第141話 ルーナとアレンの休日
朝日がまぶしい。今日は久しぶりのお休みの日。ずっと働き詰めだったから、いつもよりも多く
バルセロク地方知事には、公邸が用意されているわ。連休が取れたら村の家に帰ることの方が多いけど、今日は1日だけのお休み。だから、公邸に泊まった。
「ルーナ、おはよう。よく眠れたかい?」
アレンは軍隊の時の習慣でとても早起きだ。今日は朝食を準備してくれたみたい。いいにおいがする。
「ありがとう、アレン。おかげさまで」
「知事なのにお手伝いさんも雇わずに、ずいぶん質素な暮らしぶりだよね。本当に」
「いちおう、地方庁の予算から出してもらえるそうなんだけどね。別にお姫様じゃないから……自分のことは自分でできるし、それにここはただの仮眠室みたいなものだし」
実際、食事はほとんど庁舎の食堂を使って済ませている。アレンが一緒の時はこちらに帰ってきてふたりで夕食をとるようにしているけど、元老院などの仕事でバルセロクにいないときは公邸はほとんど仮眠室のようなものなのよ。
「元・お姫様のルーナが言うとなんだかおもしろいね。珍しくふたりの休みがあったんだ。今日はゆっくりしよう。ルーナみたいに手の込んだ料理はできないけどね。よかったら食べてくれるかな?」
彼はおどけたように笑った。
「最高ですよ。アレンの料理は楽しみなの」
食卓には、ライ麦パンの上にレタスとチーズとベーコンが載っていた。
あとは、オニオンスープね。
「軍隊式のお手軽男の料理で悪いんだけど」
「私のために作ってくれた温かい朝ご飯なんて最高ですよ」
私は、スープを口に含んだ。
オニオンを炒めてベーコンの塩気で味付けした優しい味ね。
パンのほうも素材の美味しさを活かしていて、美味しかった。
軍隊のほうでも食事は重要な要素だから、簡単な調理法はおぼえるらしい。
保存食を美味しく食べるために、かなり工夫したと前に笑っていたわ。
「美味しい。本当に優しい味ですね」
まるで、あなたのようにという言葉は恥ずかしくて言えなかった。
「それはよかった。でも、なんだか照れくさいね」
私たちはこうして楽しい休日の朝を迎えた。
「今日はショッピングでも行こうか? ゆっくり外を散歩するだけも、息抜きになるから」
「そうですね。ふたりで遊ぶなんてチャンス、あんまりないですから。エスコートしてくださいますか?」
私の軽口にアレンは笑いながら答える。
「もちろんだよ」
こうして、私たちの休日が始まる。
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