第126話 決戦

「東の王は自国内の魔王達を全て配下にしたのだろう。だが、ジョブは変わらない。東の国では無いどこかに自分以上の存在がいるのを知った。調べている内にダンジョンを作れない錬金術師の王の噂を聞いた……ダンジョンを作らない理由から私のジョブを推測したのだろう。今、思えば誰かにダンジョンを作らせて私が作ったと言えば良かったのだがな。こんな事になるとは全く考えつかなかったのだよ……」


 自分が最高位になる為だけに戦争を仕掛けてくるとは想像出来ないだろうな……


「敵の側近は魔王クラスと言う事でしょうか?」


 ファリスが恐縮しながら王に尋ねた。


「そうだろうな。かなり高位の魔王に守られているだろうが……」


 王がビッケの方を見た。


「ビッケ君があっさりと倒しているのを見たよ……」


「確かに強そうだったけどザッジ兄より弱いねー」


 比較対象が悪すぎる。全く参考にならないぞ。


「それではさっぱり分からないよ」


「うーん……アルカディア村の人達くらいかな?」


 ふーん それなら何となく分かるな。


 結構強いじゃないか……


「アルカディア村の歴史は知っているが……村民が魔王級の強さなのか? とんでもないな……」


「アルカディア村だけではなく他の村の者達も力をつけてますので徐々に強さの差は無くなってきています」


 ファリスはいつもの調子で自信満々に王に説明した。


「富国強兵……その名に恥じない理想の国だな。悔しいな。私も理想の国を作りたい。自分の国なのに全く思い通りに進める事が出来ない……ダンジョンが作れないのが大きな一因ではあるが、抵抗勢力が多すぎるのがどうにもならない」


「まず平和を取り戻してゆっくり取り組めばいいですよ。アルカディアの様な極小国と貴国の様な大国を同列で語る事は出来ません」


 いろいろ話をしたかったが明日は決戦だ。簡単な食事を取り早めに就寝する。

 真夜中にアストレーア達が合流した。これで総勢14名になった。ファリスとアストレーアが作戦の打ち合わせをしていたがすぐに終わった。


 とてもシンプルな作戦だからな


 ただ突撃するだけだ


 しっかりと睡眠を取り、万全の体調で戦いを挑む



 やはり早朝に目が覚めた。


 光輝くあの星が自分を見ている様な気がする


 少しずつ体を動かして剣の素振りする


 そして剣の型をやり 軽く汗を流す


 心 技 体  全てが整っている


 最高の状態だ



 シャイニングスターを輝く星に向けて勝利を誓う


 


「相変わらず早起きね」


 ルナが起きてきた。ちょうどいいので持ってきたリュックサックからハイエリクサーを取り出してルナに渡す。


「なるべくなら使いたくないけど最後の手段だよ」


「……どんな戦いになるのか分からないわね」


 ルナも槍を持ってきて体を動かし始めた。


 美しい舞を見ているようだ……


「とても綺麗だね」


 無駄の無い洗練された動きだ。


 みんな起きてきて各自で準備をしている。装備を整えて朝日が完全に登るのを待つ。


 ファリスの指示に従って突撃陣形が組まれた。


 馬は使わない。なるべく近くまで静かに忍び寄る。


 先頭はザッジ、2列目にヒナとルナ、3列目にアストレーアとステラとミンシア、その後ろにカナデとファリスを囲む円陣を美少女騎士達が組んで、最後尾に隣国の王と自分、護衛役のビッケの体制だ。


 ファリスが本のページを次々にめくり、強化魔法を全員に唱えた。


「まさか本が武器だったとは……魔導書か……よくここまで育ってくれた」


「ファリス無しでは今のアルカディアは無いと言っていいです。行政から軍事まで彼女の知識に支えられてきました」


 ザッジが静かに進み出した。皆、合わせて進み出す。


 しばらくゆっくりと歩いていたが、ザッジが止まって背中に背負っている巨大な両手剣を抜剣した。みんな同じ様にそれぞれの武器を構えた。


 ザッジが後ろを見る事無く一気に前方に駆け出す


 オークの群れに向けて突撃していく


 まるでスライムでも倒す様に簡単にオークをなぎ倒す


 ザッジは速度を落とさずに突進して道を切り開く


 討ち漏らした敵はヒナとルナが綺麗に倒していく


 オークの中に巨大な者やオーガ、トロールが混じってきた


 それでもザッジの速度は遅くならない


 驚異的な突進力だ!


 アストレーア、ステラ、ミンシアも戦い始めた


 音も無く ひたすら突き進む


 魔物達は急襲されて陣形を整える事も出来ずに葬られる


「信じられない強さだな……次元が違う」


 まだ6名しか戦っていないが本気で戦っているので全く後ろを行く者達の出番が無い。


 カナデが少しだけ立ち止まって魔法を唱えた


 魅了されたオークの群れがトロールとオーガに襲いかかる


 かなり進んだ所で魔物達が大騒ぎし始めた


 陣形を整えて守りを固めようとしているようだ


 敵の数が急激に増してきた


 だがもう遅い


 敵本陣のテントが目の前ある


 テントから若い男が出てきた


「あれが東の国の王だ」


 ザッジが問答無用で斬りかかる 敵は丸腰だ 

 

 凄まじい衝撃音が鳴り響いた 


 敵王の手に禍々しい黒い剣が握られていた


 ザッジの剣撃を受けたのか……


 ザッジが連続で斬りかかりヒナとルナも槍で攻撃に加わる


 魔物達が慌てて攻撃を仕掛けてきた


 こちらの陣形は敵王を囲む円陣に変化している


 カナデが遅延魔法を唱えた


 ファリスがサラマンダーを2体召喚した


「ルナさん! アストレーアさんと交代です!」


 ファリスの指示でルナが下がってアストレーアが敵王に攻撃を仕掛けた。


 下がったルナがすぐに白い竜を召喚した!


 集まってきた魔物達を寄せつけない布陣だ


 ヒナの雷魔法が敵王に直撃した! 無詠唱なので全く予備動作が無い為、回避するのは不可能だろう


 ……しかし全くダメージ無いようだ


 なんだ? 防御魔法か?


「ディスペルマジック!」


 すかさずファリスが解除魔法を唱えた!


 そこにヒナの雷魔法が重ねられる


 激しい雷撃が敵王を直撃して丸焦げにした


 ダメージは与えたようだが動きに変化は無い


 ザッジ、アストレーア、ヒナに囲まれて凄まじい攻撃を受けているのにしっかりと受け凌いでいる


 丸焦げになっていた体が次第に修復していき、黒い闇に包まれた。


 闇が消えると敵王は黒い鎧を纏っていた

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