第102話
光の玉が完全に抜け出た時、広也は体がずっしりと重くなったのを感じた。疲労で全身がだるくなった時に似た感覚だった。広隆も同じなのか、わずかに足元をふらつかせたのが見えた。
二人の胸から抜け出た二つの白い光の玉は、くるくると回りながら高く舞い上がり、空中で勢いよく衝突した。
その途端、ぶつかって一つになった白い玉はまばゆい光を放ち始め、辺りを真っ白に染め上げた。広也と広隆はまぶしさに目をつぶった。瞼を通しても強い閃光が目を焼くようで、広也は手のひらで目を覆った。
どれほどそうしていたのか、瞼を刺す光の気配がなくなったのを感じて、広也と広隆は恐る恐る目を開けた。
夜のような色で覆われていたはずの空間が、真っ白に変わっていた。
どこまでも続く白い世界。あの巨人の腹の中と同じだと広也は思った。
そして、二人の目の前には二メートルほどの大きさの丸い岩があった。
真っ白な世界の中心にどっしりと置かれたそれは、ただの岩にしか見えないのに、広也と広隆は直感した。
「常磐堅磐……」
これこそが、器なのだ。広也は胸を押さえた。
(ずっと、ここにあったんだ。僕らがずっと持っていたんだ)
トハノスメラミコトを探すのがときわとかきわでなければいけなかった理由は、トハノスメラミコトをよみがえらせることが出来るのがときわとかきわだけだったからだ。岩であるときわとかきわを動かすために呼ばれた魂が自分達だった。
その時、広也と広隆の背後でくすくすと笑い声がはじけた。振り返った二人の後ろに、赤いちゃんちゃんこを着た子供が立っていた。いつもの子供らしからぬ表情ではなく、喜色を抑えきれぬ様子で満面の笑顔を浮かべていた。
くすくすと笑いながら、子供は地面を蹴ってこちらへ走り寄ってきた。二人の間を通り抜けて、まっすぐに岩に向かって走っていく。そして、両腕を広げて岩に抱きついた——ように見えた。
広隆があっと声をあげた。
抱きついた勢いのまま、子供の体はずぶずぶと岩の中に沈んでいった。
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