第96話 アルカディアの実力

 敵に襲わせる村が予定通りに2日で作られた。作った者達はすぐに違う村の建設に向かった。建設が得意な者達が集められた建設部隊だ。次は山沿いに拠点となるしっかりした村を作る。

 入れ替わりで偽の村人が生活を始めた。ビッケの特殊部隊だ。ターゲットになる敵の砦周辺からこちらに誘導するように食料を置いて回っている。


「ゴブリンの斥候が村を発見して戻って行きました」


「では、予定通りに多少抵抗して退却して下さい」


 ファリスから指示が出た。


 今、本陣は隣り村にある。村から北に半日程の場所に偽の村がある。その東の山沿いには小さな村が目立ったないように作られている。

 更に北側に地形を利用した計略用の村の建設にも着手した。盆地の様に四方を小高い山に囲まれた場所だ。

 かなりの速度で計画が進行していく。物資が次々にアルカディア国から運ばれて行く。


 2日後、オークとゴブリンの部隊に村が襲われ、予定通りに特殊部隊は退却して村の様子を監視している。


「ゴブリンの斥候が各地の砦に放たれ、各地から部隊が村に集まり始めました!」


 よし! 思った通りだ。いい村があれば周りからも魔物が集まってくる。


「では、オークのナイトを暗殺します。その後、オークのみを倒してゴブリンは逃します」


 ゴブリンに救援を呼びに行かせる。そして同じ事を繰り返してオークの数を削っていく。


「ビッケ、頼んだよ。訓練してきたと思うけど無理はしない様に」


「ダンジョンでも練習したから大丈夫だよー」


 今晩、闇に紛れて村に忍びこみオークのナイトを倒して、指揮系統を崩壊させる。ビッケの特殊部隊が村に向かった。


 深夜、ビッケの部隊の者が報告に来た。


「オークのナイト9匹を仕留めました。全く気付かれていません。こちらは無傷です。仕事は完璧です」


 さすがだ! よくやったビッケ!!


「では朝から攻撃を仕掛けます。今回はウエストゲート騎士団に行って貰います。周囲の警戒としてセントラル騎士団に行って貰います」


 各騎士団を順番に派遣して駆除して貰う。相手はリーダーを失っているただの魔物の群れだ。訓練を重ねた騎士団の敵ではない。


「騎士団による駆除が一巡したら北上します」


「最後はフロンティア騎士団だから一緒に出るよ」


「はい。駆除後にそちらへ本陣を移します」


 最後は完全に包囲して1匹も逃がさない。ゴブリンも完全に駆除する。




「ウエストゲート騎士団が村を包囲しました」


「フロンティア騎士団! 出撃します!!」


 村の近くまで移動すると小さな林がある。そこに村の中に侵入出来る地下道への入口が隠されている。


「何度も訓練してきたんだ。落ち着いて駆除しよう」


 リーダーを先頭に地下道へ入って行く。地下道を抜けると建物の裏に陣形を整える事が出来るスペースがある。

 円陣を組み広場に向かって行く。そこでようやく敵はこちらの侵入に気付いた。


「よし! 広場を確保した。このまましっかり戦うぞ!」


 セレスが中央で杖を構えて回復の準備をしている。更にもう1人魔法使いがいる。村長から訓練を受けたフロンティア村民だ。

 円陣に加わり一緒にオーク達を待ち構える。


 オークとゴブリンが散発的に攻撃を仕掛けくる。


 5〜6人でしっかりと盾で防いで囲んで倒す!


 そしてすぐに円陣を組み直す。


 指揮官のいない魔物達は何の工夫もなく突っ込んで来ては倒されていく。


「0時方向! まとまった数が来ます!!」


「魔法打ちます!! ファイアーボール!」


 魔法使いの号令と同時に円陣の0時方向が開かれ、大きな火球がオークの群に放たれた!


 ボン!!!


 オークの群れが火球に包まれて焼かれていく。すぐに円陣を組み直す。3匹生き残って向かってきたが、火ダルマ状態だ。あっという間に駆除された。


「よし! いいぞ! 訓練通りだ!」


 全く相手にならないな……


 すぐに駆除は終わってしまった。魔物から魔石を取り出して、死体を焼却処分する。

 すぐに全軍が移動してきて本陣が設営された。


「ナック様は魔石を持ってアルカディア村に戻って下さい」


「分かった。よろしく頼むよ」


 ファリスに後を任せて自宅に戻る。ダンジョンの延伸が出来るか試してみるのだ。

 虹色魔石の周りに収集した魔石をばら撒いて、用意しておいた設計図を読ませてみるとスッと吸い込まれた。


 これで延伸が出来たな!


 北のダンジョン砦から東の山の中を通って、山沿いに建設した村に通じたはずだ。しっかり計算された設計図なので大丈夫だと思うが、念のため馬でダンジョン内を進んで村まで行ってみる。

 ダンジョン砦から少し北東に走ってから真っ直ぐ北に向かった。


 自分が走っている所だけが明るく照らされている。


 節約か……やるな羊娘!


 しばらく走ると反対側からも馬に乗った人が来た。建設部隊の人だ。


「ナックさん、延伸は成功です! ほとんど誤差無く、入口が出現しました!」


「そうか! では水を流してみるから気をつけてくれ」


 ダンジョン砦に戻って水門を開けてもらう。東の山から引き込んだ河川の水が勢いよく流れていく。


 この水が戻ってくれば成功だ


 水路を流れた水は北の村で折り返し、こちらに戻ってきて元の河川に戻る仕組みにした。そんなに強い流れではないので上手くいっているか確認するのに時間がかかる。

 砦で休息を取って待つ事にした。


 この間にも北上の計画はどんどん進行している。恐ろしい程のスピードだ。

 1日待ってやっと水が戻ってきた。後は水門で水位を調整するだけで自由に流れを作り出す事が出来る。


「ナックさん、イカダを流してみます」


 食料を積んだイカダを流してみるとゆっくりと進んでいった。


 これで補給の心配は全くいらない。


 長城までこの水路が繋がれば


長城だけをアルカディア国が手に入れる事も可能だ

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