第111話 隠し部屋
「隠し部屋ですか!?」
将軍は驚く。
「ええ、その可能性が高いわ。公社以外に書類をおいておいても流出する可能性が高まるだけ。ならば、公社の少人数だけが知っている隠し部屋に入れておいた方が安全です」
「だが、問題はその隠し部屋がコルテス家一派しか知らないとしたら我々がその場所を把握することは不可能に近いことです。公社代表でもある私でも知らないのですからね」
「ロヨラ副知事、公社の設計図面などはありませんか?」
「残念ながら、私も就任時に確認しましたがそのような部屋はありませんでしたね」
「そうですか……もしよければ私にも見せてくださいませんか? 私も少しは建築に興味があるので」
実は知事になる前の1年間のアルバイト生活時代に、いろんな本を読んだわ。その中には建築関係の本もあったから少しくらいはわかる。こういう隠し部屋を作る時は図面上に怪しい空間や不自然な柱が作られることが多いはず。図面を見ながら怪しいポイントをしらみつぶしに潰していくしかないわ。
私達3人は図面とにらめっこを続ける。
※
「怪しいところはありませんね」
私たちは図面を見て怪しい場所を探したがそんなところはなかった。
そもそも怪しい空間がこの公社内には存在しなかった。つまり隠し部屋を作る余地がない構造ということ。
「見つかりましたかな、コルテス家を追いやる決定的な証拠が?」
課長は私たちが手詰まりになった様子を見ていじわるそうな笑顔を浮かべてこちらに挑発に来たようね。
「ずいぶん、嬉しそうですね。管理課長?」
「いえいえ、そんなことはありません。我々はバルセロク地方のために仕事をする言わば
「言うことが
「あなたたちの希望だった隠し部屋は存在しない。あなたたちはコルテス家へ言いがかりをつけて破滅に追い込もうとした
「行き過ぎた港湾の私物化は正当化できません。それに、私たちは負けたわけではない」
「負け惜しみを……」
「隠し部屋がないということが分かったから、私たちの勝利は確実になったのよ?」
「なにを……」
「隠し部屋がないならば、不正書類の隠し場所はひとつだけよ。地下ね? 1階のどこかに隠し階段がある。違うかしら?」
私の言葉に課長は青ざめて震えはじめた。
私は勝利を確信した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます