第92話 バトルロイヤル

 アルカディア国の支援に来てくれた商人ルドネ達を歓待する宴がアルカディア村で開かれる事になった。

 これから世話になる各村の騎士団から代表者が数名ずつ参加して顔合わせも行う。


 各騎士団が集まるのでちょっとした催しを行う事になった

 アルカディア国の実際の強さを商人ルドネ達に知って貰う為に模擬試合を行う。


 目玉としてザッジ、ビッケ、ジェロ、そして何故か自分の戦いが予定された。


「うーん……すぐにやられてしまいそうだ……」


「でも、王都に行っている間に訓練していたのでしょ?」


 確かに訓練はしたけど魔物相手の方が多い。ルナはあまり心配していないみたいだけど、相手が悪すぎる。


 アルカディア最強の3人が相手じゃないか……


 最初にノースフォレスト騎士団とセントラル騎士団の戦いが行われた。


「これは……どちらの騎士団もかなり鍛えていますね。王都騎士団と比べても勝るとも劣らない強さです。素晴らしい」


 商人ルドネが驚いている。各地の騎士団を見て来ているルドネの評価なら確かだろう。


 次にウエストゲート騎士団とフロンティア騎士団の戦いが組まれた。

 ウエストゲート騎士団は若者が多く、かなり強いと言われいる。一方でフロンティア騎士団は1番弱いと言われている。だが……


「フロンティア騎士団は守りが固いですね。しかも組織的です。ウエストゲート騎士団は個々の強さは上でしょうが、若さで押す感じですね」


 最初はウエストゲート騎士団が優勢に思えたが、少しずつフロンティア騎士団が巻き返していく。


 やはりフロンティア騎士団の方が強いな……


「持久戦に持ち込めばフロンティア騎士団は強いですね。ウエストゲート騎士団は攻撃力がありますね」


「どちらの騎士団もかなり強いぞ。これよりもアルカディア騎士団は強いというのか……」


 ルドネとドワーフが各騎士団を分析して装備を考えてくれている。

 ウエストゲート騎士団は劣勢になり時間切れで勝負は終わった。


 フロンティア騎士団に戦い方を学びに行きたいと各騎士団から申し出があった。


「もちろんいいんだが、各騎士団の良いところを伸ばすのも大事だ。みんなそれぞれに強かった。よく訓練しているのがはっきり分かるよ」


 クレアとアルカディア騎士団は北の守りに行っている。


 次は各隊長と自分の戦いだ。


「久しぶりに本気で戦えそうだ」


 ザッジはやる気マンマンだ。訓練用の木製両手剣を久しぶりに持ち出して喜んでいる。


「そうだねー 僕もいい訓練になるよ」


 ビッケもやる気マンマンだ。木製の刀の二刀流だ。


「やれやれだぜ……」


 ジェロは面倒くさそうだ……武器も持っていない……


「ちょっとは手加減してくれよ」


 自分はフロンティア騎士団の装備をフル装備だ。青のフルプレートアーマーに中型の盾、武器だけは訓練用の木製剣に布を巻いた物だ。


 他の3人は普段着だ……


「では開始して下さい!」


 ファリスの号令で戦いが始まった。


 当然のように1番弱い俺が狙われる……


 ザッジが両手剣で薙ぎ払ってきた!


 盾で受けつつ勢いを逸らす! まともに受けたら吹っ飛ばされてしまう。


 その瞬間にビッケが後ろから切り掛かってきた!


 体を捻り、剣と盾で何とか防ぐ……


「ぐっ……」


 そして……ジェロが上段蹴りを繰り出してきた!


 バシ!


 同じく上段蹴りを繰り出して蹴りを受け止めた!


 すぐに後ろに引いて盾を構える……


 クッ……ついていくのでやっとだ……受けた両手と足が痺れている。


「まさか止めるとはな……だが面白くなったな、ジェロ? お前の本気も見れそうだ」


「そうだねー 面白そうだね」


「そういう事みたいだな」


「やれやれだぜ……」


 今度はジェロに襲いかかった!


 盾を突き出して間合いを詰め、剣で突きを放った!


 ジェロはヌルっと下に潜って足払いを繰り出してきた!


 そこにビッケが飛びかかった!


「ウヒャーーー!」


 ゴロっと地面に転がって何とか交わしたが……


 ザッジが両手剣で斬りつけた!


 バン!


 ジェロが手の平で剣身を挟んで白刃どりで受けた!


 そこにさらにビッケが飛びかかった!


「ウヒャーーー!」


 また、地面に転がって交わした!


 コイツ……かなり余裕があるな……わざと変な声を出して大袈裟に避けているがしっかり見切っている。


「本気は見れそうも無いな……」


 4人が動きを止めて睨み合う。


 そして……やっぱり1番弱い所が狙われる……


 これじゃあ3対1じゃないか!


 ザッジは正攻法だ。ビッケは死角から狙ってくる。ジェロは隙をつき意外性のある攻撃を狙ってくる。


 それが分かっていれば対応出来る!


 防御しか出来ないが……


 ひたすら防御で必死に集中して防いでいく


「そこまで! 時間です」


 ふぅー 何とか攻撃を受けずに済んだな……


 鎧を脱いでルドネ達の元に戻る。


「いやーー、お恥ずかしい限りです。手も足も出ません」


「ええ?! あれは普通の者には防げないと思いますが……」


「みんな手加減してくれてますからね。本気でやられたら最初で退場ですよ」


「あれが本気じゃないのか……信じられない強さだ」


 ドワーフも驚いているが本気でやられたらとても相手にならない。


「お? アオイも来てたのか。もうちょっと良い所を見せたかったけど反撃も出来なかったよ」


 アオイがドワーフの隣りで見学していた。


 丁度いいな。武器を依頼しておこう!


「アオイ、1番最後でいいから俺の武器を作ってくれ」


「ええ?! 私がですか……」


 んん? 何かみんなの視線が集まっている気がする……


 おかしな事を言ったか?


 頼んだ方が良かったはずだけど……


「アオイ! これは大変だぞ……」


 ドワーフが深刻な顔をしてアオイに声をかけた。


「アオイ、とても名誉な事だ。あれだけの武を持った王を私も見た事が無い。全力で当たるしか無い……」


 商人ルドネも深刻な顔でアオイに声をかけた。


 何でそうなるんだ?


 一方的にやられてただけなのに……


「謹んで受けさせて頂きます……」


 アオイは悲壮な表情で請け負ってくれた。


「「おお!!」」


「ついにナックさんが武器を頼んだぞ!!」


「あの強さに合う武器は余程の物が必要だな!」


 周囲から騒めきが起きている。


 何だか大変な事になってしまったみたいだ。

 

 ごめんよ……アオイ……頑張ってくれ!

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