第五話
静かな森の開けた場所に、一匹の大きな芋虫がコロがっていた。
その大きな芋虫の横には、悲しき事かな……、簡易テントが無残にコロがっていた……。
太陽さんが、コロがっている、芋虫さんに挨拶をすると。
芋虫さんは、モソモソと動き出すと。そのまま、芋虫さんは、太陽さんにサヨナラの挨拶をしたのだった。
それから……、数十分。時が経つと。
再度、芋虫さんに、太陽さんが挨拶をしてきたのだった。
流石に、芋虫さんも、これ以上は太陽さんの挨拶を無視する事ができないと分かったのか。
「ふゎーーーーー!!!!! わかった、わかったよ。起きればいいんでしょ。異世界に来ても、規則正しく、人を起こしに来るんだね、君は――」
また、数十分の時が経つ。
コクリ、コクリ、と頭部が上下運動を始めている。摩志常に天罰が下った。
二度寝を楽しんでいる。摩志常の頭頂部、目掛けて、大量の朝露が降り注いだ。
「ぶぅ、ばぁ! ゲホ、ゲホ、ケホ、ケホ、ゲッポ! は、はなに、み、みずが!」
摩志常は、あまりの苦しさに、上半身をバタつかせていた。
これは、摩志常が受けるべき、罰なのだ。
一回目に太陽光が当たった時に、摩志常は逃げる様に、木の下の影に移動していた。
そして、二回目の太陽光が当たった時に、素直に起きていれば、よかったのだが……。
二度寝という愚行に走った為に、太陽光に反応した木が活性化して大きく動いた結果が……。
摩志常の頭頂部、目掛けて、大量の朝露が降り注ぐ、という罰になったのだ。
美少女が顔中の穴という穴から、液体を吹き出している姿は、なかなかの官能的である。
鼻に入った水が円滑に、喉を通り。次第に落ち着き始めると。
摩志常は、寝袋から抜け出すと。池の方に赤ちゃんの様に、ハイハイしながら寄っていく。
そして、池の水に映り込む、自分の顔を見るなり。
「ハードだわー!」
そう呟いた後、そのハードの顔を池の水でハードに洗い流すのだった。
あ、タオル持ってきてないし、歯ブラシも持ってきてない。まぁ、いっか……。
もう、ズブ濡れだしね。
次からは、ちゃんとあの積み木の山を、ちゃんと組み立てれる様にならないと駄目ね。
さてと、太陽さんに起こされたんだんし、朝食にしますか。
「え? あれ……? ひ、ひ、火がつかないだけど……」
ガストーチの青い炎が悲しい音を奏でていた。
摩志常は、簡易テントが上手く組み立てられなかったからと、ふて寝し。焚き火台をそのまま、片付ける事なく置きざらしにした為に、摩志常と同じ様に朝露でズブ濡れになってしまっていたのだ。
諦めた顔をしながら、摩志常とは、焚き火台の網の上に置いてままにしていた。雨露塗れのケプラーの持ち、池に向かって背中を丸めながら、トボトボと歩いて行き、ケプラーの中に残っている水を、池に流し捨てると。
また、トボトボと焚き火台を位置まで戻ってくるのであった。
ケプラーを焚き火台をの網の上に置くと。次は横に置いてあった、昨日、使用した二リットルのペットボトルの水を少量ケプラーに注ぎ込むと。軽くケプラーを数回揺らすし、軽くすすぎ洗をした水を焚き火台の中に捨てた。
再度、ケプラーを焚き火台の網の上に乗せると、今度はケプラーの容量の八分目まで水を注ぎ入れた。
左手でケプラーの取っ手を持って持ち上げると、右手の掌をケプラーの底に当てると。
「
摩志常の掌が、野盗の男を焼き殺した時と同じ、溶鉱炉の中の鉄の様に真っ赤な色に染まっていく。
「ほっ、よっ、とっ、よっと、とっと」
テンポの良く掛け声を出しながら、摩志常は。ケプラーの底をペタ、ペタ、と掌を当てたり、外したりと繰り返した。
ケプラーの注ぎ口から白い蒸気が出始めた。
「よくよく考えたら、私の場合……。焚き火台って、必要なかったかも……」
本当に、小さな、小さな、声で呟いた摩志常だった。
ケプラーの中の水が沸騰したのを確認できると、焚き火台の網の上に置くと。
「まぁ、熱した物を置くという意味では、焚き火台は買って正解だったよねぇ……」
と。
また、小さな、小さな、声で呟く。
誰に尋ねているのか知らないが。多分だが、自分自身、納得させる為に不意に言葉として出てきたのだろう。
一人コントをしながら。摩志常は、身の丈以上のリュックサックの中身を漁り出す。
リュックサックの中から三つ、物を取り出した。
一つ目に取り出した物の上蓋をパカっと開け。そして、紙でできた中蓋をペリペリと中央部分まで捲りあげる。
次に、二つ目に取り出した物は、ケプラーの横に置くだけ。
そして、三つ目に取り出した物で、一つ目に取り出した物の中身を一杯分すくい。二つ目のケプラーの横に置いた物の中に、入れる。
最後に、ケプラーの中に入っているお湯を二つ目の中に流し込んだら、三つ目に取り出した物でかき混ぜたら完成。
マグカップに摩志常は、口に近づけると、数回、優しく息を吹きかける。
その小さな息を吹きかけていた、ピンク色の可愛らしい唇をマグカップの縁に、口付けをするよりも、優しく触れさせると。
クピ、クピ、と少量ずつ喉を鳴らしながら、飲んでいく。
その姿からは、気品あふれるお嬢様、オーラを発していたのだったが。
「ぅ、うめーーーっ。マジかよ!」
その発言で全てを一瞬で台無しに終わらせる、摩志常だった…………。
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