#06 極みへ
あの無数のパチンコ玉達は、
ストレス解消という意味で、まく事くらいしか、思いつかない。
無論、業者であったとしたならば、買った玉は自分の店で使う。
だったら、まく意味がないのだと言ってしまっても問題がない。
もし、そこに意味を求めるのならば、やはりトリックに使われたのだと言わざるを得ない。そこに一正が玉を買ったという事実を組み合わせると、一正がまいたのだと言ってしまってもいい。むしろ、そういう結論にしかたどり着かない。うぬっ。
全ての事実が、一正が、あの場所にまいたのだという事に帰結してゆくのだから。
しかも事件でトリックに使用されたと断言しても過言じゃない。
だったら、どういったトリックに、パチンコ玉は使われたのか?
先に、パチンコ玉で人を殺す事はできないという論決を下した。
それは今も変わらない。どう考えてみてもパチンコ玉で人を殺す事ができるとは思えない。無論、フーやハウからも死因には関係していないと言われてしまっている。それでもパチンコ玉で殺害したという可能性は皆無なのであろうか。むむむ。
と僕の申し訳程度でしかない、なけなしの大事な思考を遮って、
「ヒ……」
という一文字を口笛で軽やかに表現するハウ。
しかし、
そっぽを向いて、視線を合わせようとしない。
怪しい。
一体、なにがしたいんだよ。
火なのか、それとも疲なのか、ヒってなんだ?
もしか、敢闘賞とか言い、あめ玉でも押しつけてくる気なのか?
続けて、また一文字を口笛で、空に描き出す。
左人差し指でポップなリズムを取りながらも。
「ン……」
ううん?
僕は意味が分からずに右上へと視線を泳がす。
ハウは、
まるで指揮者のよう左人差し指を上から下へ。
「ト……、をあげようか? でも5万円だわさ」
終曲と。
嗚呼ッ!
グギギ。ヒントをあげようか? と言いたかっただけの話かッ!
「むみゅ」
と僕とハウの間に割って入る寝ぼけたホワイ。
右手で、右目と左目を順繰りにこすってから、
「おはようございます。とても気持ちのいい朝ですね。新しい一日の始まりですわ」
と欠伸。
こっちはこっちでロボットみたいに決まった定型文を抑揚もなく紡ぎ出してくる。
びっくりさせるな。ハウもびっくりなロボットびっくり箱でな。
と、いきなり、真面目な口調と真剣な目つき。
「さて、ヤマケンさん、そろそろ怨恨の意味は分かりましたか?」
あうう。あぉう。やめてぇ。
ハウからはヒントがいるかと言われ、矢継ぎ早にホワイから怨恨の意味はと問われてしまい、どっちらを優先すべきなのかと混乱してしまう。ここでフーに、なにか言われてしまったら、それこそ思考の絡まりが極へと達してしまう。混乱の極み。
ある意味、予定調和で……、
「よろしい。そういえば、奈緒子さんは片親でしたよね? 生存しているのは母親でしたか、それとも父親でしたか、どちらでしたか? いくらか気になりました」
よろしくない。今、僕に話しかけるな、フー。
僕は、フウッ! とネコが敵を威嚇する時に発するような息を一気に吐き出した。
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