#08 引っかかる
「知らないとでも言って欲しいのかしら」
知ってるのか、ホワイ?
「それは、ずばり0でしょ? だって、0しか残ってないもの」
なんだよ。期待したが僕と一緒な答え。
多分、答えが分からないからこその苦し紛れでした発言だな。
なぜなら暗喩でもなんでもないけど、それこそ自然に考えれば0が自然数って事になる。それが分かっていて問題として出したって事は答えは0じゃないんだろう。てか、自然数って高校で習うのか? それとも大学とか、そんなレベルなのか?
ハウは、悪戯っぽくもケラケラと笑う。
「姉貴。これは中学生で習う数学。むしろ数学にもなれない算数レベルの問題だわさ。しかも言わせてもらえれば裏を読む姉貴には、うってつけの問題だったんだわさ」
右人差し指をピーンと力強く立ててからホワイの顔を下から、ぐっとのぞき込む。
うおっ。
煽る。煽る。ハウの悪戯も、ここまでくれば少しだけ怖いぞ。
「そ、それがどうしたの? 自然数は0じゃないって言うの?」
白く綺麗な顔を更に白くして珍しくもタジタジになるホワイ。
「実は、さっきの問題の出し方にはハウちゃんお得意のトリックが仕込まれていたんだわさ。0より大きければ正の数で小さければ負の数だよね。そう言われると?」
「あぅ!」
あぅ、なんて言うホワイが逆に可愛く思えるのはギャップか。
「そそ。残ってるものはって考えるよね。それが罠。実は0より大きな数を自然数って言うのさ。つまり正の数の別の言い方なわけ。あひゃひゃ。だまされた」
腹を抱え笑い出すハウ。
「学校で出る問題的には0より大きな数を正の数と言いますが、別の言い方は何でしょう、といった感じになるのかな。トリック解明担当のハウちゃんをなめるなよ?」
そしたら、自然数もまた中学生レベルな問題になるんだわさ。
改めて、僕は、思った。
ここまでハウの目立った活躍がなかったからハウという人間が普通に思えていた。
単なる元気な女子だとなめていたのだ。
しかし、
今の一件で、あのホワイですらハメてしまう様を見てしまっては考えを改めざるを得ない。油断をしていると僕もハメられる危険性があるからだ。ハメられるという事は、すなわち推理ゲームで不利になるという事。本当に気をつけねば、だな。
「まあ、とにかくだわよ。ここからはトリック解明担当のハウちゃんの出番さぁッ」
一体なにを言い出すのかと息をのむ僕。
「さてと」
ドキドキと心臓が大きく脈打ち固まる。
「はいはい。残念なお知らせ。今まで犯人と動機はハッキリと答えたけどトリック自体は教えない。だって教えちゃったらつまらないもの。でもヒントはあげるよ」
ある意味、予測できていた言葉だった。
しかし、
同時に思う事もあるぞ。
確かに犯人も動機も教えてもらった。けど、どうして、そうなるのかは教えてもらってない。つまり納得できる答えではないのだ。無論、それらは自分で考えろという事なんだろうと納得してきた。だがトリックに限ってハッキリとは教えないだと。
何だか騙された気分だ。
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