運営裏話・5
※この話はアプデ、特にスキル修正の対応についての裏側になります。
※作中、作業をしながらの会話のため、少々会話がぶつ切り状態です。
―――――
「AIちゃんに任せた修正・アプデ不評」
「当然の結果なんだよなぁ」
「修正内容は問題ないだろうよ。まあ、スキルの調整はこちらのミスではあるが」
「修正後の対応がねぇ」
アップデートの翌日。あの後から頻繁に送られてくるようになった運営への批判メールや苦情、抗議メールなどを捌きながら、モニターに向かって乾いた笑いを向ける。
「所長、これ本当に問題ないのですか? 一部のユーザーから過激なコメントが届いていますが」
「コメントは予想の範囲内だろう。それに上からの指示だしな。不安になるのはわかるが。だがまあ、あいつらの成長に必要な事だというのも理解できる」
そう言って所長はある場所に置かれている周囲よりも大きなモニターを見た。そのモニターはどういうわけか、誰も触っていないにもかかわらず高速でログが流れ続けている。
別にこのモニターはUWWOのプレイを監視しているPCに繋がっている訳ではないし、ウェブに繋がっている訳ではない。むしろ繋がっているのはローカル環境下のコンピュータである。まあ、当然普通の物ではないのだが。
「天秤ちゃんがユーザーからのコメントにガチギレしていてヒートアップしすぎているんですけど、発熱しすぎであれ壊れたりしません?」
「ログが高速で流れていますね。他の子が困惑しているのが見て取れますよ」
「あれくらいで壊れはしないだろ。伊達に開発から8桁と呼ばれていないさ」
8桁と言うのはあのモニターに映像を写しているコンピュータのことで、その製作にかかったらしい費用をあだ名のように呼んでいるだけのものだ。まあ、実際にどれだけ製作にかかったのかはどちらかと言えば下っ端側の所長も正確には把握していない。
「うーん。一応規約の中にも、『サービス期間中に未調整のAIによる干渉が~』って記載してあるんですけどね。公式ページにもわかり易い位置とは言えませんが載っていますし」
「規約は読まないユーザーの方が多いだろうし、公式ページだって同じだ。それに今回のアップデートにAIが関わっていると思っていない可能性も高いからな」
事前通告もなしにAIを使った修正案を使用。また、修正後の対応もAIに任せてあるとはさすがに殆どのユーザーは知らないだろう。はたして気付いているユーザーはどれだけいるのか。
もともとUWWOはAIを成長させるための空間を拡張して作られたオンラインゲームである。そのため、日テリによるAIの実験場のような役割も持っているのだ。さすがに商品として売り出している以上、しっかりオンラインゲームとしての管理はされているが、今回のような事もすることもサービス開始前から想定されていた。
「あー、そうですねぇ。告知もしませんでしたし、普通気付けないかぁ」
「事前に知らせておいた方が良かったのではないですかね?」
「そうすると実際に同じことをした時の反応とは変わってしまう。それでは意味が無いんだよ。こうしたらこうなる、っていう正確な経験が得られないのはAIたちにとって困るし、後で調整するAI開発部の奴らも困るからな」
「あー、そうですね。それに愉快犯的なユーザーもいますから変なコメント送ってきそうですね。まあ、それはそれで経験になるでしょうけど」
「そういうのは次回だな」
後から情報を入力することはそれほど手間ではない。過去の事例やその際に行った対処法、その結果などをAIたちに読み込ませればいいだけだ。
しかし、それでは人と同じような感情を持つように製作したAIが納得するかと言えば微妙なところだ。そういう物だと理解は出来るだろうが、どうしてそのような対処をしなければならないのか、という部分がそれでは抜けてしまう。
「ただ、アプデ後一部ユーザーのログイン率が下がっているので早めに対処した方が良いと思います」
「アカウント数も少し減ったらしいですからねぇ」
「もうネタ晴らし、というかAIが干渉していることを知らせた方が良いのではないですかね」
「今更だろうな。今普通にプレイしているプレイヤーはどうあれ、あの対応を受けた上でプレイしているのだから、これから劇的に減ることは無いだろう。それにあの段階でアカウントを削除したユーザーはそもそもうちのゲーム、と言うか運営方法に合っていないって判断で良いだろう。申し訳ないという気持ちが無い訳ではないが、今後も同じような事をする予定だから、合わないのはどうしようもない」
「あの、こっちが責任取らされるとか、そんなことはないですよね? 今の社長、ちょっと信用ならないので、不安なんですけど」
「その辺は大丈夫だ。責任がこっちに来ないよう言質は取ってある」
「あの、それ……口約束とかではないですよね?」
「さすがにそれは無い。後から覆されても困るからと前の会議の段階で書面は用意してあるし、万一のことに備えてボイスも取ってあるからな。使うかどうかはわからないが」
「なら良かったです」
今回のスキル調整の対応については失敗することが前提で進められていた。なので、アップデートをAIに任せる会議で決めた段階で今後の対応については既に決定済みである。
「あと、あの人は臨時であの位置に居るだけで社長という訳ではないぞ? あくまでも代理だ」
「わかっていますよ。でも、あの人が社長になりたがっているというか、乗っ取ろうとしているのも知っているので」
「まあ、
「カムバック飛世社長! 出来るだけ早く!」
そう言ってユーザーからの意見書などを捌いていた男が、おそらくその社長の居るのだろう方向を見て祈る。
ついでに飛世社長が居ない理由は単純に足を骨折し、入院中だからである。
「1週間後。いえ、後6日後ですか。ユーザーはどういった反応をするでしょうねぇ。あまり良い反応は想像が出来ませんが」
「『今回はAI製作の一端に協力していただき~云々』といった感じで、付き合って貰った
「そうだと良いですねぇ」
「そうじゃないと困るな。まあ、0にはならないだろうが」
「何やっても文句を言って来る方はいますからね」
そんな不安を言い合っている間にも時間は過ぎて行った。
―――――
AIに感情は必要か否か。
賛否あるでしょうが、これはあくまでも小説なので。まあ、ゲーム製作用AIには必要ないと思いますが、ゲーム運営用AIなのであった方が面白い……よね?
※過去の事例から学べばいい、と言うのは禁句。
そもそも人間だって実際に経験しないと、実感を得ることは難しいですからね。AIも同じという事です(あくまでも作中に関して)
UWWO内では、サイレントでちょくちょくAIが更新されています。
プレイヤーからするとこんな感じ↓
「あの住民、最初よりもよく話すようになってないか?」
「表情もなんか柔らかくなっているような?」
微々たる変化ですが日に日によくなっている。
※日テリの会社の問題は3章前半以降に引き摺ることはないですし、作中に出て来ることはないです。ざまぁ展開はあるでしょうけど、触れることはないです。
何でこんな設定作ったのだろう?
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