメや漫画やゲームが好きな、いわゆるオタクな女性で歴女の傾向もある。
見た目が派手で性格が過激な女性が多い春近の彼女の中では珍しく、大人しく物静かで落ち着いた性格をしている。(たまに変なスイッチが入ることもあるが……)
最近ではオシャレなオタク女性が多い中、一昔前のオタクのような地味でファッションには無頓着な感じだ。
着飾ったり自己顕示欲を満たすよりも、趣味や推しキャラに金を使った方が有意義だと思っているのかもしれない。
そんな彼女が、人生初の大舞台に立とうとしていた。
『やっべぇぇぇ! パンツがヨレヨレで穴が開いてるかもしれねぇ~!』
杏子が心の叫びを上げた。
あああ! 今日の私のパンツ、なんか適当に使い古したヨレヨレパンツだった気がする……
良い感じになって脱がされた時に、『うわっ、萎えるわー』とか『何か臭そう』とか思われたらどうしよう……
いや待って、ちょっと変態な御主人様のことだから、『使用済みヨレヨレパンツゲットだぜっ! くんかくんか!』とかなるかもしれない……
いや、ないわー!
そりゃ、ちょっとは期待していたけど、こんな急展開になるなんて……
でも、普段から制服かジャージばかりで、今更オシャレとかもないのですが……
ジャージの下からギャップのあるエッチなランジェリーというのも良いかも……
だがしかし!
ここは、使用済みヨレヨレパンツが好きな変態御主人様説で突き進むしかないのでありますか!
杏子は、ヨレヨレパンツで突き進む結論に達した――――
『しっ、しかし、問題はまだ有るのであります!』
偶然ベッドの下で発見してしまったエッチな本……
どぎついガチな触手モノだったけど……
気が強そうで凛々しいけど後ろが弱そうな女騎士が、ヌメヌメとした触手に前から後ろから……
もしかしてアレを私に……
いや、正直凄く興味があるけど、最初は普通のが良いような……
ふっ、ふひっ!
しかし、くっころ……これは良いものでありますな!
気丈でプライドの高い女騎士が、容赦のない鬼畜攻めで前も後ろも徹底的に凌辱され、『あっ、ああっ! そ、そんなっ、くうっ……た、たとえどんな辱めを受けようとも……っ、心までは屈しは……あっ、うぐ~っ……』と精も根も尽き果てるまで攻め続けられ……ぐへっ。
それでも耐え続ける女騎士が、我慢の限界に達し
それでも攻め続けられ……最後には極限の快楽に身も心も陥落し……恥ずかしく惨めなオネダリを……
い、いや! ここは最後まで陥落せず、体は快楽にのたうち震えながらも心だけは抵抗し続ける展開の方が……
ふっ、ふふっ、ふひひっ……
「ふぅぉぉぉぉぉぉぉぉ! みなぎってキタァァァァァ!」
「うわぁぁぁっ!」
突然、杏子が絶叫し春近がビックリして後ろに転がった。
「ちょっと、杏子! ビックリさせないでよ」
「うわっ、ごめんなさい。つい、私の中の心のオティンティンがみなぎってしまって」
「いったい何の妄想だよ」
「春近君が悪いんですよ、こんなエッチな本を見せるから」
「ああっ、それは……」
杏子がベッドの下に隠したはずのエッチな本を掲げた。
これには春近も動揺する。
しまった……
やっぱり見られていたか。
さっきガサゴソしていたみたいだから気になってたんだよな。
でも、落ち着けオレ!
見つかったのが杏子なら……たぶん大丈夫だ!
「さすが春近君、良い趣味してますねっ!」
予想通りの反応を杏子がする。
「ふうっ、杏子なら分かってくれると思ってたよ」
「ふひひっ、普通なら女騎士がオークに捕まる所を、より変態的な触手族に捕まってしまうなんて。そして
「それそれ! やっぱり我慢顔は大事だよね!」
二人は考えていることもそっくりだった。
「もうっ、御主人様ってば、見た目は人畜無害で優しそうなのに、中身はドスケベでドヘンタイなんですよね」
「それ、褒められてるの……」
「今から私に、こんなドヘンタイプレイをしようとしてるんですよね!」
「えっと……」
二人同時にドヘンタイな妄想が膨らんでしまい、変な空気になってしまう。
春近は複雑な心境だ。
杏子……やっぱり、こういう激しい変態的なのが好きなのかな……?
でも、初めては一生に一度だし、普通にやった方が良いと思うけど……
杏子も軽はずみにドヘンタイな発言をしてしまい後悔していた。
ししししまったぁぁぁ!
