#03 新しい微笑み
同時に、
落ちた奈緒子を族車に轢かせ、とどめという算段でね。
これで密室は崩れた。あとは時間的な問題だけだわさ。
さて、では続きはという言うと……。
右人差し指を立ててから続けるハウ。
つまり、
あの、おびただしいパチンコ玉達は秀也の族車をこけさせる為にまかれたって事。
そして、
それは、
奈緒子にまかせたもの。
ドアから乗り出させて。
しかも、
当夜、奈緒子は酒に酷く酔っていて……、これも加味したんだろうね。
もう、ここまで言ったら分かるよね?
窓から顔を出してパチンコ玉をまいた彼女はドアに寄りかかってしまった。もちろん、ここでドアロックを解除。あとは、ご想像通り。ドアが開いて奈緒子は固い路面へと落っこちたってわけ。あり得ないほどのスピードで走る車の中からだわさ。
そして当然の如く強くも頭を打った。
無論、彼女が死んだあと万全を期し、パチンコ玉を路肩に掃き捨てた。
掃き捨てる位の時間はあったからね。
これで時間の問題も無事解決だわよ。
ふふふ。以上を以て、お終いなりよ。
忍忍ッ!
「……ってわけよ。さあ、ご質問は?」
ハウが自分の鼻をこする。自慢げに。
質問はないかと言われてしまったが、僕の推理も同じものであったから疑問など挟む余地もない。むしろ一正の方が聞きたい事はあるのでなかろうか。チラリと横目で一正を見ると……、信じられないという顔つきで青くなって微かに震えていた。
かたや、
フーは、
「だからこそ奈緒子さんの死は事故に見えた。実際、故意に殺そうとした心理を除けば交通事故と言っても差し支えない考えられたトリックを使っていますからね」
と柔和な笑みに変わってから続ける。
「フムッ。トリックに使われたパチンコ玉は、あちらで見つけましたよ」
とBRZが倒れている辺りを指さす。
ダメ押しだろう、昨日、証拠は持ち帰れないからとスマホで撮った画像を見せる。
掃き集められたパチンコ玉のそれだ。
「もちろん、どこで、このパチンコ玉を買ったのかも特定済みです。誰が買ったのかもね。ここまで証拠が揃っても、まだ、しらを切り通すつもりですか、一正君?」
「クッ、……クハハ。アハハ。フハハ。恐れ入ったよ。ここまでとはね」
と一正は右手で目を覆って天を仰ぐ。
「ああ、そうか。そうだ」
なにかに得心したのか、嗤い始める。
「仮に、そのトリックが真実だったとしてもボクには奈緒子を殺す理由がない。理由がないんだから別の誰かが、さっきのトリックを使って殺したとは言えないか?」
或いは、そのトリックは妄想でしかなく、やはり事故で死んだとは言えないのか?
だって、殺す理由がないんだからな。
ハウが何かを言おうとした瞬間、右手で彼女を制して、ホワイが一歩前へと出る。
「黄色いカーネーションですわ。まったくもって悪あがきが過ぎますの」
ビシッという力強い音が似合うようなイキオイで右人差し指の先を一正に向ける。
「いいでしょう。この私が引導を渡してあげましょうか。覚悟はよろしいですか?」
と言った瞬間、黙って成り行きを見守っていた秀也が、ひゅぅっと口笛を吹いた。
僕も、ホワイに見とれてしまい、不覚にも口笛を吹きそうにもなった。
灰色探偵ダニット 星埜銀杏 @iyo_hoshino
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