第133話 王子の孤独
ついに、私は結婚式を迎えた。
予定調和な永遠の告白、指輪の交換、誓いのキス。
それを機械的にこなしていく。
感情など込める必要はない。こいつは、ルーナに代わったただの道具だからな。
ルイーダはすべてに満足して笑っていた。
「これで私も夢にまで見たプリンセスなんですね?」
こいつは馬鹿だ。政治家や次期王妃としての才覚はルーナにはるか及ばない。
だから、楽だ。贅沢と言うエサを与えておけば満足するからな。
「ああ、そうだよ。愛しのルイーダ。そして、キミは新しい王妃様になるんだ」
「最高ですね。私をみんながうらやんでくれる。国で一番素敵な暮らしができる。それもこんなにかっこいい王子様の妻として。女性としての夢がすべて叶ってしまいましたわ」
「まだ、早いよ。僕たちはこの王国の中で一番幸せな夫婦にならなくちゃいけないんだからね」
教科書通りのセリフを口にして、女を満足させる。
こいつの実家はまだ利用価値がある。子爵が死んだら、遺産はこちらに来るからな。それまではサービスしてやるよ。
まあ、こいつの父親の子爵は優秀だ。あいつが使えるまでは、こいつは使ってやる。
これで情報局と軍務省は俺が抑えた。叔父上とも戦えるくらいの勢力は集まりつつある。あとは、時期だけだな。
「幸せな家族を作りましょうね?」
"幸せな"家族か……
自分にとっては縁がない単語だ。
母さんは、俺が生まれてすぐに死んだ。
父は継母と弟たちを
家族にとって、俺は邪魔な存在だった。なにか落ち度があれば、俺は簡単に王宮から追い出されると分かっていたよ。
家族は継母の子供たちを王位につけたいんだから……
だから、俺は完璧であり続けなくてはいけなかったんだ。周囲は敵だらけで油断すればすぐに廃嫡だ。
周囲が全員敵ならば、そいつらを利用できるだけ利用してやる。自分以外はすべて道具だ。そして、俺はその道具を使って、この国のトップになりすべてに復讐してやる。
国王、継母、弟たち……
たとえ、どんなに犠牲が出ようとも、頂点に立つ。
道具が壊れようが関係ない。
そして、国王になれば……
邪魔な元老院は封鎖し、国王の絶対王政に
そうなれば、ルーナなど簡単に消すことができる。俺を裏切ったアレンもな。
あとはこの国を俺の思い通りに変えていけばいい。
結婚パレードに向かう馬車に乗り込むため、俺はルイーダをエスコートして、さも幸せそうな笑顔で観衆たちに手を振った。
バカな群衆は俺を祝福している。
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