第32話 GW編Ⅱ 部屋決め

 旅館にチェックインしたが、いきなり部屋割りで大モメになった。

 3部屋取ってあるのだが、誰が春近と同室になるかで決まらなくなってしまったのだ。


 ルリ案:部屋1酒吞瑠璃と茨木咲と土御門春近、部屋2鈴鹿杏子と源頼光栞子、部屋3羅刹あいと大嶽渚

「私と咲ちゃんとハルの三人で、朝までお楽しみだよね」

 速攻で却下された……


 栞子案:部屋1土御門春近と源頼光栞子、部屋2酒吞瑠璃と茨木咲と鈴鹿杏子、部屋3羅刹あいと大嶽渚

「やはり旦那様とわたくしは夫婦ですから!」

 速攻で却下された……


 あい案:部屋1羅刹あいと大嶽渚と土御門春近、部屋2酒吞瑠璃と茨木咲、部屋3鈴鹿杏子と源頼光栞子

「はるっちと一緒がイイ!」

 速攻で却下された……


「いつまで経っても決まらないじゃないの!」

 大嶽渚がイライラマックスだ。


「じゃあ、この中からくじ引きで良いだろ」

 咲がくじ引きを主張する。

 

「ちょっと待て、この三案じゃなく、オレが一人部屋で残りを三人ずつで良いでしょ」


 どれを選んでも危険な感じがする三案の中から決まりそうになり、慌てて春近がマトモな新案を出す。


 当然、速攻で却下された…………



 結局、最初の三案からクジ引きで決める事になる。全員が固唾かたずをのんで見守るなか、春近が作ったくじを代表の三人が引くことになった。

 

 そして――

「やったぁぁぁぁぁー!」

 見事ルリが当たりを引き大喜びだ。


「そんな……わたくし達の初夜が……」

 栞子が落ち込み。

「えぇぇー はるっちと一緒じゃないといやー!」

 あいは駄々をこねる。



 春近は、頭をフル回転し先を読む。


 どうしよう……

 でもまてよ……

 栞子さんの部屋だと、学生で妊娠出産という事になりかねない……

 あいちゃんの部屋だと、大嶽さんが調教してきそうだし……

 ルリと咲の部屋が、一番安全かもしれないぞ。



 それぞれの部屋に移動する春近たち。

 女子と同じ部屋にお泊りなんて初めての春近は緊張でガチガチだ。


 ううっ、一晩女子と同室だと――

 他の女子と比べたら安全な気もするし――

「でも、ルリと咲の部屋で良かったよ」


 つい、途中から感想が口に出てしまう春近。


「ちょ、おまっ、アタシらを狙ってるって事なのか……」

 咲が顔を真っ赤にして慌てだす。


「今夜は朝までお楽しみだねー」

「うううーっ!」

 ルリの意味深な言葉で、咲の顔が更に赤くなって手で顔を隠してしまう。


「お、オレもヤバい……」

 咲がそんな反応をすると、オレまで恥ずかしくなって赤くなってしまうだろぉぉーっ!

 ヤバい……凄く意識してしまう……

 今夜は、いったいどうなってしまうんだぁぁぁ――――




 夕食も終わり、皆で温泉に行く事になる。皆で浴衣に着替えて出発だ。



「あれ、渚っちどうしたの?」


 そんな中、一人部屋に戻ろうとする渚に、不思議に思ったあいが声をかけた。


「ちょっと忘れ物したから、先に行ってて」

「うんっ」


 ――――――――






「ふぅううっ、男湯はオレ一人か……」


 湯船に浸かった春近が伸びをする。自分以外誰もおらず、広々とした湯舟を独占だ。


「何とか上手く行っているみたいで良かった。これで大嶽さんが、もう少しルリ達と打ち解けてくれたら……」



 そんな独り言をしていると、何やら更衣室側から音がするのに気付く。



「ん? 誰か他のお客さんかな?」




 ガラガラガラ――――

 入り口の扉が開き、誰か他の客が入って来たようだ。

 湯気で見えないが……


 ヒタ、ヒタ、ヒタ――――

 その人物は、こちらに向かって歩いてくる。


 ヒタ、ヒタ、ヒタ――――


 春近が目を凝らす。

「んっ? えっ……うわっあぁぁ! でたっ!」


 湯気の中から現れたのは大嶽渚だった。

 燦然さんぜんと輝く金髪を揺らし、美しい肢体したいを惜しげもなく見せつけ、やたら威圧感のある目で春近を見つめる。


「ちょっと……何してるんですか! ここ、男湯ですよ!」


「うるさい! やっとチャンスが回って来たのよ! 大人しくあたしの奴隷になりなさい!」



 土御門春近は、最大のピンチを迎えていた――――――――

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