陰陽学園の鬼 ～強くて愛が激しい美少女たちを助けたら全員から迫られてラブラブになったオレ。そして運命の契りで鬼神の根源を取り込み十二天将を従える王になる物語～

第13話 作戦開始

　春近が寮の浴場を出て自室に戻るため廊下を歩いていると、何者かに手を引かれ無人となっている空き部屋に押し込まれる。

　ガバッ！

「えっ！　えっ！」

　春近は、突然後ろから羽交い絞めで口を塞がれて、何が起きたのかビックリして逃げ出そうとする。だが、背中に当たる柔らかい感触と何やら良い匂いがして動きが止まってしまった。

「しっ！　静かにして下さい」

「あっ、源さん」

　手を引いたのは源頼光栞子だった。

「なんですか、突然……」

「あなたに伝えておきたい事があって」

「ここ男子寮ですよ……」

　栞子は男子寮に忍び込み誰にも見つからずに春近の所まで来たのだった。

　――――凄い隠密能力だ……

「教室では監視の目があって話せないので」

　――――監視って……ルリの事を言っているのかな？　確かにルリと源さんの間には、何か余所余所しい空気が漂っている。

「実は、本庁から酒吞瑠璃捕縛の命令が出ました」

「えっ！　そんな……　なんとか争いにならないように、源さんと話し合おうとしていたところなんですよ」

「わたくし達は、命令に背く事はできません。それに、形式上ではあなたも我々の仲間になっているのですよ」

「それは……」

　今更ながら板挟みになっていると春近は思った。

「作戦は明日の放課後です。あなたが来ても力不足です。作戦は我々だけで行いますので、あなたは危険なので近づかないように。今日は、それを伝えに来ました」

　――――そんな急に……

「酒吞瑠璃は、非常に強い呪力を持った鬼です。危険です」

「そんな、たとえ強い力を持っていたとしても、ルリは普通の女の子です！」

「彼女の能力には、人の認識を操作して操る呪力が有るとされています。もしかしたら、あなたも呪力に掛けられているのかも？」

「そんな！　ルリは人を傷つけるような事はしない！」

　春近は確信していた。

　自分の知るルリは、優しく穏やかな少女だ。

「陰陽庁にも急進派と穏健派があり、今は急進派が多数を握っています。急に体制が流動化でもして穏健派が多数にならない限り、今の方向性は変わらないでしょうね……」

　栞子は自問するようにつぶやく……

　栞子は話は終わったと歩きかけてから、ふと振り向き――――　

「そういえば……」

「土御門さん、あなたは鬼の転生者に懐かれているようですね。それも一人ではなく何人も」

　教室で戯れている所を見ていたのだろう。

「もしかしたら……あなたには鬼を鎮めるような不思議な力が有るのかもしれませんね」

　鬼を鎮める力――――

　もし、そんな力があったなら――――

　この争いに終止符を打つ事ができるのかもしれない――――

　斯くして、作戦は開始された。

　まだ春は始まったばかりだというのに、光さえも飲み込むブラックホールのような濃密さで日々が過ぎてゆく。

　この時の春近は知らなかった。

　本当に大変なのは、むしろこの争いが終わった後だという事に――――