Chapter18 一日のまとめ

#01 助言の一つ目

12月20日 午後8時13分。


「ああ、生き返る。ふおお」


 息を吐く。大きくも一つ。


 熱いお湯を両手ですくい、バシャっという大きな音を立てて一気に顔にかけ洗う。


 帰って、すぐ風呂にお湯を張り、そのまま、お風呂へとルバンダイブをしたのだ。


 フジッコちゃん~とばかりにも。まあ、僕にフジッコちゃんはいないんだけどな。


 無論、言うまでもないが、ルバンダイブは大げさ。ただ、それだけのイキオイで、お風呂につかったってわけだ。湯加減良好。温かいお湯が疲れを癒やしてゆく。もう一度、お湯を両手にすくい、顔にかける。ふおお。生き返るわ、とばかりにも。


 無論、すぐにでもベッドへ直行して寝たかった。


 それでも、もらった助言がそうさせなかった。助言に基づき事件について考えたくなったのだ。加えて、意外と、きれい好きな僕だからこそ風呂に入らず寝るという行為が信じられないのだ。なので、考えるついでに風呂にでもという流れだな。


 白くも淡い湯煙の隙間から四角い時計が見える。


 風呂に入っていて本業の締め切り時間が過ぎる事を避ける為、時計をかけてある。


 まあ、外出時にも自前の腕時計を持参して時間を確認するクセのある僕だからな。


 ここに珍しくも時計がある事に深い意味はない。


「8時13分か。それにしても、今日は疲れたな」


 ふおお。


 さてと。


 と鼻腔の少し上まで、お湯につかり、息を吐く。


 ぶくぶくと空気が弾ける音を聞き、目を閉じる。


 静かに。


 今日、最後の仕上げだ。少しばかり頭を使おう。


 帰る前にもらった(いや、買った)助言を思い出して静かにも顔をお湯から出す。


 授けられた助言の内で一つ目は、主にトリックを解く為に、に関してなのだが、それでも別の推理にも適用できる。まず僕がつけていたメモ帳に書いた事を思い出す、もしくは読み直すだった。じっくりと。謎が見えてくるまで何度も何度もだ。


 もちろん、一つ目の助言は、これだけではない。


 ただし、


 あまりに、いっぺんに助言を実行すると脳がショートするから読み返す事からだ。


 それ以外は、まあ、その時々でだな。


 無論、風呂場にメモ帳を持ち込んでいる。改めて読み直す為にもだ。


 メモ帳が濡れないよう持つ手を高く掲げて見上げて改めて読み直す。


 ジッと真剣にもメモ帳とにらめっこして記された文字を読みふける。


 最後にメモをつけたページまで辿り着き、また最初からと読み直す。


 うむむ。


 ペラリ。


 また最後のページまで辿り着くと、もう一度と、最初のページへとタイムリープ。


 うむむ。


 ペラリ。


 今、空想の中で何度もタイムトラベルして、印象に残った順にメモ帳に書かれていた事を並べ変える。そう。これが一つ目の助言の次の手順。時系列でメモの内容を並べ変えるのではなく、読み直して強く印象に残った順に並べ変えるのだという。


 なぜなのかは分からない。


 だが、まあ、騙されたとでも思ってやってみる。

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