#07 聞いてなかった
「というわけ。さすがハウちゃんじゃねぇ?」
とハウが鼻の穴を膨らまして、褒めて欲しいとばかりに上目遣いで僕らを見渡す。
ああ、しまった。ごめん、聞いてなかった。
などと言えず、困った顔をして、うなづく。
「てかさ」
勘の鋭いハウが下からズイッとのぞき込む。
ヤバいと慌てて取り繕ってもみるが、もはや、全てはあとの祭りだ。
「聞いてなかったでしょ。その顔は、そんな顔だわさ。なんかさ。最近、ハウちゃんの扱いひどくない? 姉貴のソレはデフォだけどケンダマンまでって感じだよ」
ハフッ。
といった感じのため息を吐きながら、ハウは、力なくも肩を落とす。
多分、ハウちゃんの大冒険の巻で、派手に脚色され、ハラハラドキドキな演出満載な冒険譚を語っていたのだろう。正直、聞かなくて良かった。今更、現実離れした話を聞いても面白くもないからな。だから、こうなってしまったら、こう言えばいい。
「要するに、どういう事なんだ。簡潔に頼む」
と……。
無敵で素敵な言い回し。特にハウには、だ。
立ち直りが早いからな。
うむッ。
「まあ、いいわさ。要するに、パパが、あのおっさんの注意を惹いている間に、あそこにある木の上から部屋をのぞいていたってわけ。双眼鏡を使ってね。OK?」
と部屋から少し離れた場所に在って、高さはジャストな木を指さす。
なるほどな。やっぱり要点だけをまとめてもらえれば、二行で終わる話だったか。
それを、さも大戦果なんだと英雄叙事詩ばりに壮大に語ってくれていたのだろう。
やっぱり聞かなくて良かった。というか、他人の部屋を無断で、のぞく行為は犯罪だから、よい子のみんなは真似しないようにな。ハウが言わなかったから、一応、僕から言っておく。まあ、でも僕なんかが言っても説得力は一切合切皆無いのだが。
「フム。役割分担というやつですよ。わたくしの話術とホワイの心理捜査を合わせ、ハウの身体能力を生かした捜査術です。まあ、さほど大した事ではないのですが」
フーが顎を手で隠してから右口角を上げる。
やっぱり、こいつらは、3人で1人となる。三人寄れば文殊の知恵とばかりにだ。
大体、あのおっさんから得たい情報は一つではなく複数あったのだ。
それを一つだと言って注意を惹くのと同時に大事な一つだけは確実に手に入れる。
その上で他の情報全ても手中に収める手腕には感服するしかない。しかも事を荒立てずに秘密裏の内にだ。これを文殊の知恵が成せる業と言わずして何をソレと言うのか。僕には、絶対に真似できない鮮やかな芸当だ。さすがはダニット一家かな。
と感心しているとフーが、また笑んで言う。
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