袋に入れて深呼吸

 俺の珍プレーに笑いが止まらなかったにも関わらず、3ゲーム連続300《パーフェクト》、という常人では考えられないスコアを叩き出す俺意外の3人。

 普通、ロフトボール《浮きタマタマ》は禁止なんだけど、女神とか勇者、魔王専用レーンはそれがOK。

 専用レーンがあるのも納得ですよ。

 ピンが爆発したみたいに吹っ飛ぶからね!

 

 俺はと言えばただただ散々無惨な結果でしたよー!

 悪夢のような時間だったボーリングを終えて、ここからはフィルフィー達とは別行動。


「じゃーね、お姉ちゃん!いつまでも恥ずかしがってないで手くらい繋ぎなさいよねっ」


「ててててててててててっ、手をっ!?そそそそそそそんなコトしませぬわっ、ですわっ!」


「あー?あたしは別に構わないけどな?」


「えっ!?」


「ジョーダンだっつーの」


 なんて言ってフィルフィーは素知らぬ顔だけど、ペリメール様の狼狽っぷりをどう思ってるのかなー?

 天然ヤンキー女神の思考は謎ですよ!


           ◇


 気が付けば夕方で。もう帰る時間になっちゃって。

 バス停に向かって歩いてる途中で出会ったのは。


「おや、ヒカリとラーフィアじゃないか。偶然だな」


 声をかけてきたのは長い黒髪の美人さん。この声どっかで聞き覚えが、って!


「サトナカ教官!?」


「学校の外なんだからエフレフでいいよ、ヒカリ」


 おおー!まさかのエフレフさん!

 しかも!

 私服!エフレフさんの私服姿なんて初めて見た!

 上はグレーのサマーニットって言うんですかね?オパイがぼいん!ってカンジのアレですよ!金色のネックレスがオパイに乗っかっちゃってます!

 下は白のタイトなパンツルックにハイヒールでとってもオシャレですよ!

 しかーも!メガネを外して髪を下ろしてるから普段の印象とは全然違う!きりっとメガネもステキだけど、メガネを外すと『キレイな歳上のお姉さん感』が増し増しですよ!


「こんにちは、サトナカ先生っ」


 ラーフィアちゃんが俺の前にすっ、と出てエフレフさんに挨拶です。

 ラーフィアちゃんは俺より背が高いからエフレフさんのオパイが、イヤ違うっ。

 エフレフさんの私服姿がラーフィアちゃんの背中で遮られちゃいましたよ。

 目の前にラーフィアちゃんのキレイな銀髪が!でもエフレフさんのオパイも、イヤ違うっ、私服も見たいっ。


「今日はヒカリちゃんとお買い物なんですよー。二人で初めてのお買い物だから楽しみにしてたんですよー!」


「そうか。私も友人と待ち合わせなんだよ。二人のジャマをするつもりはないけど……クロジョの制服を着ているってコトを忘れちゃいけないよ?」


「はいっ。モチロンです、サトナカ先生!デートですかっ?」


「ん?まあ、そんなトコロかな?」


 元気に返事をするラーフィアちゃん!それより気になるコトがっ!えっ?えっ?先生、デートなんですかっ?ちょっとショックなんですけどっ。


「先生のその服って、デート服ですか?おっぱい好きの人なら誰でもホイホイついて来るヤツですよね!私はおっぱい無いから羨ましいですヨー」


 ちょっとラーフィアちゃんっ!?なんかトゲのある言い方ですよっ?


「胸を強調する服は好きじゃないんだが友人が着て来いって言うものだから仕方なく、だよ。ラーフィアは……希望を持とう、うん」


 サトナカ教官っ!?イヤ、サトナカ先生っ!?イヤ、エフレフさんっ!?憐れむような目でラーフィアちゃんの胸を見ちゃダメですよっ!


「サトナカ先生は崖っぷちですものねっ。デートするのも必死になっちゃいますよねっ?おっぱいはいい武器ですものねっ」


 え!?ラーフィアちゃんっ?なんか毒吐きましたよっ!?なんでっ?


「崖っぷちとは手厳しいなあ、ラーフィア。ふふふふふふふふふふふふ」


 おおー、オトナの対応ですよエフレフさん!でも目が笑ってナイですよ!

 なんか、ピンと張り詰めた緊迫感がっ!

 黒の虎と銀の虎が睨み合い!みたいな!


