第112話 地下室
「よかったわ。ふたつの考えが私にあったの。この場所で書類を隠すことができる場所は秘密部屋か地下室のどちらか。秘密部屋は図面を見ればある程度推測できる。それが存在しないようであれば、地下室がどこかにあるはずよね? 地下室は探しやすいから後回しにしたのよ。1階をくまなく探せば見つかるもの……将軍、兵団の総力を1階捜索に回してください。そんなに大規模な仕掛けは用意できないだろうから、じゅうたんとか本棚の下を重点的に探し出しなさい」
課長は青ざめながら震えている。
「さあ、今度はこちらの番よ。覚悟はいいかしら、管理課長?」
「……あんた本気か。完全な宣戦布告だぞ……」
「何を勘違いしているのかしら? 先に喧嘩を売ってきたのはコルテス家のほうよ? 先に宣戦布告をしておいて脅しが通用すると思う? そのほうが
「俺は知らない。ただ上から指示されただけだ。断ることなんてできなかったんだ」
「そういうのは裁判の場で言いなさい? あなたは公僕と言う立場でありながら、コルテス家だけのために動いた。それは決して許されることじゃない」
「殺される。こんなへまをしたら、俺はあの家に殺される……」
1階の兵士たちが騒がしくなった。見つかったのね。隠し階段が……
「将軍、管理課長を拘束してください。不正の証人を失うわけにはいきませんから」
放っておけば窓から身投げしそうな顔だったわ。
「放せ、この先にあるのは地獄なんだ。ここで殺してくれ」
課長は暴れている。前・港湾部長も日々暗殺におびえながら取り調べを受けているらしいわ。たしかにここで死んだ方が本人は楽なのかもしれないわね。
でも、そんなことは許さない。
本来、中立であるべき立場の人間が職務を放棄して不正に関与していたんだから。責任は重いわ。
『知事、将軍……1階の書類棚の下に地下通路の入り口が隠されていました。奥には書類庫が……』
その報告に課長は頭を下げて意味不明な言葉をつぶやいている。諦めたようね。
秘密の隠し場所から運び出された書類には、コルテス家の関連企業に対しての不正の証拠が書かれている。
私は書類を確認する。
どうやら裏帳簿のようね。
「さあ、どう言い訳しますか? 管理課長?」
「うわああああぁぁぁぁぁああああああ」
絶叫とともに彼は破滅した。
「
男はふたりの兵士に抱きかかえられるように連れていかれた。
私たちの完全な勝利ね。
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