急転直下!俺の物語!

目立ちたくないはフラグでした

 翌日、始業前の教室にて。

 教室の出入口扉とか廊下の間の窓から、俺を見に来た生徒達の声がする。


「あっ!いた!わー!近くで見てもちっこーい!」

 とか。


「あのコでしょ?黒竜王に勝ったってコ。ぐるぐるメガネ無い方がカワイイのにもったいないなあ」

 とか。


「見えないよう!どこー?」

「また後に見に来よう!ホームルーム始まっちゃうよっ」

 とか。


 話した事も無いクラスメイトからも。


「昨日のバトル凄かったよー!ラミィのコスも完成度高くって可愛かった!」

 とか。


「コウダさんてドコ中なのっ?オトモダチになりたいなあ」

 とか。


「コウダさん!今日一緒にお昼食べない?ねっ?」

「あ!抜けがけはズルい!私が言おうと思ってたのにっ!」

 とかねー。


 黒竜王との戦いの後、俺は一躍有名人、というか時のヒトになっちゃって。

 目立ってはイケナイフラグはやっぱり有効説を立証してしまいましたとさ。

 隣のクラスからとか、2年生とか3年生まで俺を一目見ようとぞろぞろ集まっちゃってねー。

 さながら珍獣目当ての動物園ですよー!


 まあ、ねー。ソウデスヨネー。

 ポンコツザコレベルのだっさい地味子が黒竜王やっつけちゃったんだから。

 

 まあ、ケンソンせずにドヤ顔してもいいのかも知れないけど。

 ぐるぐるメガネを外したら超絶美少女ってのもバレちゃったし。


 試合に勝ったって言うけど、あれはあくまでも俺の実力で倒したワケじゃなくて、お着替えガチャでたまたま出たSSレア『愛の大魔王天使ラジカルラミィ』のおかげだからねー。

 俺の実力だけでは絶対勝てなかったし、消し炭になってた、と思うんだよねー。


 消し炭から逃れる方法もあるにはあった。

 だがしかしっ。

 黒竜王の嫁になるなんて選択肢は考えたくも無いっ!


 嫁にされて黒竜王の『ジエンドオブソウロウ』の夜のお相手なんてさせられたらっ!

 うおお、俺のお尻に想像を絶する悲劇が!俺のお尻に想像を絶する悲劇が!舞い降りて来ちゃいますよー!

 想像を絶する悲劇が舞い降りるってどんなのかよくわかんないけど、まあそんなカンジです!

 勝てて良かった!

 ありがとうラジカルラミィ!


「おはようっ、コウダさん!」

「おはよう、ムラサメさんっ」


 ザコレベル11番のムラサメさん。

 昨日の戦いの前に校長室で『毎年お墓参りに行くようごおお』って泣きながらエールを贈ってくれたんだっけ。

 まあね!優しいココロ遣いと受け止めておきますよ!

 俺が言うのもなんだけど、今日もちんちくりんでカワイイですよムラサメさん!

 俺の中では妹系で、さらに隠れ美少女ランキング1位ですよ!

 

「昨日のバトルスゴかったね、コウダさん!どこか痛い所とか無いの?」


「うん、全然大丈夫。寮のお風呂で癒されたから」


 ユリユリ寮のお風呂はスゴいんだよー、そうなんだー、なんて他愛も無い会話。

 ムラサメさんて、けっこう癒しキャラだったりするんだよなー。ちっちゃくてカワイイし、守ってあげたくなる感がハンパない!


 きゃっきゃウフフと俺とムラサメさんと数名がお話中。


 いきなり、突然、唐突に!


 珍獣の俺を見に来た3年生の生徒から耳を疑うような声が聞こえて来た!

 

「見えないよう。うー!あっ!見えたっ。あれっ?ぐるぐるメガネで顔が見えないー!残念っ」


「あ、見えた。おお、ちっちゃい。へー、カワイイじゃん。でもあのコ、男の子らしいよ?」


 なぬっ!?


 多くの生徒がワイワイする中、一人の生徒が突然の爆弾発言!


 嘘ばっかりー!とか、あんなカワイイコがそんなワケないじゃーん!とか聞こえてはきますけれども!

 俺は内心ヒヤヒヤもんの冷や汗タラタラですよ!


 他の生徒達は気付かなかったみたいだけど、俺は耳をでっかくしてその娘の話に意識を全集中!

 申し訳ないけど、ムラサメさん達の声はシャットダウンです!


「なんでなんでー?なんで男って思ったの?あんなカワイイのに?」


「私じゃなくて私の友達がね『見ちゃった』んだって。リングの上でさー、ヤンキーみたいな女神様がラミィちゃんのホットパンツずり下ろしたでしょ?」


 それ、ヤンキー『みたいな』じゃなくてヤンキーなんだけどねっ。

 尚も続く会話に、意識を耳に全集中です!

 突然フリーズした俺にムラサメさんは不思議そうな顔をしてますがっ!


「あー……光ってたよね。コカンが黒く。びっくりしたよね」


「勇者育成コースの友達が『スキルオフ』って言うスキル持ってるんだけどさー」


「スキルオフ?ってどんなの?」


「幻視系のスキルを無効にするヤツだよ。ほら、あるでしょ。謎の光とか、謎の煙とか。ああいうのを無効化できるんだって」


 なんとっ!そんなスキル持ってる娘がいたのかっ!


「一瞬だったし、ちっちゃくてハッキリとはわかんなかったみたいなんだけどさー。ついてたっぽいって言ってたんだよー」


 なぬっ!見られた!コヒカリ君をっ!見られたっ!?

 あと、ちっちゃいとか言っちゃダメっ!


 と、その時!


 ピンポンパンポーン♪


『あー、テステス。ん?入っとる?コレじゃろ?うむ。あー、1年のコウダヒカリ君。コウダヒカリ君。大至急、校長室においでませ、ですじゃ』


 と!神様校長先生からのお呼び出し!

 助かったっ!ここは切り抜けられるっ!


「あっ!ボク行かなきゃっ!ムラサメさんっ、また後でねっ」


 そそくさと席を立ち、わらわらと集まってる生徒達の間をすり抜けて俺は脱兎の如く教室を後にした。


 ええそうです!文字通りのウサギさん!

 俺は動物園を抜け出すウサギさんです!

 とてとてとてっと全力疾走!

 はっ!


 廊下は走っちゃイケマセンっ!


 早歩きで目指すは校長室!

 いったい何の話やらっ。とりあえずあの場から逃げられたのは幸運だったのかもうおおおっ!

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