第77話 激怒
―ルイーダ視点―
私はさっきの言われたことを思い出してムカムカする。
※
「そうですか? 傾国の美女なんて初めて言われたから嬉しくて! それに、英雄とも呼ばれる騎士のアレン様が一国の殿下を捨ててまで私のもとに来てくれたなんて女として最高に名誉なことじゃないですか? 元・婚約者としてひとつだけ忠告しておきます、ルイーダ子爵令嬢?」
「あなたは次期国母になるお方です。言動には注意した方がいいですわ。誰が聞いているかもわからないんですから。あなたの話では、まるで私とアレン様がクルム殿下のことを見限っているように聞こえますよ? 殿下はそんなに
「さらにアレン様は私を選んで殿下と仲違いしたというのも軽率な発言です。仮にもアレン様は元・近衛騎士団副団長。そして現役の元老院議員です。そのような方がクルム殿下と確執があるなんて噂になれば、一番困るのは殿下ですよ。噂の出元であるあなたも国母としての資質を問われることになる」
※
完全に脅されたぁ。あの女、知事とはいえ平民の分際でクルム殿下の婚約である子爵令嬢の私を脅したのよぉ。
あいつの眼が、私のことを完全にバカにしていたぁ。婚約者として知性がない女だと遠回りに言って自分の方がはるかに格上だと……
あの女は私の叔父上を失脚に追い込んだだけじゃなくて、クルム殿下に敵対する勢力にかつがれた
「ふざけるんじゃないわよぉ!!」
私は部屋に飾られていた花瓶を叩きつけて粉々にする。
「こんなにバカにされたことは、はじめてよぉ。許さないぃ。私が国母になったらあの女、本当に潰してやるぅ。そもそも、あのふたりがあんなにのさばるのは殿下が追放なんて生ぬるいやりかたをするのがいけないのよぉ。どうして、あそこで殺しておかなかったのかしらぁ。あんな害悪で腹黒女はこの偉大なるイブール王国にいてはいけない災厄。私があいつらを消してあげないとダメよねぇ。そうしないと王国にとってとんでもない不幸になってしまうものぉ」
私は自分に与えられた運命を自覚して笑い始める。
そうか、だから神様から私は選ばれたのねぇ。
この国を変えようなんて考えている不届き者を消せと言っているんだぁ。
そうよね、だって、そうじゃなければ私が新しい婚約者になれる奇跡なんて起こらないわぁ。
だから……
私はあの二人を絶対に許さない。
―――
(作者)
明日は更新お休みです。次回は金曜日の予定です。
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