第66話 キャンプ編Ⅰ 水着回
どこまでも青空が澄み渡り、大きな入道雲とのコントラストが美しい。
吸い込まれそうな深い青に、耳をつんざくようなセミの大合唱。熱気と喧騒の真っ只中にいると、何か吸い込まれそうな感覚になる。
「暑いな……」
土御門春近は
入学して初めての夏休み、皆でキャンプに行こうという話の通り、今日が駅前に集合する日になったわけだ。
先程から、やたらと周囲の視線を感じる。それもそのはず、ルリと咲が両側から抱きつくように腕を絡めているからだ。
妖艶な色気を出しまくっているルリと、活発そうに見えて可愛い咲に抱きつかれ、道行く人々から『なんだコイツら、イチャイチャしやがって!』みたいな視線を向けられている。
あの遊園地デートの後の告白以来、もう春近はルリを甘やかしまくっていた。恥ずかしがって避けていると、またルリを不安にさせるかもしれないからだ。
「ハルぅ~」
甘えてくるルリの頭をナデナデしてあげる。
「はい、ルリ、なでなでー」
「んっ……気持ちいい~」
「ハル、アタシもして欲しいし……」
当然、咲の頭もナデナデする。
「ほら、咲も、なでなでー」
「えへへぇ」
こんな調子で周囲から刺さる男共の殺意を感じているのだ。
「旦那様、わたくしには……?」
そこに栞子も参加しようとする。
「あの、両手が塞がっていて……」
「そ、そうですか……」
栞子が凹んだ。
「はるっち~ おまたせー」
そこに元気な声が聞こえた。あいを先頭にゾロゾロとメンバーが勢揃いだ。
「じゃあ、全員揃ったから出発しよう」
春近は立ち上がる。
「ん……」
アリスが立ち止まった。
「アリス、どうかした?」
「いや、気のせいです」
そこに杏子が早口で一気にしゃべり出した。
「もしかして、時空の歪みが発生して平行世界へ転移でありますか!? 私たちは異世界で冒険し剣と魔法で戦い抜く。そして、『オレ、キャンプから帰って来たら杏子と結婚するんだ!』と言う春近」
「あ、あの、鈴鹿さん、死亡フラグみたいの立てないで。てか杏子って……」
突然名前呼びされて照れる春近だ。
「ふふふっ、たまにはこういうのも」
杏子の冗談とも本気ともとれる発言に、デートの時に告白されたことを思い出した春近がテレてしまう。
今の冗談のような発言も、少し意味深な感じがするのだ。
「ほら、ハル行くよ」
咲が春近の手を引っ張って行く。
二人が楽しそうにしていたから嫉妬しているのかもしれない。
電車に揺られてから、バスに乗り換えキャンプ場まで移動した。
もちろん、ルリや渚にエチエチ攻撃されたが、もういつもの事なので省略しておこう。
バス停を降りたところが、すぐキャンプ場になっている。
キャンプ初心者である春近たちは、ロッジが借りられ設備も整っているこの場所に決めたのだった。
「うっ、足腰が……」
皆のスキンシップが激しく、若干ふらついている春近をアリスと杏子が支える。
「大丈夫ですか?」
「しっかししろです」
「あ、ありがとう」
激しいスキンシップも良いが、こう
「大人しい女子だと……?」
いや、まてよ……あの大人しい忍さんも凄いエッチ女子だったし、もしかしたらアリス達も……?
春近は二人に疑惑の目を向ける――――
「なに、変な顔してジロジロ見てるのですか。お仕置きするですよ!」
ポカポカポカ――
「うん、アリスは小さいし腕力も弱いから安全そうだな」
春近はポカポカ叩いているアリスの腕を取ると、子供をあやすみたいに持ち上げてやった。
「ほら、高い高い~」
「こら、やめるのです!」
普段は強気女子に攻められてばかりなので、小柄なアリスにはついついイタズラしたくなってしまう春近だった。
受付を済ませ、一通り道具も借りて完璧だ。後は遊ぶだけである。
「ハル、一緒に泳ご」
「ん?」
声をかけられ春近が振り向くと、ルリがいつの間にか水着に着替えていた。
「なにっ! 遂に水着回か!」
「何だよ、水着回って?」
春近のオタクっぽい発言に咲がツッコむが、その向こうで杏子が『分かってますよ』という顔をしている。
そして、春近は水着姿の女子に囲まれて本当にハーレム状態になってしまう。全員が着替え終わり春近の周りに集まったのだ。
普段の制服姿でさえ魅力的な彼女たちだ。それが水着姿になっている。見るなという方が無理な話だろう。
春近が全員の水着姿に、心の中で感想を述べてしまう。
ルリは、赤いビキニが似合ってる。でも、巨乳がはみ出そうな程になっていて刺激的すぎるぞ。
制服の上からでも凄いけど改めて水着姿を見ると、大きく張りの良い胸からキュッとくびれたウエスト、そしてプリッと上がったヒップへのラインが素晴らしい。
咲は、控えめな胸に可愛いワンピースが似合っている。
恥ずかしそうにしている所が実にイイネ! 恥じらい大事!
