第18話 ラブラブちゅっちゅ
春近は夢の中にいる――――
何だか分からないけど、自分の上に重い“何か”が乗っていて圧し潰されそうだ。
――――苦しい……
上に乗っている“何か”は柔らかくて良い匂いがする。
――――でも苦しい……
意識が覚醒してきて夢の世界から現実へと戻ってきた――――
ぷに――ぷに――
手のひらで何か柔らかいものを掴む――――
ぷに――ぷに――
「あんっ」
「えっ……」
現実に戻った春近が見たのは、自分の上に乗ったルリだった。
「えっ……何で……」
というか、手のひらでつかんだのは、ルリの大きくて柔らかいところだった。
もみもみもみもみ…………
「うわぁぁぁぁぁ！ な、何で上に乗ってるの！？」
「来ちゃった」
「えぇぇ……来ちゃったって、ここ男子寮……」
「だって～ もう、私を止める者は誰もいないし～」
冗談ではなく、学園最強の戦士である四天王が壊滅してしまった今、本当にルリを止められる者は居ないのかもしれない。
「あの……ちょっと降りてもらえないでしょうか……？」
「いや！」
「えぇぇ……」
ただそこに居るだけで魅惑的なルリである。
そのルリが同じベッドの中で上に乗られていれば、ただで済むわけがない。
春近の下半身に血流が集まり大変な事になっている。
「ハルぅ～しゅきしゅき～むふぅ～いい匂い～ぺろぺろ～」
「うわぁぁぁあぁぁあぁぁ」
ルリは首筋にキスをしたりペロペロ舐めたりしている。
どうやら、昨日の一件で春近に対する好感度が急上昇してしまい、ルリの中に溜まりに溜まった愛情に対する渇望のようなものが爆発してしまったようだ。
しかし、いきなりこれはぶっ飛び過ぎが気もするが。
ルリは、ふと何かに気付き――――
「ハル、おなかに何か当たってる」
「うおぉぉぉぉぉ！ もう限界だぁぁぁぁぁ――――」
何とか頼み込んで開放してもらったが、すでに朝から疲れてフラフラになってしまった……
教室に向かう時も、ルリは抱きついたままだ。
そして、途中で合流した咲が、青い顔をして愕然としている。
「何で……こんな……事に……？」
咲がロボットのように、たどたどしい動きで訊ねてた。
「昨日……色々あって……」
ルリに抱きつかれながらも、顔を咲の方に向けて答える。
「はぁ？ 色々じゃわかんねぇよ！」
ルリは一旦春近から離れて、咲の方に寄り耳打ちをした。
「――咲ちゃん“も”ハルが好きなんでしょ？」
「はぁぁ！」
咲は大声を出してから、慌てて慌てて口をつぐみ小声になる。
「――何いってんだよ……そんなわけ」
「見てれば分かるよ」
「うぅ……」
咲は顔を真っ赤にする――――
「咲ちゃん！ 大事なものはね、失ってからでは一生後悔するんだよ」
「……」
「私はハルが好き！ 咲ちゃんもハルが好き！ 私は咲ちゃんも好き！ だったら、三人で付き合えば解決だよ！」
何が解決なのかわからないが、ルリは特殊な恋愛観を持っているようだ――――
――――教室
栞子が、昨日貸した上着を返しに来て、事の顛末の説明と謝罪をしている――――
「つまり…… 陰陽庁は昨日の大失態により……」
「はう～ん ハル～ しゅきしゅきだいしゅきぃ～」
「長官……つまり私の祖父は辞職に追い込まれ……」
「はぁ～ ぺろぺろ～ ちゅっちゅ～」
「その……組織は再編される事となり……急進派は力を失い……」
「はぁはぁ……ハルぅ～もう我慢できないよ～」
栞子が説明している間も、ルリは椅子に座った春近の膝の上に乗り両足を絡めて首筋をペロペロしている。
目の前でイチャイチャを見せつけられている栞子は、心底嫌そうな表情を浮かべていた。
「――我慢できないのはこっちです……」
死んだ魚のような目をした栞子が本音を漏らす。
「何が言いたいかというと、次の長官になると噂されているのは土御門晴雪さんです。そう、あなたの御祖父様なのですよ」
「えぇぇぇぇぇぇぇ――――」
物語は急転直下を迎える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます