第204話 保守党、野党転落へ
―保守党会議室―
「殿下。最新の選挙予測ができあがりましたわ。どうぞ、読んでみてください」
魔女め。何を持ってきたんだと思っていたが……。本題はこれか。
「俺は忙しいんだが?」
「いいではありませんか。保守党の次期総裁として最新のデータを見ることは重要ですわ? それに、昨日の党大会でクリスタ―侯爵を大連立の破綻を理由に辞任させたばかりでしょう。
「だから、忙しいんだよ。見せてみろ」
「はい、代表」
あえて、代表の言葉を強調する鼻につく態度がいらいらする。だが、彼女の選挙予測はかなりの割合で正しい。だからこそ、見るしかないわけだが……
そして、その予測は俺を絶望させるのに十分な内容だった。
「これは確かなのか? 本当にここまで……」
「ええ。我が新聞社が総力を使って調べ上げた数字です。わずかな誤差はあると思いますが……選挙まで1か月を切っている状況では挽回は不可能に近いのではありませんか? この前もグロウド市の公開討論で、あなたの側近がルーナにボロボロにされたと聞きましたよ?」
「くそ……」
魔女がたたき出した選挙結果は……
保守党:160~190議席
自由党:220~250議席
その他:20~40議席
だった。この選挙結果に終身元老院議員達も加算されるが、それを加味しても保守党は間違いなく野党に転落する。
絶望的な数字だった。少数政党に金をばらまいて味方に引き入れても逆転は難しい数字だ。
こうなってしまえば、保守党は崩壊する。
保守党は貴族の誇りと既得権益の維持のためにまとまっていた政党だ。与党であり続けなければ、その2つは失われて党は自壊する。
そして、俺は保守党を崩壊に導いた無能王子として、歴史に刻まれることになる。
次期国王としての身分も失われる。
「いかがいたしますか? 殿下?」
「魔女よ。リムル局長に連絡しろ。自由党議員のどんな弱みでもいいから集めろとな。脅してでも次の首班指名で俺の名前を書かせる」
「はい」
「そして、義父上に連絡してくれ。例の海賊たちの遺産をここで集中的に投入する。こうなったら自由党議員を切り崩す」
「おもしろくなってきたわね」
「ああ、ここで終わるわけにはいかない。いままでいかなる犠牲を払ってでも、俺は前に進んできた。ルーナのような女に邪魔をされるわけにはいかない」
「もしもの時のプランBの準備はそのまま進めてしまってもかまわない?」
「考えたくはないが仕方があるまい。ただ、あくまで準備だけだ。実行の指示はこちらがおこなう」
「わかったわ、王子様。あなたの仰せの通りに……」
―――
(作者)
明日は更新お休みです。次回は金曜日に。
すでに最終章に突入しておりますので、最後まで楽しんでもらえると嬉しいです。
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