「ハルのエッチ! じろじろ見過ぎだよ」
ガン見しているのがバレてルリが文句を言う。ただ、見せ続けてくれているのだが。
「おい、アタシの方は見んな! いや……ホントは見て欲しいけど……(ボソッ)」
胸を隠した咲が恥ずかしそうにしている。良いリアクションである。
渚様は、完璧なプロポーションに大人っぽい黒ビキニが似合っているな。
もう、今すぐその美しい足で踏んで……いや、オレは何を言おうとしていたんだ……。
あいちゃんは、艶やかな褐色の肌がムチムチしていてエロすぎる。
「春近! あたしを観なさい! むしろ、あたしだけ観なさい!」
堂々と見せつける渚が言い放つ。
「はるっちぃ~おっぱい触る?」
あいはそう言って胸を突き出した。
さっき恥じらいが大事と言ったばかりの春近だが、渚のように堂々と見せつけてくるのも、あいみたいに全く恥じらいが無いのも良いと思ってしまった。ちょっと節操がない。
忍さんは上にパーカーを羽織っていて水着が見えないぞ。
恥ずかしがっているのかな? コスプレのビキニアーマーは最高だったのに。
アリスは……可愛いな。
「今、小っちゃいとか子供っぽいとか失礼なことを思いましたね!」
春近の視線に気付いたアリスが言う。
また心を読まれた……いた、読んでるワケではないのだけど、小さいというワードに敏感なだけか。
栞子さんは、意外とナイスバディなんだよな。
着やせするタイプなのだろうか? 脱ぐと凄いんです! あの変なバトルスーツを着た時は、色々と放送禁止っぽい感じになってたし。
鈴鹿さんは……何でスクール水着なんだ?
「鈴鹿さん……それ……」
春近は、ツッコまずにはいられなかった。
「ち、違います! 急だったので水着を買ってなかっただけです。土御門君のマニアックな趣味に合わせてるわけではないですよ」
「えぇぇ、ハル……スクール水着が好きだったの?」
「違うから」
ルリが本気にしてしまう。
ともあれ色とりどりの水着姿の美女に囲まれ、春近は呟いてしまう。
「うーん、
とても良い映像を脳内に焼き付けて、春近はご満悦だ。
ビシャビシャビシャ!
「エロい目で見ていたからお仕置きです」
川に入っているアリスが水をかけてきた。
「それそれ」
「みんなでやっちゃえ!」
バシャバシャバシャ!
他の子まで一緒に水をかけ始めた。
「うわっ、やめれ」
八人分の水を浴びて凄い事になる。
「ちょ、待てっ、全員で攻撃はズルいぞ」
こうして水遊びに移行し、全員で水をかけあうという夏っぽいことになる。
川遊びを終えた春近は、着替えようとロッジに向かう。そこにルリが付いてきて抱きついた。
「ハル、ぎゅーっ!」
「ルリ、どうしたの?」
「ハル成分補給だよ。ハルの水着姿を見ていたら体が火照ってきちゃった」
「あっ、その」
水着姿のルリが抱きつき、春近の胸の鼓動が早まる。
うっ、オレもルリの水着姿で火照りまくりだよ。水着なので、肌と肌が直に触れ合って……。
「んんっ、ハル……ちゅっ、ちゅっ」
「ルリ……」
肌と肌が溶け合うくらいに密着したまま熱いキスをする。何度かくちびるを合わせてから春近が離れた。
「そろそろ、夕飯の準備をしないと……」
「ん、うん、分かった……。でも、ハル……あんまり焦らさないでよ」
あの告白以来、ルリの求愛は激しくなるばかりだが、二人はまだ最後の一線を越えていなかった。
必死に耐える春近だが、いつまでもつのか分からない状態だ。
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