第11話 数百年分の金額

 更に数日が過ぎた日の朝。あたしは街へ出かける準備をしていた。

 服装を整えて倉庫にまだある売れそうなものを適当に袋に詰めていく。

 マギアメタルはとりあえずわかり易い場所にはなかったので、前にそこそこで売れた宝石や動物の皮と爪を中心に詰めていく。

 でも、市場があるなら野菜とかも収穫量増やして売っていくのもありなのかもしれない。


「リリアちゃん、大丈夫?」

「準備はできたけど」


 この前のは本人に不評だったので膝丈スカートのコーデを今日は着せた。

 まあ、服受け取ってきたら着せることはなくなっちゃうのかもしれないけどね。


「それじゃあ行くわよ」


 2人になったので袋も2つ作っておいて片方をリリアちゃんに渡して出発した。

 街までは特に事故もなく到着できた。まずはギルドショップへと足を向ける。


「数日ぶりね」

「い、いらっしゃいませ。本日は?」


 今日はこの前よりは空いていてカウンターも選べそうだった。

 だけど、なんとなく前と同じ女性店員がいたのでその受付を選んで買取してもらう。


「こちらになります。ご確認ください」


 特に特別なものは今回はなく、すぐにお金がでてきた。お互いのためにということで額の確認をしていると店員さんがあたしに声をかけてきた。


「あの、1つ聞いてみたいことがあるんですが」

「何かしら?」

「この数日でこんな量どうやって集めたんですか……いえ、盗みとかを疑ってるわけじゃないんですけど。純粋に初めてで」


 たしかに、数日のスパンでこの量はおかしく思っても仕方ないのか。


「実は色々昔から集めてたんだけど、倉庫に溜め込んじゃったのよ。それで、一度に運べる量をちょっとずつってこと。だからこの数日で集めたわけじゃないわよ」


 嘘はついていない。ただ、彼女が想像しているよりもずっと長い時間かけて集められたものだと思う。


「そうなんですか。まだあるんですか?」

「そうね……少なくともあと2回以上は確実にくるわ」

「そうですか。楽しみにしてます!」

「そ、そう……」

 客が売りに来るのが楽しみってどういう気持ちで言ってるのかしら。残念ながら、あたしには考えても理解できそうにない分野だった。

 手持ちのお金がそこそこできてから次は服屋へと向かう。


「お金ってそんなギリギリだったりしたの?」

「多分、近々一気に大金が手に入るけど、いつって確定できないのよね。さすがに、契約とか破ってくるとはないと思うんだけど」

「じゃあ、売る必要ないんじゃ」

「今度倉庫の中見てみる? 今すごいことになってるから。あそこだけは片付けするのずっと忘れちゃってたのよね」

「シエーラさんでもそんなことあるのね」


 いつのまにかあたしって何でもできる超人のイメージ持たれてないかしら。家事してただけのはずなのに。

 普通に接してくれたほうが良いんだけど。人のイメージって難しい。

 話をしているうちに目的のミルダさんの服屋にたどり着いた。

 中に入ると、扉についてるベルの音に反応してか奥からミルダさんがでてくる。


「あら、いらっしゃい。できてるわよ」

「よかった。それじゃあ、これ契約書と残りのお金」

「はい……額もあってるわね。ご購入ありがとう。今持ってくるからちょっと待ってて」


 ミルダさんはそう言うと一度奥へと引っ込んできて、少しすると両手で持つサイズの木箱を持ってくる。


「きっちり畳んであるから。これなら運びやすいでしょう? 前来たときもだけど、特に荷車とか持ってるわけでもないし」

「そうね。気遣いありがとう」

「いいえ。私も久しぶりに楽しかったからいいわよ。また、来てくれると嬉しいわ」

「今度はあたしの服作ってもらいにくるわ」

「ふふっ、任せなさい」


 リリアちゃんが木箱を受け取ってから、改めてもう一度挨拶して店を後にした。

 道を歩きながらリリアちゃんに少し目を向けてみる。


「さてと……リリアちゃん。それ重い?」

「これくらいなら大丈夫だけど」


 木箱も両手といっても、お腹の当たりで抱えていても楽そうに見える。

 それなら、他の用事とかも済ませちゃおうかな。


「じゃあリリアちゃん。もう少し付き合って頂戴」

「それは大丈夫だけど。どこにいくの?」

「冒険者ギルドと武器屋よ。冒険者証作ってもらったのは良いけど、使い方とかその他色々よくわからなくて。武器屋のほうは単純に動物狩るための武器を全部ダメにしちゃってね」

「家にあった柄ってそれだったのね」

「柄?」


 そんなの家にあった覚えがない。壊れた剣とかは倉庫にしまいこんでるからリリアちゃんは見てないだろうし。あたし部屋の中に置いちゃってたのか。


「まあ、そういうわけだから。じゃあ、まずは武器屋行くわよー」


 あたしはそう伝えて足を武器屋へと向けた。

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