「レフっ!お待たせっ!ん?そのコ達は?生徒さん?」


 俺達の背後からエフレフさんを愛称で呼ぶ声に振り向くと。

 すらりと背の高いショートボブのキレイなお姉さん。エフレフさんと色違いのサマーニットは白色。フワッとしたロングスカートがとっても似合う爽やか美人!

 ん?ネックレスがお揃いですよ?

 二人共に背が高いからエフレフさんと並ぶとめちゃめちゃ絵になる!雑誌のモデルかなっ?てくらいに人目を引きます!


「ああ、私の教え子だよ。こっちのぐるぐるメガネの方がこの前話したコだ」


「ああ!ザコ12番ちゃんかあ!カワイイねー♡」


 ちょっとっ!初対面の人をザコって言っちゃダメでしょっ!


「こんにちはっ。二人もデートかなっ?」


 ん?も、って……コトは?


「私の友人のサーリアだよ。サーリア、こちらがラーフィア。ぐるぐるメガネがヒカリだよ」


サーリアです!よろしくぅ♪ラーフィアちゃんはキレイな髪だねえ」


「えっ、ありがとうございますっ。サーリアさんもサトナカ先生とお揃いのニットがステキですよっ!」


「うふふっ。ありがとー♡でも、ちょっとあざとかったかなー、って。レフは?イヤじゃない?」


「イヤなものか。ペアルックなんて珍しくもないだろう?」


 おおー。男前ですよエフレフさんっ。俺達の前で恥ずかしげもなくそんな台詞を言えるなんてっ!


「じゃあ行こっか、レフ!またね、お二人さん♪」


 それじゃあね、と残してエフレフさん達は行ってしまった。後ろ姿の二人もめっちゃ絵になってます!


「サトナカ先生、ステキだよねえ」


 さっきの毒舌は何処へやら。ラーフィアちゃんがサトナカ先生と友人の後ろ姿を目で追ってる。

 サーリアさんがサトナカ先生の薬指と小指の二本を握ってます。

 んっ?友人、なんだよね?

 ニコニコ笑顔でサトナカ先生を見つめる目がハートマークになってますよ?

 心からサトナカ先生のコト信頼してるんだろうな、って誰が見てもそう思うようなニコニコ笑顔。

 友人……?


「いいなあ。ステキなカップルだよね」

「えっ?そうなのっ?」


「ヒカリちゃんはニブイのかな?誰が見たってじゃない?」


 サトナカ先生を見送りつつ、ラーフィアちゃんが俺の方をチラチラっとちら見です!

 おおう、俺はどうすればイイノデスカっ!?

 なんとコメントすればイイノデスカっ!?

 

「私の夢はね、ヒカリちゃんっ」


 ん?夢っ?『野望』の間違いじゃないのかなっ?


「同性間での妊娠と出産が可能になるような世界を造るコトなの!」


 えっ!?……同性間っ?いきなり壮大なハナシになりましたよっ!?


「それって……男が子供を産む、って事も含まれるの?」


「私はねヒカリちゃん。前にも言ったけど、オトコがキライ。大キライ。私の野望はオトコの『アレ』をめちゃめちゃちっちゃくしてやるコトだけど……」


 オオウ、その野望はやっぱり継続なんですねラーフィアちゃんっ。


「どうして女同士で子供は出来ないの?それはオトコ同士でも言えるコトなんだけど……恋愛ってね。男女だけのものじゃ無いと思うの。好きになった相手がたまたまオトコだったり、オンナだったりする場合だってあるでしょ?」


「うん……そうだね」


「同性同士でも、好きな人の子供を産みたい、産んで欲しいって願うのはいけないコトなのかな?自然の摂理を破壊するコトなのかな?」


 ラーフィアちゃんの瞳は強い意志を持って、でもちょっと寂しそうで。

 真剣だった。

 決して冗談半分とかじゃなく。


 心からそんな世界を。

 同性同士でも子供が出来るような世界を創造したいと。


 その瞳が語っていた。


 ラーフィアちゃんのオーシャンブルーの瞳がじっと俺を見つめる。

 

「ねえ、ヒカリちゃん……」

「……はいっ」


「『さっき、サトナカ先生のおっぱい見てたでしょ?』」


「えっ!?」


 ラーフィアちゃんっ!?なんかイケボになってますよっ!?真面目な話がぶっとんじゃいましたよっ!?


「『サトナカ先生のおっぱい見てたよね?』」


 クールでダンディーなイケボっ!

 えっ?俺、怒られてるっ?

 これはっ!

 ヤキモチですかっ!?


「『サトナカ先生のおっぱい見てたよねっ?』」


 ラーフィアちゃん!お顔がちこうございますよっ!?


