#10 残り3%
では、彼とは、一体、誰の事なんだ?
しかし、
こういう違和感を感じさせる、やり口は灰色探偵の常套句。そうして僕に考えさせる。フー達と出会ってから、ずっと終始一貫して、この手に悩まされてきたのだから慣れた。そうだな。そう考えると一正でもなく野乃実でもない可能性があるぞ。
無論、秀也はバイクに乗って、ここに現れたのだから彼が秀也でないのは分かる。
だからこそ一正でなく、野乃実でもなく、となると、一体、誰なのか、まったく分からない。いや、もしかしたら野乃実とはいえ、実は男性の名であったのであれば……。それとも一正を敢えて意地悪くも彼と表現した可能性も捨てきれない。
しかし、
一正の車はワポンRであるから……、ああ、もう、なにがなんだか、さっぱりだ。
多分、あのブラウン・マジェスカの運転手ではある気はするのだが。
てかっ。
これもまたデフォなのだが(僕の)、推理を始めると思考が絡むというアレだな。
昨日、三つの助言をもらい、その二つを使い、事件の概要とトリックを解明した僕はどこにいった。無論、残りの一つも、しっかりと準備してきたのに、また、いつもの僕に戻ってしまったわけだ。それこそ本当に歯がみと舌打ちしか出てこない。
アハッ!
「だから言ったでしょ。神様はいるってさ。あたしらを見てるってさ」
な、なんだよ、いきなり。何の事だ。
ハウよ。
「全ては神様の計算だったんだよ。こうなるように始めから仕組まれていて、そうなるように時が進み続けている。それこそがトリック。神が作ったパズルなんだ」
もちろん、あたしら、灰色探偵にだって、たどり着けない領域で組まれたパズル。
あたしらは、そのパズルのピースの一つに過ぎない。
多分ね。
それこそ残り3%の灰色領域って言えば分かるかな?
灰色探偵の事件解決率96.32%と推理が違(たが)う可能性である0.68%を足した97%を100%から差し引いた残りの3%。この、あたらしらでさえも、たどり着けない神々の思惟とも呼べる灰色領域だわさ。面白くなってきた。
その神のパズルの完成が直ぐそこまできてるからね。
「フム。とにかくです。敵さんも必死のようですね。確実に、わたくしたちを消しにきています。もっとも、手をこまねき、座して死を待つ、つもりはありませんが」
ですよね。ホワイ?
と、フーが言った。
静かに。
「はいッ」
とだけ、ホワイが、うなづき応えた。
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