第4話【顧客2_佐伯 亜綺】

「あ、死にたいな」


そう思ったのはいつだっただろうか。

特に悲観的な感情も無く、なんかカルピス飲みたい、位な気持ちでぽんっと湧いて出た感じだった。


その「ぽんっ」は次第に頻度を増していって、いつしか、私は理想の死に方について考えるようになっていた。


例えば、溺死。水の中から見える最期の景色はロマンチックだと思ったけれど、なんだかんだ都会の水は臭くて濁ってそうなので却下。

では、飛び降りは?学校の屋上、生徒の視線や叫び、先生の怒号や説得を一身に受けながらゆっくりと空中に身を投じる_______なんて考えたけど、その後の死体を考慮すると却下。そもそも私は高所恐怖症だった。


特に面白いことも無く日常を過ごしながら黙々と死について考えていた私がたどり着いたのは首吊り自殺だった。王道ではあるが、死体の外傷が少なくて済むのがメリットだろう。


こうして死に方を決めた私は次に「今年中に死ぬ」と時期を定め、次は場所を検討し始めた


―――が、ここで問題発生。首吊り自殺ができる場所が見つからない。自宅にはロープを吊るせる場所が無いし、なんだか平凡な気がする。だからといってそれ以外の場所は(当たり前だが)ググッても出てこなかった。

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死に場所不動産 藍河夏乃葉 @AK_kanoha

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