「チラッと!チラッとだけだからっ」


「やっぱり見てたんだ。ふーん。へーえ。ヒカリちゃんはおっぱい星人だったんだねー」


 プリプリっとちょいおこですよラーフィアちゃん!

 他の女の人見てたら妬いちゃったなんて、女の子同士でもそんなコトあるのっ?

 まあ、俺は男のなんですけどねっ。


 て言うか、ハナシがぶっ飛びましたよラーフィアちゃん!

 新世界創造の話は何処へやらっ。


 サトナカ先生のおっぱいガン見疑惑を着せられて、俺はタジタジになって釈明ですよ!

 単独釈明会見ですよー!


「ん!」


 と、昨晩のようにほっぺたを俺に向けるラーフィアちゃん。

 これはっ!もしかして!

 ほっぺたにチューを求めていらっしゃる!?


「チューしてくれたら許してあげなくもないよ?」


 と、ラーフィアちゃん!

 やはり!

 おっぱいガン見をそれで許して頂けるなら!

 むしろ『ハイ、喜んでー!』ですよー!


「今なら人もいないし、ねっ?」


 積極的ですよラーフィアちゃん!

 なんか逃げられそうにない雰囲気!

 ここはっ!男のの根性を見せる時!


「……じゃあ」


 ちゅ。


 なんつってほっぺにチューですよ!ナニやってんだ俺っ!

 罰が当たる!きっと!天罰が下るに違いないですよー!


「んふふふっ♡」

 

 なんつってラーフィアちゃんはニコニコ笑顔を見せてくれた。ほっ。よかったっ。


 ……良かったのかっ?


「今日は楽しかったね、ヒカリちゃん♡お揃いの下着も買えたし、ヒカリちゃんのパンティーも貰えたし♡」


 ポン!とランジェリーショップの紙袋にタッチして上機嫌ですよラーフィアちゃん。


 おパンツ貰えたとは言いますがっ!俺からすれば略奪された感があるんデスケドっ!?


 まさかホントに渡すコトになるとはねっ。

 

 ボーリング場のトイレでおパンツ脱いでラーフィアちゃんにプレゼントっ!

 今は買ったばかりのお揃いのおパンツ穿いてますよ、だってそれしか無いからねっ。

 異世界転生してこんな目に合うなんて想像もつきませんでしたようごおおっ!


「これ袋に入れて深呼吸するから!ねっ?」


「えっ!?」


 ねっ?て言われても!ごゆっくりご堪能あれなんて言えましぇんよっ?


「やだっ、冗談だよう♪笑えなかったっ?スベっちゃったっ?」


「だっ、ダヨネー。アハハー。らっ、ラーフィアちゃんはちょっと変わってるよねっ」


「あ、それよく言われる♪それって褒めコトバ、だよね?」


「えっ、うん、え?……そうかな?」


 ラーフィアちゃんのに言った『変わってる』の『変』は『変態』の『変』に限り無く近いんですケドネっ!

 いやむしろ!カノジョのおパンツを袋に入れて深呼吸とかって、そういう発想自体ヘンタイの部類ですよねラーフィアちゃん!?


「明日も一緒に遊びたいんだけど、お母さんと約束してて、ね。18歳までは日曜は家族と過ごす事、って我が家のお母さん条例が、ね」


 18歳までかあ。なかなかに厳しいお母さんだなー。

 もしや、その厳しさの反動でラーフィアちゃんのおかしな性癖が暴走しているのではっ?


「ね、ヒカリちゃん、気付いた?お姉ちゃんとフィルフィー、買ったばっかりのお揃いのブラ着けてたんだよ?」


「えっ!?ホントにっ!?……色が同じだったとかじゃないのっ?」


「ううん。同じデザインだったよ。あの二人、もう『付き合ってます宣言』でもしちゃえばいいのにねっ」


 えー!?マジですかそーですか。ほほう。まあ、ね!ペリメール様はフィルフィーのコト意識してるっぽいのが見えたけど、フィルフィーは天然だから解りにくいんだよなー。


 でもホントになのかなー?ペリメール様に聞くワケにもいかないし。


 ふーん。へーえ。二人がねえ、と思いつつ、てくてく歩くよバス停へ。


 で。


 さっきからラーフィアちゃんの手の甲が俺の手の甲とちょんちょんっと触れるんだけど、これって……これってさあ!


 手を繋ぎたいなー、的なアレだったりするんですかねっ!?


 俺はっ!どうしたら良いのデスカねっ!?

 手を繋ぐべきなのデスカねっ!?

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