第45話 ウエストリアの検問ェ

 

 サービス開始から10日目。朝ログインした時はまだ日がある時間帯なのでギルド内で【錬金】の熟練度を上げている。


 何もなかったと言いたいところだけど、夜にエリアBOSSを倒したことを伝えた、と言うか依頼を終えてギルドカードを提示したら受付の人に気付かれた。まあ、騒ぎになったとかそういった事ではないけれど、報酬なり何なりといろいろ面倒だったという話。


 そろそろウエストリアに向かう時間が近づいて来た。時間的にはまだ夕方だけど、少しでも早く出ないと今日中にウエストリアに着けなくなってしまう。


 そう言うことなので、まだ多少の日がある時間帯だけどギルドの建物から出て西に向かう。そして、昨日の夜に通った道をほぼ全力で駆けて行く。


 ダチョウを倒した場所まで1時間半くらい。またそこから1番近い農村まで1時間半掛かった。途中何人かプレイヤーらしき人影を見かけたけど、話しかけられることもなくそのまま通り過ぎて行った。


 私が全力で走っていたから話しかけられなかっただけかもしれないけど、そんなこと気にしても意味はないし、私は話し掛けられたくはないので良しとしておく。


 農村では止まることなく走り抜け、そこからまた道にはなっているけど大して整備されていない道を全力で走り抜ける。


 今の農村からウエストリアまでは、AGI:50のヒューマンのプレイヤーが全力で走って12時間掛かるらしいからそれよりは早く着くとは思う。ただ、AGIが上がったところでどれだけ早く移動できるかはRACE、と言うか体のサイズによって違うらしいので、実際に私のAGI値でどれくらい早いのかは今まで比較対象が居なかったからわからない。


 そんなことを考えながら走っていると次の村が見えて来た。次の村は2時間くらい前に通過した農村とは異なり宿が存在している。なので少し早いけど一旦宿をとってログアウトする。

 多分、その次の村に行くと距離的にお昼のログアウト時間に少し間に合わないどころか、1時間くらい過ぎてしまうはずだから。



 またログインしてから全力で走り抜けて3時間くらいが経過した。宿をとった村の次の村も通過して、あと1時間半くらいでウエストリアの外縁に着きそうだ。何となく外縁の砦でまた止められそうな気はするけど、気のせいであって欲しい。

 まあ、止められたとしてもギルドカードとかを確認して終わりだと思うけど、何もなく通過できるならその方がいいよね。


 そして予想通り1時間半くらいでウエストリアの外縁が見えて来た。外縁は前にセントリウスへ行く前に通った壁…防壁と同じような感じだった。ここはウエストリアの首都みたいな場所だから厳重に守っているってことなんだろうけど、周囲に生息している獣やモンスターを考えると過剰な気がする。

 まあ、攻めて来るのはモンスターとかだけじゃないってことだろうけど。


 外縁の内側に入る入口に着いた。警備している人は2人で、その横をウエストリアを拠点にしていると思われるプレイヤーなり住民が通り抜けている。通行量自体はまだ夜間なのでそんなに多くはない感じ。


 さて、なんでそんなことがわかるかと言うと案の定止められたからだ。


 どうやらこの入口は空港とかに置かれているゲート型の探知機みたいな魔道具らしく、一度もウエストリアに入ったことがない人とかを検知できるらしい。

 外縁の壁にある入口を潜ったらいきなり警備の人が走ってきて咄嗟に逃げようと思ったけど、別に悪いことはしていないし、ここで逃げたらもっと面倒なことになるのはわかり切っているから直ぐに止まった。

 それがよかったのか元からこうなのか、今は入口の近くで話を聞かれている状態だ。


「セントリウスから来たと。こんな時間に?」


 確かに、普通だったらこんな時間には移動しない。まあ、目の前で何人も通り過ぎて行っているから、あくまで他の地域からと言う括りなんだろう。そうでないと今まで通って行った全員を止めているだろうし。


「RACEの問題」

「RACE? そういえばまだギルドカードの確認はしていませんでしたね」


 そう言って私から話を聞いている警備の人は、事前に渡してあるギルドカードを確認した。出来れば話を聞く前に確認して欲しかったけど、こういう時の手順なり何なりがあるんだろう。


「ヴァンパイア……日光に弱いRACEでしたか。最近異邦人で何人か見かけましたが、まあ確かに日中で長距離の移動は出来ませんね。所属国がないのが少々気掛かりですが、問題はないでしょう」


 そう言って、警備員の人は私のギルドカードを返してきた。正直、前を通り過ぎていくプレイヤーなんかからちらちら見られて割と不快だった。別にここで確認しないでもいいんじゃないかなとも考えたけど、確認する場所が遠かった場合は移動中に逃げられるリスクが増えることになるのだから仕方ないのかなぁとも思う。ただ、仕切り位あって欲しかったとは切に思う。


 そんなこんなでウエストリアの街の中に入ることが出来た。


 とりあえずここに来るに当り、UWWOの公式情報からウエストリアについて簡単に調べている。

 今いる場所はウエストリア王国の首都ウエストリア。基本的にプレイヤーの大半の初期地点の一つで、他はイステット公国とサウリスタ王国と言うらしい。ぶっちゃけ言うと西と東と南ってこと。運営か製作側が国名を考えるのが面倒だったのかもしれない。


 その初期地点である国を纏めて3国と言うらしい。セントリアスでチュートリアルを担当してくれたレミレンもそんなことを言っていた気がする。


 はっきり言って初期地点になっている地域だから周辺に生息しているモンスターなんかもLVは1~5くらいで平均が3らしく、正直弱い。そのため、既にプレイヤーの多くはLVが上がらなくなっているようで、早急に第2エリアの開放をと言うのがプレイヤーの総意になっているらしい。


 ただ、第2エリアから来た身としては、LVの最大値は多分第1エリアと第2エリアは同じくらいだと思う。むしろ第2エリアよりも第1エリアの方がLVは高いフィールドがあるのでそっちに行った方が良いと思う。

 第3エリアとの境目とか、確かLV20クラスが出たはずだし。


 第2エリアは確かに平均LVは上だと思うけど、出るモンスターとかはほぼ同じだしうまみは少ない。ただ、プレイヤーは少ないからその辺は第2エリアの方が上だと思うけどね。


 そんなことを考えながら待ち合わせに指定されているウエストリアの南の入り口からそれなりに近い噴水を目指して進んで行く。UWWO内は夜明け前だけど、現実では14時くらいだからプレイヤーと思われる人影はそこそこあった。住民がやっている店は軒並み閉まっていたけど、プレイヤーかもしくはプレイヤー目当ての住民なのかはわからないけど、営業している露店はちらほらあるようだ。



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