調子に乗ってドヘンタイプレイを要望してしまいましたが、私の性知識は二次元ばかりで実際の経験値は低レベルでした……
初めてで『くっころ展開』なんて、さすがにキツすぎるような……
「杏子」
「はっ、はひぃーっ!」
「最初は、ふ、普通で……良いかな?」
「は、はい……春近君におまかせしますよ」
「そ、そうだよね。良かった」
「で、ですよね。うっわ~っ、良かった……さすがにガチな鬼畜攻めだったら……」
春近の一言でガチガチに緊張していた杏子の体が楽になった。
口では過激なことを言いながらも、体は正直なのだ。
「杏子……」
「んっ、ちゅっ……」
二人は抱き合って優しいキスをする。
キスには性格が出るのだろうか……
優しく労わるような彼の気持ちが伝わってくる気がすると杏子は思った。
「これは……ぬっ、ぬれ……じゅんじゅわー!」
「杏子、そういう擬音は口で言わなくても……」
「つ、つい……あっ、メガネ外します」
「いっ、いや、メガネはそのままの方が……」
「ふえっ……春近君、けっこうマニアですね」
「杏子のメガネ姿が似合っていて好きなんだよ」
「そ、そ、それは光栄であります!」
春近が杏子の服を脱がせて行くと、何年も穿き古してヨレヨレになったパンツが出てきた。
それは所々擦り切れて生地が薄くなっていたり糸がほつれていたりと、長年にわたり杏子の汗を吸い続けたパンツに見えた。
くっ、杏子……
これは意図的じゃなく無意識なのか……
尽くオレの好みを突いてくるぜ!
実は、春近はメガネ女子が大好きで、ポニテとうなじが大好きで、セクシーランジェリーも好きだが使い込まれて生地が薄くなった柔らかそうなパンツも好きなのだ。
全く洒落っ気も無く無意識なのに、勝手に春近のフェチ心を攻撃している杏子なのだ。
しかし、当の杏子は全く違う感想を抱いていた。
ううっ、見られてる……ガン見されてる……私の薄汚れたヨレヨレパンツを……
ぐはっぁぁ~っ! 春近殿! これは恥ずかし過ぎるであります!
ビリビリビリっ!
「あっ……」
ヨレヨレパンツを脱がそうとしたところ、擦り切れて薄くなった生地が破れてお尻が丸見えになってしまう。
「あの……ごめん……」
「くっ、殺せ……!」
杏子の羞恥心が限界になって、予期せぬ『くっころ展開』になってしまった。
そこからは、ちょっとMっ気がある杏子の感度が急上昇して、何とかスムーズに最後まで行ったのだった――――
――――――――
二人はベッドで添い寝しながら、お互いの体を触ったりとイチャイチャしながら余韻に浸っていた。
「ぷっ、ははっ……」
「もうっ! 春近君、それは忘れて下さいよ」
「だって、ビリビリってケツ丸出しに」
「誰のせいですかっ!」
「でも、面白くて。ぷぷっ、はははっ!」
春近の笑いが止まらない。
「でも、周りが皆可愛くて魅力的な子ばかりだから、私の番が回って来るのか心配だったんですよ」
「えっ、杏子は可愛いじゃん」
「か、かわっ、可愛いだとっ! そんなはずは……」
「凄く可愛いのに。メガネキャラだし、ポニテだし、オタ話とか気が合って楽しいし。皆、人のことは羨ましいと思うのに、自分の魅力には気が付いていないんだね」
「むむむっ、何かよく分からないけど、春近君の好みには引っ掛かってるみたいですね。それにしても、春近君! そんなに私の好感度を上げまくって、どうなっても知りませんよ! まったく、とんでもないチートスケコマシ男ですよね!」
チュッ!
「ああーっ! そうやってキスで誤魔化そうとしてる! もうっ、これ以上春近君のことを大好きにさせちゃうつもりですか?」
「俺も杏子のこと、大好きだよ」
「ふへへっ、ふひっ、これは……良いものでありますな……」
完全に二人だけの世界に浸ってチュッチュチュッチュしまくる。
コンコン! ガチャ!
「春近、入るわよ! この渚様がイチャイチャしに来てあげたわよ! って、あっ…………」
「「あっ……」」
いつものように突然渚が突撃してきてベッドの春近たちと目が合った。
「……えっと、ごめん……悪かったわね」
ガチャ、バタン!
ベッドでチュッチュしている二人を見て、さすがの渚も空気を読んで帰って行った。
ただ、完全にイチャイチャムラムラモードになった渚が更に欲求不満が溜まりそうで、次に会った時が怖そうではある。
「何で俺の彼女は、ノックと同時に入って来る子が多いんだ――――」
後で嫉妬に燃え嫉激しく求めてきそうな渚を想像し、春近はそう呟いた。
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