第10話はじめての任務

僕の初めての任務は常駐任務だった

つまりいつもいる街で武装して警備をするのが任務だ

近場が戦場になるらしい

訓練生である僕らにこの役目が回ってきた

班長「僕ちゃんが警備するのはこのお屋敷な」

僕「了解しました!」

そこは確か博士先生の住所だったはずだ

あんなオンボロ屋敷になにがあるのかはしらないが、僕は攻撃されなさそうな場所へ配属されたことを内心ほっとしていた


もうお屋敷の前に突っ立って2時間になる

いい加減脚が棒になりそうだ

僕「暇だ・・・」

Dちゃん「ひまだねえ、あ、鳩が歩いてる、まてー」

Dちゃんは鳩を追っかけ回して遊びだした

配属されたのは僕とDちゃんの二人だった

僕の背中には折りたたまれたAちゃんドールが背負われている


そのとき通信機がガーガーと音を立てた

僕「Dちゃん!通信!」

僕は通信機を手にとった

僕「はいこちら005班です」

通信機からは銃声と叫び声とガーガーというノイズの音が聞こえてくる

僕「これやばいんじゃないか」

そのとき空高くから光の球が飛んできてお屋敷の屋根に穴を開けた


ガチャーン バキバキ


Dちゃん「ふえぇ」

僕は冷や汗が止まらなかった

僕(前線部隊はなにやってるんだ?)

僕(おまえらつよいんじゃないのかよ?)

僕「くそっ」

僕は博士ちゃんの安否を確認しにお屋敷の中へ向かった

Dちゃんは腰を抜かしてへたりこんでいたので、そこに放っておいた


扉を開け放つとそこは廃墟のようだった

僕(博士ちゃんはこんなところで暮らしてるのか?)

地下へ続く階段の方から大きな音がした


バキバキ


僕「博士ちゃん!」

僕は駆け足で地下へ向かった

階段を駆け下りて扉を開け放つと、そこには倒れた血まみれの博士ちゃんと人工知能搭載型兵器がいた

その兵器は4足歩行の馬のような姿をしている

本来の馬ならば首がついているその場所には、まるでマニュピレーターのような刃物や銃器がひしめきあっていた

兵器がこちらへその銃口を向けた

僕(いやだ!)

僕はその場で頭を抱えこんでうずくまることしかできなかった

銃声がなる


ズババババババババババババ


僕は撃たれた、はずだった

顔を上げるとそこにはAちゃんドールが立っていた

ドールは銃撃を受けてもびくともしない

馬兵器はそれを察知したのか今度は刃物を首で装填した

前足をパカラッパカラッとして、今にもこちらへ突進してきそうだ

そしてその2秒後、馬兵器はその体に見合わない素早い速度で突っ込んできた

ドールがそれを両手で受け止める

馬兵器のドリルはまだドールを捉えていない

ドールの両手は馬兵器の首根っこを握りつぶしていた

ドールが馬兵器を握りつぶすのが先か

馬兵器のドリルがドール貫くのが先か


先に機能を停止したのは馬兵器の方だった


僕「博士!」

僕は博士ちゃんに駆け寄った

博士「これから私が言うことをよく聞いて」

僕「はい!きいてます!」

博士「わたしはもうだめ・・・はやくここからにげなさい、私が死ぬと1分後にこの施設は爆発する手はずになっているわ、あなたも巻き添えになりたくないでしょ?あと、私がここで何を研究していたから誰にもいわないで、あなたのためよ、そして、最後にひとつ、よく覚えておいてほしいの」

僕「・・・博士!」

博士「おそらく魂は存在するわ・・・もう行って!」


僕はがむしゃらに逃げる途中、たくさんの人間がガラスケースに入っているのを見た

僕はそれらの存在を信じたくなかった

博士はここで何を研究していたんだ?

魂?

博士ほどの人がそんな非科学的なことを・・・


僕は屋敷の外にでた

僕「Dちゃんふせてー!」

Dちゃん「ほえ?」


ドーン・・・・・・・


ついに爆発で屋敷が吹き飛んだ

Dちゃん「ふぎゃぁぁぁぁぁぁぁああああ」

僕「うおおおおおおおお」


後日


僕は独房にて反省させられていた

Mちゃん「ご機嫌いかがですか先輩」

僕「最悪ですよ・・・地面が固くてお尻が痛い」

Mちゃん「反省なんですから当然です」

僕「Mちゃんってここでは僕の上司なんだよね」

Mちゃん「そうですよ、私のほうが偉いんです」

僕「ところでなにかよう?」

Mちゃん「単刀直入に言います、博士のお屋敷でなにか見ましたか?」

僕「・・・なにって?」

Mちゃん「例えば、兵器とか」

僕「見たどころか戦ったよ、さんざんな目にあった」

Mちゃん「他には?」

僕「博士が死んでた」

Mちゃん「・・・他には?」

僕「それだけだよ」

Mちゃん「わかりました、博士の屋敷であったことは人には話さないようにしてください、わかりましたね?」

僕「はいはいっと」

Mちゃん「はい、は一回だけ」

僕「はい!」


その夜僕は独房の薄いベッドで今日見たものを思い出してうなされていた

あの水槽に入っていた人間はすべて、たしかにAちゃんだった


博士はいったい何をしていたんだ

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