第37話 新しいレシピのために
各工房への弟子入りにJOBが関係しているかどうか、気になったのでガルスに聞いたところ、どうやら各工房に弟子入りするには条件を満たす必要があるようだ。
まあ、それは予想できる範囲なのでいいとして、その条件にJOBが含まれるかどうかは工房によってさまざまだそう。
例えばガルスの工房なら【鍛冶】と【裁縫】のスキルを取得していて、どちらかが2次スキルになっていることが弟子入りの条件。
それと、今私が頭装備として装備しているイヤリングを作ったキリアという住民の工房であれば、【細工】スキルの2次熟練度50%以上らしい。
一応、JOBが条件になっている工房もあるらしいけど、そういった工房は意外と少数派のようだ。
それで、この話を聞いている途中にガルスから、
「嬢ちゃんは【鍛冶】スキルを持っていないだろうからうちの工房へ、弟子入りは無理だぞ? さすがにこの場で取得するという奴は基本的に弟子にはしないからな」
なんて言われたけれど、【鍛冶】スキルは取得しているし、なんなら2次スキルである。だから、条件は満たしているのだよね。
でも、だからと言って弟子入りするつもりはあまりないかなぁ。
……いや、今後の事を考えれば弟子入りはしておいた方が良いかも?
WIKIや掲示板を見る限り生産系のプレイヤーって結構秘匿している情報多いようで、オープンになっているレシピはほぼ基本レシピしかなく、特殊なレシピなどの情報は一切ない。
戦闘系のプレイヤーだと結構スキルの情報とか武器の情報を掲示板に書き込んでいるのは見るのだけど、先行者利益というかその辺の関係で生産者プレイヤーは情報を抱え込んでいるのだと思う。まあ、私も圧縮鞄とかの情報は誰にも教えていないし、これもその内の1つなのだろうね。
まあ、明らかに秘匿していると周囲からのやっかみが多そうなレシピは別として、明らかにお金になるようなレシピを無料公開するようなプレイヤーなんて希少なのだ。
とは言っても、一切居ないというのも不自然な気もするけど。
それで、さっきガルスが言っていた皮・布素材を強化するような薬品のレシピはWIKIで見たことはないし、生産系の掲示板でも見かけたことはない。
今まで誰も知らなかった、なんてことはないだろうから知っていても情報を公開しないで利益を得ているプレイヤーが居るのだと思う。
ただ、あまり強い装備を掲示板で見たことが無いので、もしかしたら本当に見つかっていなかっただけかもしれない。居るとすればどこかのパーティーなりクランのメンバーで、身内の装備を主に作っているプレイヤーだろう。
「話は戻るが、嬢ちゃんが聞きたかった装備の強化方法は特別なもんじゃないが、外部に漏らすようなもんでもない。工房ってものは技術を売りにしている物だからな、安易に技術を漏らすわけにもいかない」
「なるほど」
確かにそうだね。誰にでもできるような状況になれば工房はいらなくなるし、そうなればプレイヤーはともかく住民は職を失うことになるのだ。
もしかして弟子入りの条件に教えたレシピとかを外部に漏らさない、みたいな契約でもあるのかも。WIKIとかに情報が載っていないのもその結果かな。
「だから、コート以外を強化するのであれば、依頼を出して貰わないと駄目だな。もしくは【鍛冶】スキルを取得した上である程度、経験を積んでからもう一度ここに来てくれ」
ふぅむ。強化の方法も知りたいし、やっぱり弟子入りしたいね。
出来れば【錬金】系の工房が良かったけれど、知り合いどころか錬金系の工房持ちの住民は知らないし、聞いたことすらないから無理な話。
まあ、弟子入り自体1つの工房だけしか出来ないわけではないらしいから、なにも問題はないのだけどね。
そして話せるところまで言い切ったガルスは私の反応を待っているのか、こちらをじっと見つめている。
ここで待ってもらっても意味はないし、さっさと話を進めよう。
「これ」
そう言って私は取得スキルが見えるようにステータスウィンドウをガルスの前に提示する。
ステータスウィンドウは住民に見せようとすれば必要な場に限り、見せることが出来るのは大分前に確認済みだ。ただ、どのように見えているのか、本当に見えているのかプレイヤー側からはわからないので、しっかりと見えているのかが心配になる。
「何故これを? んん?」
ガルスの反応から、しっかりと取得しているスキルが確認できていることがわかった。
「いや、いつの間に【鍛冶】スキルも取得しているんだよ。しかも他の生産スキルも、基本7種全て取得とか下手すると器用貧乏一直線になるだろ」
まあ全部とれば器用貧乏にもなるよね。
熟練度を満遍なく上げるとなれば相応の時間もかかる。そうなれば同じくらいのプレイ時間、生産スキルを2~3種取得している他のプレイヤーと比べて熟練度が低くなる。
「問題ない」
「そうか。まあ、1人であれこれやるならメリットはあるしな」
しかし、その辺りはスキルを取得した時から織り込み済みである。
別に沢山スキルを取得したところで熟練度が上げ難くなる訳ではない。単純に上げなければならない量が増えるから時間がかかっているように見えるのだ。
ならどうすればいいかといえば、単純にその分だけ時間をかければいい。そもそも私のプレイ時間は他のプレイヤーと比べても相当多い方だという自覚はある。だからそのプレイ時間を使って熟練度を上げ続ければいいのだ。
まあ、元からそういう感じで熟練度を上げていたからね。プレイスタイルに変更はないです。
そんな訳でガルスに弟子入りを志願することにしました。
「取得しているスキル数についてまだ言いたいことはあるが、人となりに問題もないし、条件は満たしているな」
そう言うとガルスはそこで言葉を区切り一拍間を取り、小さく頷いた。
「いいだろう。今からお嬢…いや、確かNAMEはアユだったか。うむ。アユを俺の弟子として認めよう」
地味に人となりに問題ないとか言われているけど、弟子入りの条件ってスキルとかJOBだけじゃなかったみたいだね。秘匿情報とかあるみたいだし、悪意を持って弟子入り志願してくるプレイヤーを弾くための条件かな。
ともかく弟子入りできてよかったよ。
―――――
第1エリアの街にある工房よりも第2エリアにある工房の方が弟子入りの条件きつめです。
なお、工房が秘匿している情報を故意に流したプレイヤーは一発破門。無意識の物はその後の対応次第。
工房への弟子入り条件も外部に漏らすと叱られます。また、正攻法以外で弟子入り条件を事前に知った場合、条件がきつくなります。
例:ガルスの工房
知らない:【鍛冶】【裁縫】を取得しておりどちらかが2次スキル
知っている:【鍛冶】【裁縫】を取得しておりどちらも2次スキル
なお、弟子入りしますがガルスとの距離感はそれほど変化はないです。それに弟子入りしたからとガルスとの接触回数が必要以上に増えるということはないです。
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