第22話 採取の成果

 

 うん、頭だね。さっき見た時はインベントリには無かったから、多分、犬リーダーを倒したことで手に入れたのだろうけどさ。うーん、要らない。


 委託で売っても良いかなぁ、一応委託は匿名だし、誰が売りに出したのかはわからないはずだよね。

 ただ、Ra的に売りに出したくないと思うのはゲームをしている人の性なのか。どんなに要らないアイテムでもRaがEpだと手放すのが惜しく感じてしまうよね。


 売らないとなると素材として使う必要があるのだけど、もう既に頭部剥製は持っているから必要ないし、そもそも使えない。と言うか、生産スキルは何を使えば出来るのだろうか? 細工はアクセサリー系だし、皮系だと裁縫になるけど中身を考えるとそれだけで出来るとは思えない。


 剥製だと飾るのが目的だから家具製作系になるはず。そもそも頭部剥製が家具ジャンルのアイテムだったから、家具製作系なのだろうけどそれに該当するスキルはまだ見つかっていないのだよね。少なくとも私が調べた限りだけど。


 あーでも、外側の皮だけはぎ取れば裁縫系でも加工は出来るかも。いや、剥ぎ取り自体どうやればいいのかわからないけど、皮の状態になればおそらくスキルの範囲内には入るはず。

 そうしたら出来るのは帽子とかフードみたいになるのだろうか? そう言えば尻尾も手に入っているのだよね。だったら着ぐるみとかも出来るかもしれない。いや、着ぐるみを作ったとしても着るつもりは一切ないけども。

 むむ、ガルスに渡せば何かしら作ってくれるかもしれないけど、とりあえずは放置かな。


 ログアウトの時間もあるし、頭に関しては採取が終わるまで放置しておくとして、今はここに来た目的通りにキノコの採取を進めて行かないと、現状何度もここに足を運ぶのは面倒でしかない。

 なので、出来る限りの数を採取していかないとね。




 採取を続けてログアウトの時間まで1時間を切ったので採取を切り上げ、急いで森に1番近い廃屋に駆け込みログアウトした。

 そして急いでいたためしっかり確認できていなかったインベントリの中身を再度ログインしてから、もう1度しっかりとインベントリの中を確認していく。


 今回の採取で手に入った物は、主な目的だったデストリマッシュと薬草。それから、第3エリアでしか取れない気がする素材だ。


 ログアウト時間を忘れるくらい採取に没頭した結果、デストリマッシュについては50個以上集まり、薬草に至っては草原で見つけた物と合わせれば100以上も手に入れることが出来た。

 マッヒカン茸も結構な数を採取することが出来ている。さらに言えば未だに用途がわからない謎の骨も数本採取済みである。


 それと、採取の途中に熊が出たけど、熊はイベント中にも多く倒したし倒し方も十分わかっているので、苦戦することなく倒すことが出来た。

 あの後も警戒していた犬たちについては、拍子抜けではあるけどあの戦闘の後から今まで一切出て来なかった。しかも感知の範囲にすら入って来た様子がなかった。もしかしたら、群れを倒すことで一定時間出て来なくなるとかなのかもしれない。リアルで考えれば群れの縄張りとかがあるから、それが仕様として組み込まれていても変ではないし。


 採取出来た数で言えば、充分に満足のいく結果ではあるのだけど、欲を言えばもう少し欲しいところ。ただでさえ他に採取できるプレイヤーが居ない状況なので、今後も継続して使うのであれば、沢山あった方が良いのは誰にでもわかる事だよね。


 しかし、残念なことに現在は日中。フードを被れば多少ダメージが減るとはいえ長時間の活動は出来ないので、廃屋周りで採取可能な素材を探して回る。


 あ、【日光脆弱】の熟練度が6%になった。

 これで後少しで0%になるのだけど、掲示板に書き込んでいたレッサーヴァンパイアの人曰く、0%になると【日光脆弱】のスキルは消滅して、それと同時に種族特性が解放されるとの事。


 情報の裏付けでステータスのSSもしっかり記載してあったから正しいものだと思うけど、私は後どれくらい時間が掛かるのか。少なくとも10%以下になってから相当時間が経っているにも拘らずまだ6%だから、結構な時間が掛かることは確かだとは思うけど。


「あああああああ!!!」


 え? 何!? 敵!? 突然の声に驚き、体がびくっと反応して、周囲を見渡す。


 色々考えながら採取をしている時に上がった声に驚き、咄嗟に周りを確認して声の元を探す。すると少し離れた位置に何やら凄く歓喜しているように見える推定プレイヤーが喜びからなのか両手を上げて、こちらに向かって絶叫しながら迫って来ているのが見えた。


 そして、そのまま推定プレイヤーは減速することなく私に向かって突進して来たので、とりあえずそれを回避。そうしたことで推定プレイヤーは私の横を通り過ぎ、草に躓いたのか盛大に顔から草原の中にダイブした。


 えっと、何か顔面から行ったのだけど、大丈夫なのかなって…あれ? 尻尾が付いている? 


 変なところでも打ったのか別の何かがあったのかはわからないけど、倒れたまま直ぐに起き上がらない推定プレイヤー…訂正、アバターの上にネームが出ているからプレイヤーなのはわかった。

 まあ、その倒れているプレイヤーのアバターから結構太めのしっぽが生えていることに気付いた。


 見た感じ爬虫類系で黄色い尻尾。結構ごつい感じで言うなればワニの尻尾の鱗っぽい。確か似たような感じの尻尾があるRACEでリザードマンが居るのだけど、リザードマンって基本的に緑系統の色合いらしいから、このプレイヤーのは黄色いし多分違う?


「はっ!?」


 倒れていたプレイヤーが、バッと起き上がった。事前動作もなくいきなり動いたため、また私の体がびくっと反応してしまった。


 怖い訳ではないけど、いきなり動くとか驚くから止めて欲しい。

 と言うか、別に私はこのプレイヤーの行動を見ている必要は無いのでは? このプレイヤーが倒れた原因は私ではないし、そもそもあのまま回避しないでぶつかっていたら、このプレイヤーに対してセクシャルガードが発動していた可能性もあるよね? どう見ても私がここに居たことを認識した上で突っ込んで来ていたし。


 うーむ、無視が一番安全かなぁ。ただ、無視しても付いてくる可能性も否定できないよね。まあ、程度にもよるけどそうなったら運営に通報するけども。


 どうするべきか判断に迷っている所でそのプレイヤーの顔がこちらを見て来た。


「あ、あ…や…」

「あや?」


 あや? まさか私が怪しいとでも言いたいの!? 確かにフードを被っているし、そのフードには弱めだけど認識阻害の効果で顔が見づらいから怪しいかもしれないけどさ。貴方も十分怪しいからね!


「や、やっと他の人に会えたーーーっ!!!」


 また、いきなり大声を上げてきたので驚いて体が反応してしまったけど、とりあえずこのプレイヤーが歓喜の表情で私に近付いて来た理由は分かった。



 まあ、うん。この人、私と同じ第3エリアが初期地点のプレイヤーだ。

 

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